学術ニュース

2019年11月17日

宍道湖のウナギ激減 ネオニコチノイド系殺虫剤が原因の可能性

 産業技術総合研究所で特定フェローを務める山室真澄教授(新領域創成科学研究科)らは、島根県宍道湖で、殺虫剤が間接的にウナギやワカサギを激減させた可能性を指摘した。成果は1日付の米科学誌『サイエンス』に掲載された。

 

 日本の湖沼では漁獲量が減少傾向にあるが、その原因として考えられる水質の貧栄養化や外来種の増加は実証されていない。長年宍道湖を調査していた産総研は、今回宍道湖の魚の多くが湖底の生物を食べることに着目。湖底堆積物の貧栄養化は見られなかったが、湖底の大型生物は1980年代と比べ激減していた。

 

 今回激減が確認された湖底の大型生物の一種、オオユスリカは、害虫として90年代以降調査され続けてきた。過去の調査から、宍道湖のオオユスリカが激減したのは93年だったと判明。日本でネオニコチノイド系殺虫剤が初めて使われたと考えられる時期に当たる。

 

 ネオニコチノイド系殺虫剤は昆虫にしか効かないが、水溶性で分解・消滅に時間がかかる。水田などから宍道湖に流れ込むことで宍道湖の昆虫を殺し、昆虫を栄養源とするウナギやワカサギの激減にもつながった可能性が示唆された。


この記事は2019年11月12日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

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