GRADUATE

2026年3月17日

【卒業生訪問2026】東大卒業生に聞く仕事と就活 ②読売巨人軍

 

 就活では多くの業界・企業を見た上で進路を選択することが重要だ。しかし多種多様な仕事について、社会人の話を直接聞ける機会は多くない。そこで今回は幅広い業界から六つの企業を訪問。東大の卒業生に仕事の内容ややりがい、就活時の経験などについて聞いた。インターネット上の情報だけでは知ることができない、業界や企業の魅力や実態を知って進路選択の参考にしてほしい。(構成・赤津郁海、取材・溝口慶)

 

久米雅宏(くめ・まさひろ)さん 16年東大文学部卒

 

 読売巨人軍で選手の獲得や育成を担う編成本部統括部に所属し、データ分析を担う久米さん。小さい頃からジャイアンツファンで、家族や友達とジャイアンツ戦をしばしば見に行っていた。ちょうどこれから東京五輪という時期に卒業を迎えるにあたり、スポーツに関わる仕事がしたいと考え、偶然見つけたジャイアンツの新卒採用に応募した。他にスポーツ担当の記者なども考えたというが、小さいころからの憧れの球団で日本一に貢献したいと考えたことが決め手となった。

 

 ただ、読売巨人軍で働く自分の姿は、入社するまで漠然としかイメージできていなかったと話す。入社時に担当したのはファンクラブの運営だったが、その後データ分析の部署が発足し、そこに加わった。「入社前は存在すらしなかった仕事なので、今の姿は想像していませんでした」。現在、日本のプロ野球12球団全てが「ホークアイ(Hawk-Eye)」と呼ばれるデータ計測システムを導入している。球場の至る所に設置されたカメラが、ボールの回転数、投球の軌道、野手の守備位置、走者のスピードに至るまで、あらゆる動きをミリ単位でデータ化する。そのホークアイから得られた数値データを基に、独自に指標を作り上げて、選手のパフォーマンスを評価できるようにするのが久米さんの仕事だ。

 

 やはりジャイアンツファンにとって、自分の仕事がチームに届くのは何より魅力的だ。「自分の関わったデータ分析が形になって、選手やコーチ、チーム編成に少しでも役に立てた時に一番やりがいを感じますね。大変なこともありますが、本当にすごく楽しいです」

 

 東大では文学部で社会学を専攻し、授業で学んだ統計学の知識が現在の業務に実践的に役立っていると話す。久米さんはデータ分析を自然に「自分の研究」と呼び、今まで当たり前だったことが本当にそうなのか考え直すことを大切にしていると語る。まさに学問の基本姿勢が生きていると言えるだろう。読売巨人軍のマインドセットとして「他の人がやってこなかった道を切り拓く、というのも意識しています」とも語る。例えばランナーを進める上で、バントが本当に有効なのか、どのような時に有効なのか、など、常に複数の角度から今までの当たり前を検証し、数値やデータの観点から新視点の探究に挑んでいるのだそうだ。ジャイアンツが強くなるのはもちろん、ひょっとしたら未来の野球の常識を変えるパラダイムシフトも生まれるかもしれない。

 

 2023年から1年間、ニューヨーク・ヤンキースでの研修の機会を得た。様々な立場のスタッフが日々活発な議論を繰り広げる世界トップレベルの環境に身を置き、多様な意見、新しい意見を受け止めた上で議論をするオープンマインドの重要性を痛感。「人生が変わった」と語るほどの経験をジャイアンツに持ち帰った。データ分析の業務において、スタッフ同士、ふとしたコミュニケーションから生まれる新しい視点も多い。特に元プロ野球選手のスタッフが話すプレイヤー特有の感覚は重宝するという。オープンマインドが生み出す、お互いを高め合うコミュニケーションこそが今の職場の強みだと話す。「入社してから日本一を経験したことがないので、そこに少しでも貢献できるように頑張りたいです」巨人軍をはじめ、各球団がメジャーリーグと同水準の機材を次々に導入する今、あえて久米さんが強調したのはコミュニケーションの重要性だった。

 

 本当に好きなことを仕事にすると、そのうちそれが嫌いになってしまうのではないか、と考える人もいる。しかし久米さんは「私の場合、例えば同じ統計を扱う仕事をするのにも、好きな野球のデータの方が学習意欲は高まるし、理解度も上がると思う」と話す。「好きなことを仕事にできて良かったなと思います」──やっぱりそれは楽しいことのようだ。

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