キャンパスライフ

2024年2月8日

【入学したら何をとる?】東大新聞記者おすすめの総合科目授業紹介(自然科学編)

 

 東大の前期教養課程の授業数は3000を超える。リベラルアーツ教育を行う前期教養課程では、原則として文理・科類を問わずにさまざまな分野の授業を受けることが可能だ。なかでも「総合科目」は、七つの系列に分かれた、履修の中心となる選択科目群。ここでは、東京大学新聞社の記者おすすめの授業を三つ、紹介する(授業の担当教員や扱うテーマは変わることがある)。(構成・岡部義文)

 

D 系列(人間・環境)「適応行動論」香田啓貴准教授

 

 人間とは何か。多くの研究者が探求を続けている根源的な問いだ。本授業は霊長類、特に「ヒト」の進化という視点から学際的なアプローチでこの問いに迫る。授業の内容も、近現代人間観による優生主義の興隆から血縁淘汰(とうた)に至るまでさまざまで、講師の専門である霊長類に関する雑談も興味深い。文理合同の授業だが進化学の背景知識は不要で、生物学的知識についても授業内の説明で十分理解できるため心配無用。記者が印象的だった回は、生物学的合理性を基に母系社会で母方のおじとおいの間に存在する特別な関係を指す「アヴァンキュレート」のような、ヒト特有に思える文化を分析した回だ。進化の連続性の中に位置付けられた存在としてのヒトに興味がある人や、高校の学習を超えた教養学部らしい授業を受けたい人はぜひ受講してみてほしい。

 

E系列(物質・生命)「宇宙科学Ⅰ(文科生)」鈴木建教授

 

 なぜ私たちは地球に生きていられるのか。輝く星はどのように時を過ごしてきたのか。それらを学べるのが本講義だ。取り扱う内容はさまざま。相対性理論や星の形成などの物理・地学に関連するものから、人間原理(宇宙は人間がいるため存在すると考える原理)など哲学的な事柄にも触れられる。高校で理科を本格的に学んでいなくとも十分付いていけるよう教授が説明してくださるので安心してほしい。記者が一番印象に残ったのは「宇宙人は存在するのか」というオカルトチックな問題を確率を用いて科学的に考える「ドレイクの式」。後期課程で文系学部に行くと、宇宙科学に触れる機会がない人も多いだろう。文科生でも理系科目を学べる前期教養課程の特性を活用し、宇宙の神秘性に触れてもらいたい。

 

F系列(数理・情報)「数理科学概論Ⅰ(文科生)」小林俊行教授

 

 ガンジス川にある砂(恒河沙)の数と1恒河沙(10の52乗)どちらが大きいか。この他、山登りや限界効用、年代測定法などの興味深いテーマを手がかりに、数の大きさ評価、2変数関数の微積分などの解析学をはじめ幅広い分野について基本からの理解を目指す。微積分の新しい考え方だけでなく、二項定理や階乗といった既習事項も身近な視点から再発見できる。特に12音階と利回りといった異なる事柄の中にある共通点を数学で見いだしていく授業展開は圧巻。小林教授からは毎度「難解で分からないことを丸暗記したり、放置したりするのではなく、心の中の片隅において大事に育てること」という学びの姿勢を伝えられる他、授業設計にも分かりやすさを追求する熱意を感じられる。文科ならではの着眼点で数学の世界を見てみよう。

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