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2016年5月19日

2016年春の紫綬褒章 東大関係者3人が受章

 内閣府は学問やスポーツなどの功績をたたえる紫綬褒章の2016年春の受章者16人を4月28日付で発表した。東大関係者では髙山博教授(人文社会系研究科)、永原裕子教授(理学系研究科)、清木元治名誉教授の3人が受章した。

 髙山教授はヨーロッパやビザンツ、イスラムなど異なる研究領域にまたがる中世シチリアの研究などが評価された。「今後も中世シチリアの研究を続けると共に、西洋中世の君主国の統治システムの比較など、30年近い研究の成果をまとめたい」と展望を語った。

 惑星科学を専門とする永原教授は、観測と理論的研究両方の知見を結び付け、惑星の形成過程の理解を深めた独自の研究業績が認められた。今後については「太陽系の全ての物質の時間的・空間的変化の描像を描くことを目指す。さまざまな研究を行う仲間たちと協力し、より一般的な惑星系の形成と進化に関する理解を深めたい」と述べた。

 清木名誉教授はがん細胞が周囲の組織を侵食する際の鍵となる膜型マトリックスメタロプロテアーゼという酵素の発見など、分子腫瘍学の研究業績が評価された。07~11年に医科学研究所所長を務め、13年より名誉教授に就任している。

 紫綬褒章は学術やスポーツの業績に対し、毎年春と秋に与えられる褒章。今回は映画監督の周防正行さんら16人が受章した。

 

◇髙山教授のコメント

――紫綬褒章の受章についてどのように感じたか

 これまでの研究を評価していただき、たいへんうれしく、また、光栄に思います。

――具体的にどのような功績が評価されたと考えるか

 私の研究領域は中世のヨーロッパと地中海地域ですが、特に評価していただいたのは、ヨーロッパ史研究、ビザンツ史研究、イスラム史研究などの異なる学問領域が交差する中世シチリアの研究ではないかと思っています。これまで、アラビア語、ギリシャ語、ラテン語史料の分析に基づく研究を英語で発表してきましたが、中世シチリア王国の行政組織・役人に関する私の論文・著書は、王国に関する基本文献として、英語、イタリア語、フランス語、ドイツ語の論文・書物で利用・参照されるようになっており、南イタリアの領主制・農民研究、イスラムのヨーロッパへの影響という文脈でも引用・参照されているからです。

――今回の受章を受けた今後の展望は

 今後も文明の交差点と呼ばれる中世シチリアの研究を続けていきますが、30年近く続けている西洋中世の主要な君主国(イタリア、フランス、イギリス、ドイツ、スペイン、教皇庁、ビザンツ帝国など)の統治システムや国家の比較に関する研究の成果をまとめたいと思っています。

 

◇永原教授のコメント

――紫綬褒章の受章についてどのように感じたか

 大変格式のある賞ですので、身の引き締まる思いです。引き続き研究に尽力してゆきたいと思います。このことが、この分野の後進の研究者、とりわけ女性研究者になんらかの励みになれればと思います。同時に、これまでいろいろな形で一緒に研究をやってきた多くの仲間たちに感謝したいと思います。

――具体的にどのような功績が評価されたと考えるか

 惑星科学は、太陽系をはじめ宇宙に無数に存在する惑星がどのように形成され、どのように進化して今日われわれの知る姿になったのかを理解することが目標です。特に、惑星系形成の初期に、星の形成と惑星や小天体の形成がどのように進行し、惑星や小天体の化学的多様性がいかに獲得されてきたかというのが私の研究テーマですが、それは時間的にも空間的にも多様で、直接その形成過程を知ることはできず、観測と理論的研究の二つのアプローチがとられています。ところが、二つのアプローチはそれぞれ独自に研究が進められ、統一的な研究にはなっていません。私はそれを結び付けることに力を注いできました。

 私の研究スタイルは、これまで人が考えてこなかったこと、やってこなかったことを新たな視点でチャレンジするところが特徴だと思っています。具体的には、重力により物質が集積して太陽を形成し周囲に惑星の元となる原始惑星系円盤において、物理と化学が違いに作用し合い、複雑な進化を遂げることを統一的に理解するため、宇宙物質から得られる化学的情報、実験により得られる物質の化学変化を支配する物理過程についての情報、円盤進化の物理過程を統合した理解を目指してきました。この独自の研究を評価していただいたものと考えています。

――今回の受章を受けた今後の展望は

 私はこれまで長く、地球や火星などの惑星の原材料物質の進化に着目してきましたが、最近はそれらに加え、生命の原材料ともなる有機物や氷も含めた、太陽系の全ての物質の時間的・空間的変化の描像を描くことを目指しています。それが理解できるようになると、太陽系にとどまらず、どのような恒星の周りではどのような惑星が形成され、それは生命の材料物質を持ち得る天体なのか否かということを予測的に語ることが可能となります。天文観測、宇宙における無機物や有機物の形成や進化に関する実験研究、隕石や彗星などの分析的研究、原始惑星系円盤進化についての理論的研究を行う仲間達と協力し、より一般的な惑星系の形成と進化に関する理解を進めたいと思います。

 

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 この記事は、2016年5月17日号に掲載した記事を編集したものです。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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