文化

2023年9月24日

【気軽に入れる出会いと挑戦の場】「しゃべランチ」の世界へようこそ ③手話でしゃべランチ編

 

 昼休みの時間に行われている「しゃべランチ」を知っているだろうか。昼食をともにしながら他の学生や教員などと対話をするイベントで、いくつかの種類がある。新型コロナウイルス感染症の影響で規模が縮小されていたが、徐々に再始動している。今回、しゃべランチの運営に携わる人々を取材。しゃべランチの種類や、それぞれで「しゃべる」内容、魅力を探った。(構成・山口智優、取材・山口智優、金井貴広、丸山莉歩)

 

【①概要・教授としゃべランチ編】

【気軽に入れる出会いと挑戦の場 しゃべランチの世界へようこそ】 ①概要・教授としゃべランチ編

 

【②フランス語でしゃべランチ編】

【気軽に入れる出会いと挑戦の場 「しゃべランチ」の世界へようこそ】②フランス語でしゃべランチ編

 

手話でしゃべランチ──聴者とろう者 手話を通した異文化交流

 

手話でしゃべランチ

 

 「手話でしゃべランチ」は、ろう者の言語である手話を通じて、聴覚障害のある人(ろう者・難聴者)とない人(聴者)が交流するための場だ。バリアフリー支援室の職員が手話単語を紹介しながら、季節の話題や「聴覚障害あるある」について話す。オンライン開催で、昼食を取りながら参加できるフランクな雰囲気だ。パソコンの方が自分の手話も相手の手話も見やすいが、キャンパスのベンチなどからスマホで参加する人もいる。

 

 しゃべランチでは日本手話と日本語対応手話およびその混成手話を併用し、Zoomのチャット機能、音声認識ツールとともに音声日本語も用いる。日本手話とは日本で「母語としてろう児が身につける手話言語」であり、日本語とは語彙も文法も異なる。一方、日本語対応手話(手指日本語)とは「日本語の文法通りに手指表現を並べた」ものだ(『日本手話で学ぶ手話言語学の基礎』(くろしお出版)より引用)。日常で日本手話を使う人も、日本語対応手話や二つの混成手話を使う人もいる。また、そもそも聴覚障害があるからといって手話を話すとは限らず、他の手段を使う人もいる。手話でしゃべランチは、手話だけではなく、聴覚障害に関するさまざまなことを知る場としての意味もある。

 

 初心者歓迎で、予備知識がなければスタッフが教える単語を一緒に表現するところから始められる。参加者には、日本手話話者の東大職員や、聴者だが手話をかなり学んだ学生がいる一方、聴覚障害のあるなしにかかわらず手話の初心者も多い。学生は授業やドラマをきっかけに来る人が多く、教職員は業務の中で聴覚障害のある人と接する機会ができたため来る人もいるという。支援室のスタッフ側には日常的に手話を使う職員がおり、難聴の山本篤さん(東大バリアフリー支援室)もその一人だ。

 

山本篤さん
山本篤(やまもと・あつし)さん
(東京大学バリアフリー支援室(駒場支所))
2017年入職、18年バリアフリー支援室駒場支所配属。17年より「手話でしゃべランチ」を担当。

 

 聴こえる参加者のほとんどは、それまで聴覚障害のある人と会ったことがない。「聴者とろう者とはなかなか知りあう機会がありません。互いに知らないから怖く感じたり、壁を作ったりしてしまいます。知ってもらうことでバリアを解消したい」と山本さん。しゃべランチの開催時間は昼休み中の30分間と短い。そこで参加者が聴覚障害やろう文化に触れたことをきっかけにして、手話サークルへの参加や日本手話の授業の履修などへと、手話との関わりがさらに広がってくれればうれしいと話す。「聴覚障害=手話というわけでもありません。聴覚障害のある人とのコミュニケーションは、まず相手がどうしたいかを聞いてみてくださいね」

 

 興味のある人は、UTAS掲示板またはバリアフリー支援室ウェブサイトの新着情報を確認し、参加申し込みのメールを送ると、Zoomのリンクなどが送られてきて参加できる。「場所が見つかれば対面開催もしたいですが、オンラインで参加したい人も尊重したい。どんな形式なら学生の皆さんが参加しやすいか、模索中です」

 

手話でしゃべランチ9月開催分のポスター
手話でしゃべランチ9月開催分のポスター(画像は山本さん提供)

 

こぼれ話

 

 手話でしゃべランチの目的の一つに、聴覚障害のリアルやろう文化を知ることがある。山本さんに「聴覚障害の困りごとあるある」を聞くと、まさにしゃべランチでも使うオンライン会議ツールに不便な点があるという。「話す人同士では声を出せば自動でスピーカービューが切り替わりますよね。だから画面の小さなスマホでも話しやすいんですが、ろう者同士だと声を出さないからその機能が反応しない。自分で話している人を探してクリックしないといけないので、スマホの画面から複数人と話すときは大変です」。ちなみにオンライン飲み会をするときはパソコンのギャラリービューを使うが、誰に対する手話か分かるよう、発言の前に話し掛ける人の名前を呼ぶという。なお、しゃべランチでの山本さんは声も使ってくれるため、参加時はスマホでも問題ない。

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