就活では多くの業界・企業を見た上で進路を選択することが重要だ。しかし多種多様な仕事について、社会人の話を直接聞ける機会は多くない。そこで今回は幅広い業界から六つの企業を訪問。東大の卒業生に仕事の内容ややりがい、就活時の経験などについて聞いた。インターネット上の情報だけでは知ることができない、業界や企業の魅力や実態を知って進路選択の参考にしてほしい。(構成・赤津郁海、取材・山本桃歌)

その建物は、どのように造られ、どのように使われているのか。東大で出会ったこの視点とともに、7年間の現場での施工管理の経験を経て、現在では全国のプロジェクトに関わる戦略や情報分析を行っている。施工管理では、職人さんとコミュニケーションを取りながら現場の進捗管理などを行ってきた。「一日一日計画を積み重ねていって、建物の竣工を迎えた時にはやりがいを感じ、それまでの苦労が吹き飛びます」と、藤岡さんは目を輝かせながら話す。
もともと、ものづくりが好きだったという藤岡さん。大学院時代には西洋建築史の加藤耕一教授(東大大学院工学系研究科、当時は准教授)の研究室に所属していた。加藤教授の、建築の構工法や利用法に焦点を当て、建築に表出する人々の考えや暮らしに注目する考え方に刺激され、同時期にヨーロッパ旅行でヨーロッパの街並みを見たことで、実際に建物を建ててみたいと思った。就活を始めたのは大学院入学後。修士1年次の夏に清水建設のインターンシップに参加した。ゼネコンの他にも国土交通省や都庁を考えていたものの、卒業生訪問の中で一番仕事を楽しそうに話していた清水建設に就職したいと決意。1年次の年明けには内々定をもらった。
就活の中で大切にしていたことは、自分が今何を大事にしたいか。そして仕事を楽しいと思えるかどうか。「生活のための仕事だけれど、それが楽しいに越したことはないと考えています」と語る。卒業生訪問で仕事のことを率直に話してもらえたことが、志望業界を絞る決め手になったという。
入社後はすぐに現場のチームの一員となり、職人さんとともに手を動かして学校やビル、工場などのさまざまな現場に携わった。3年目ごろからは施工計画も立てるように。現場の仲間と会話しながら計画を立てることに楽しみを感じながらも、どんなに自分が若く経験が浅くても、経験豊富な職人さんは自分の立てた計画で動くということに大変さと責任を感じる日々であった。建設現場には危険が伴うため、安全面にも重大な責任があり、常に職人さんの命を預かっているという意識を持ちながら誠実に仕事に取り組んだ。
「現場一個一個が一つの会社のようなんです」現場全体は風通しがよく、自分の意見も話しやすく、届きやすいという。一つの建物を造る、という目的がはっきりしていて、いいものを造りたい、という思いを現場の全員が持っているため、みんなで助け合え、積極的にコミュニケーションを取れる。毎回異なるメンバーでチームを組むが、竣工したプロジェクトのメンバーで今でも年に一回集まったり、数人で飲みに行ったりすることもある。その中で先輩に仕事のアドバイスをもらえるなど、社内でのつながりが広がっていくのも魅力的だ。
現在では建築企画室という部署で、現場で得た7年間の経験を基に、現場をより良くするための課題提起や、全国展開の戦略、受注、決算など社内のプロジェクト全体に関わる仕事をしている。現場と経営を両方経験することで、会社の全体像を学んでいくという。今後は再び現場に戻り、所長(現場のトップ)を経験して現場の全体像をもっと知ってから現在のような仕事に戻りたいと話す。現場での経験を、組織を動かすイメージに昇華することで、現場で自分と同じようなことで困っている人を助けていきたいと考えている。「建物のつくり方が変わっていくその最先端にいたい」と力強く語った。東大に入学したての18歳の自分に再会したとしても、変わらずにきらきらしたまま、後悔なく楽しいことを見つけて仕事をしている、と胸を張って自慢できるという。
現在の仕事と100年後の世界とのつながりを尋ねると、「未来の人々に、この時代の人ってこういうことを考えていたのだな、と伝わるとうれしい」と語った。その時々の人々の思いによって形作られていく建物や街並みは、100年後にも残っていく。100年後にも残っている、普通に使っている民間の建物にはその時代の人々の生活が表出している。そのような建物を造っていきたいそうだ。そう話す藤岡さんはとても楽しそうで生き生きとしていた。











