学術ニュース

2021年11月6日

東大・岡山大 イネのケイ素吸収構造を解明

 岡山大学の菅倫寛准教授らの共同研究グループは、東大先端科学技術研究センターの斉藤圭亮准教授、石北央教授と共同で、イネのケイ酸チャネルタンパク質Lsi1の立体構造を解明した。Lsi1がイネの生育に欠かせない栄養素であるケイ酸を選択的に吸収する分子メカニズムを明らかにした。10月29日に、研究成果が英科学雑誌『Nature Communications』に掲載された。

 

 植物は、ケイ素など14種のミネラルを土から吸収し、生育する。植物は、ケイ素をケイ酸の形で取り込むが、中でもイネは大量のケイ酸を吸収・蓄積させることで知られていた。2006年には、イネがLsi1と呼ばれるケイ酸チャネルタンパク質によってケイ酸を効率的に細胞内に取り込むことが分かったが、Lsi1の立体構造やケイ酸を取り込むプロセスは不明であった。

 

 原子同士の結合距離は短く、光学顕微鏡での観察は不可能。そこで、今回の研究では、分子を結晶化。X線を照射し立体構造を決定する、X線結晶構造解析という手法を用い、Lsi1の立体構造を解明した。

 

 Lsi1と進化上共通の祖先を持ち、細胞に水を透過させる働きがある水チャネルのアクアポリンは水が通過する穴が四つのアミノ酸によって取り囲まれている。一方、Lsi1ではケイ酸が通過する穴に五つ目のアミノ酸が別に存在。そこに水分子が結合することで、ケイ酸の透過に最適な形をしていることが判明した。また、Lsi1の五つ目のアミノ酸と水分子の役割も説明可能となった。

 

 ミネラル輸送の仕組みを解明した今回の研究は、他のミネラルの輸送メカニズムの解明へ応用できる。将来的には輸送体を自在にコントロールすることで、作物の生産性の安定や栄養価・安全性の向上に役立つことが期待される。

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