インタビュー

2021年7月23日

総長賞受賞者インタビュー①「バーチャル東大」所壮琉さん、中川雅人さん、西澤優人さん・後編

 学業、課外活動等で顕著な業績を挙げた学生を表彰する「東京大学総長賞」。その功績の裏には受賞者のどのような努力や思いがあったのか。今回は、オンライン開催となった高校生のためのオープンキャンパスに向けて、本郷キャンパスをバーチャル空間で再現した「バーチャル東大」を制作・公開し、令和2年度の総長大賞を受賞した所壮琉さん(工・3年)、中川雅人さん(工・4年)、西澤優人さん(工・4年)にインタビュー。後編では、自身とVRの将来について聞いた。(取材・伊藤凜花)

前編はこちら

 

左から中川さん、所さん、西澤さん(写真は所さん提供)

 

リアルと比較されないVRの価値を考える

 

──「バーチャル東大」の今後について教えてください

 

所さん(以下、所) オープンキャンパスで公開したものから「バーチャル東大」は進化しています。プロジェクトをUT-virtualの後輩に引き継ぎ、2021年5月に、アプリをダウンロードせずに「バーチャル東大」を楽しめるブラウザ版を公開しました。また、新たに工学部エリアを制作・公開し、今後もエリアを拡大していく方針です。

 

 他団体とコラボして「バーチャル東大」を使った企画も多数実施しており、これからもさまざまな方法で活用できたらと考えていますが、そこで問題になるのが「VRの価値」です。「バーチャル東大」はオープンキャンパスが対面開催できなくなったことに対する「代替手段」として制作されましたが、新型コロナウイルス感染症が終息して、オープンキャンパスなどの行事が対面で開催できるようになっても引き続き盛り上がるような方法を考えなければならないと思っています。またオンラインコミュニケーションツールはVRの他にZoomなどのビデオ通話ツールもあるので、あえてZoomではなくVRを使用する価値についても考えていかなければいけません。

 

西澤さん(以下、西澤) ビデオ通話ツールと比べてVRは「自分の足で歩いて行った」感覚が強いというところに価値があると思いますが、リアルにはかないません。

 

 「VRはリアルの劣化」と考えられてしまうのが現状です。何かリアルとは別の価値・面白さを創出して、リアルと優劣関係にないようなVRの形を実現できたらと思います。

 

新たに制作・公開された「バーチャル東大工学部エリア」(写真は所さん提供)

 

──みなさんが現在学んでいることや将来の進路について教えてください

 

 VR制作のモデリングを通じて空間の作り方に興味を持つようになり、工学部建築学科に進学して現在は建築を学んでいます。VR内見など、VRを建築に活用する事例は増えていて、私もそのような取り組みに参加できたらと思いますが、勉強をしていく中で今は定量的に住環境を評価する環境シミュレーションにより関心があります。

 

 将来は既存の建築路線ではなく、建築と情報を組み合わせた建築情報学と呼ばれる分野の研究をしたいと考えています。その中で、VRを「手段」の一つとしていつでも使える人でありたいと思います。

 

中川さん(以下、中川) 私が所属している工学部計数工学科は、工学で広く用いられるシステムの計測制御や数理について学ぶ学科です。UT-virtualでの活動でコンピュータの表現技術のすごさを知る一方で、触覚などのフィジカルなアプローチの強力さにも気付き、計算上の表現には限界があるのを感じました。そこで、コンピュータの情報処理だけでなくフィジカルな面も学べるこの学科に進学しました。現在は、超音波を発するスピーカーを制御して超音波を操作する超音波フェーズドアレイという技術について学んでいます。

 

 所が言ったようにVRは「目的」ではなく「手段」であり、様々な分野に関わりがあります。また、先述したvirtualという概念は、本質を抽出しコンピュータでシンプルに再現するという点で工学に非常に親和的で、それを活動を通して体得できたのは良かったと思います。これからも物事の本質について考えつつ、将来はデジタルとフィジカル両方の良さを生かした何かを作りたいと考えています。

 

西澤 もともとものづくりに興味があり、VR以外のものづくりの手段を学びたいと思い工学部機械情報工学科に進学しました。現在は機械学習によって現実世界とコンピュータ上の世界をつなぐという、VRにも通じるさまざまな技術について学んでいます。将来の進路についてはまだ具体的には決まっていませんが、ものづくりへの関心はなおもあり、何かを作る仕事がしたいと考えています。

 

──VRを使って今後やってみたいことはありますか

 

西澤 VRは一般的にはまだハードルが高いものだと思いますが、活動を通じて気軽に利用できるものにしていきたいです。

 

 7月10日・11日に開催された2021年度の高校生のためのオープンキャンパスでもバーチャル東大を公開し、多くの方に見ていただくことができました。その際、動画やポスターなどの更新を行いましたが、要望を受け昨年度のオープンキャンパス終了後に社会連携推進課の方々に1、2時間程度ワールド(VR上の空間)の編集方法をレクチャーしたため、今年度は直前の小さな変更や仕上げを社会連携推進課の方々にお任せすることができました。持続可能な運用には分業が必要で、VRの制作・編集のハードルが下がり、関連技術にあまり詳しくない人でも簡単に扱えるようになることはこの先ますます重要になると思います。

 

中川 VRと聞くとゴーグルが真っ先に思い浮かぶと思いますが、ゴーグルを使うことがVRの条件ではありません。最近はゴーグルを使わずにVR表現をするのが面白く、探求していきたいと思っています。

 

 VRはこれから電気やガス、インターネットのような存在になると考えています。その第一歩として、VRをより多くの人に身近に感じてもらえるように広めていきたいです。

 

西澤 そのために、ただVRを楽しむゲームなども作って、楽しさを伝えていきたいです。

 

2020年度の高校生のオープンキャンパスで、バーチャル安田講堂にて行われた「東大×VRの未来@バーチャル安田講堂」。所さん、中川さん、西澤さんは、稲見昌彦教授(東大先端科学技術研究センター)と共に、高校生向けに講演を行った(写真は所さん提供)

 

──最後に東大生・東大受験生に向けてメッセージをお願いします

 

中川 1年生の時に興味の赴くままUT-virtualに入会しなければ「バーチャル東大」の制作に関わり総長賞をいただくこともありませんでした。少しでも面白そうだと思うことがあれば、とりあえず突っ込んでみるのが大事だと思います。

 

 特にUT-virtualは新しいサークルで学年の幅が広いので、VRの基本を学んでみたいという人は学年を問わず入ってみることをおすすめします。

 

西澤 現在はコロナ禍で制限が多く、楽しいことも減っているかもしれませんが、情報技術をうまく利用して興味のあることに積極的に挑戦すると良いと思います。

 

 「バーチャル東大」は色々な方に利用・活用していただきたいと思っています。ブラウザ版が完成しスマホからもアクセスできるようになったので、より多くの人に見ていただきたいです! また「バーチャル東大」を活用したい、同じようなことをやってみたい、などどんなことでも気軽に連絡してください!

 

「バーチャル東大」はこちらからいつでも散策できます

 

総長賞受賞者インタビュー①「バーチャル東大」所壮琉さん、中川雅人さん、西澤優人さん・前編

hidari_handle

タグから記事を検索


東京大学新聞社からのお知らせ


recruit
koushi-thumb-300xauto-242




TOPに戻る