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2023年1月3日

2022 年東大の研究者の功績は? 各賞受賞者の活動を紹介【学士院賞編】

 「科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた業績」を挙げた人に授与される紫綬褒章など、多くの東大の研究者が今年も栄誉ある賞を受賞した。それぞれの受賞理由や、どのような研究をしているのかについて研究に関わるキーワードを挙げながら解説した。対象としたのは2022年に紫綬褒章、文化勲章の受章、文化功労者の認定、恩賜賞、日本学士院賞の受賞を受けた13人。今回は日本学士院賞を取り上げる。各賞の違いも踏まえ、東大の研究者たちの活躍をまとめて見てみよう。(構成・清水琉生)

 

日本学士院賞

 

 学術上特に優れた論文、著書その他の研究業績に対する授賞制度。日本学士院が行い、恩賜賞は日本学士院賞の中から推選で決定。河西特任教授は恩賜賞も受賞した。

 

シナプスと運動と心の関わりを解明(河西特任教授・恩賜賞受賞)

 

河西春郎教授(東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN))

 

 

 神経科学・生理学の発展への貢献により受賞。脳を構成する神経細胞において、他の神経細胞から情報を受け取る「樹状突起スパイン」という部位の形態変化と、脳機能や精神疾患が関連することを発見した。実際に体積が増大したスパインが「軸索終末」という部位を押し、その機能を増強する様子を直接可視化することにも成功している。

 

キーワード:シナプス、形態可塑性、2次元励起顕微鏡

 

齊藤英治教授(東京大学大学院工学系研究科)

 

 

 電子が持つ磁石としての性質「スピン」の流れである「スピン流」の観測原理を確立した研究などにより受賞。電子が持つ電荷だけでなくスピンを信号・情報として利用するエレクトロニクスである「スピントロニクス」の分野を先導している。主な著書は『スピン流とトポロジカル絶縁体量子物性とスピントロニクスの発展(基本法則から読み解く物理学最前線1)』(共著、共立出版)など。

 

キーワード:スピンエレクトロニクス、スピン流、逆スピンホール問題

 

武田晴人名誉教授

 

 

 三大財閥における経営戦略の決定過程、投資資金調達の仕組みの研究で受賞。近代日本の資本主義に焦点を当て、帝国主義経済の成立の仕組みや、財閥や実業家の経済活動に関する研究などで業績を挙げている。その他、多くの資料整理を行う。著書に『日本経済の発展と財閥本社:持株会社と内部資本市場』(東京大学出版会)など。

 

キーワード:財閥、談合、持株会社、内部資本市場

 

阿部彩子教授(東京大学大気海洋研究所)

 

 

 気候モデル「MIROC」により過去の地球気候を再現したものと新たに開発した氷床数値モデル「IcIES」を組み合わせ、氷期と間氷期の10万年のサイクルをモデルで再現した業績などが評価され受賞。二酸化炭素濃度などの大気状態と大陸規模の氷河である氷床などの海洋状態の相互作用に焦点を当て、気候の将来予測やその因子の解明などに取り組む。

 

キーワード:古気候モデリング、ミランコビッチ仮説、気候変動、氷期間氷期サイクル

 

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