
6月11日、新しい日本学術会議法が参議院本会議で可決・成立した。日本学術会議は内閣府所轄の「特別の機関」から、特殊法人(法律によって直接設置される法人)へと改まる。法案が成立すれば学術会議の自主性が侵害されるなどとして、複数の東大関係者を含め学者などが国会前で座り込みなどの抗議を行っていた。
新たに首相任命の監事による監査が行われるようになる他、会議に評価書の提出が義務付けられ、内閣府の評価委員会が審議するなど政府による管理が強化される。学術会議の会員選考の方式について、これまでは現会員の推薦に応じて首相が任命してきたが、今後は学術会議が選任する。ただし、外部有識者の助言が入る他、総会で会員の解任が可能となる。これに関し坂井学・内閣府特命担当大臣は国会で「特定のイデオロギーや党派的な主張を繰り返す会員は、法案の中で解任ができる」と発言。会員の政治的行動を理由にした解任の可能性が示唆されたことは、学問の自由や言論の自由などを脅かす可能性があるという懸念も見られる。新体制発足時の会員は、首相の選ぶ有識者と現会長が協議して選んだ候補者選考委員会が会員候補者を選ぶこととなる。
法案により学術会議への政府管理が強化され、学術会議の自主・独立が脅かされるとして、法案成立前には国会周辺で抗議行動が行われた。複数の東大関係者も参加し、6月に複数回実施された座り込みには、隠岐さや香教授(東大大学院教育学研究科)や本田由紀教授(東大大学院教育学研究科)、2020年に学術会議の会員への任命を拒否された加藤陽子教授(東大大学院人文社会系研究科)など複数の現役教員や、上野千鶴子名誉教授など複数の元教員が参加(写真1・2)。法案が成立した11日には、抗議演説を行う東大生もいた。

6月12日には光石衛・日本学術会議会長(東大名誉教授、元東大大学院工学系研究科長、元東大執行役・副学長)が談話を発表。法案が修正されなかったことは「非常に残念」としつつ、両院で附帯決議がなされた2020年の任命拒否に関する説明や、学術会議との信頼構築など「改めて政府における誠意ある対応」を求めた。 今後は、さらなる学術の発展のために、学術会議が主導する形で、学術会議の新法下での体制について検討し、学術会議の改革をさらに進めていくとした。
同日、光石衛会長は石破茂首相にGサイエンス学術会議2025(G7各国のアカデミー団体で今年5月に開かれた会議)での共同声明・共同宣言を直接提出。共同宣言では、G7諸国が民主主義国家として学問の自由や研究機関の自律性などを支援していく姿勢が確認されている。