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2021年9月23日

専門知識の少なさが創作活動にポジティブに影響する理由を解明

 楊鯤昊さん(総合文化・博士3年)らは、専門知識の量が、情報処理の対象に向ける注意の配分の方法に影響し、そのことが創作活動の質に影響することを明らかにしたと発表した。専門知識の多い人は一つの情報やモノといった対象に全ての注意を配分する傾向があり、それがアイデアの質にネガティブな影響を与える一方、専門知識の少ない人は複数の対象に注意を均等に配分する傾向があり、アイデアの質にポジティブな影響を与えるという。成果は9月14日付けの英科学雑誌『サイエンティフィック・リポーツ』へ掲載された。

 

 専門知識の少ない人の方が関連する創作活動で優れたパフォーマンスを示すことは先行研究で報告されていた。実際の製品やサービスでも、豊富な知識を持つ開発者や供給側ではなく、一般の使い手が新しいアイデアを生み出す事例が見られていたが、理由は明らかでなかった。

 

 楊さんらはオンライン実験で、スピーカーに関するアイデアを題材に分析を行った。音響施設に関する参加者の専門知識の量を知識検定で測定。参加者に本人所有のスピーカーの写真を撮ってもらい、写真全体のうちスピーカーが映っている割合も算出した。スピーカーの新たな機能に関するアイデアも提出してもらい、専門家の評定や自然言語処理技術を用いて評価した。三者の関係を分析した結果、専門知識が多い人ほど、スピーカーをアップにして撮るなど集中的に注意を配分する傾向があることが判明。集中的な注意配分パターンの傾向がアイデアの質にネガティブな影響を与えることも分かった。逆に専門知識が少ない人ほど、周囲の環境にも注意を分散しスピーカーを小さく映す傾向があり、分散的な注意配分パターンはアイデアの質にポジティブな影響を与えることも明らかになった。オンライン・ショッピングサイトAmazon.comの商品レビューに関するデータを用いた分析でも同様の結果が得られ、専門知識が注意配分パターンに影響を与え、そのことが創作活動のパフォーマンスに影響することを明らかにした。

 

 今回の研究で、専門知識が少ない使い手がしばしば起こすイノベーション(ユーザー・イノベーション)が発生する仕組みの一端が明らかになった。現実のイノベーション活動の実践に新たな知見をもたらすと考えられる。

 

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添付リリース

 

2021年9月23日14:28【訂正】「成果は9月14日付けの英科学雑誌『サイエンティフィック(電子版)へ掲載された。」としていましたが、正しくは『サイエンティフィック・リポーツ』でした。お詫びして訂正します。

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