学術ニュース

2020年2月21日

液体の水の中には2種類の構造が存在

 シー・ルイ特任研究員、田中肇(はじめ)教授(共に生産技術研究所)は1月30日、液体の水の中に2種類の構造が存在する直接的で決定的な証拠を発見したと発表した。1世紀以上続く論争に終止符を打つ鍵となる可能性がある。

 

 水の構造については、熱揺らぎ(温度に応じて変化する、水分子の微小で乱雑な動き)の下で「一つの構造の周りに幅広い分布を持つのか(連続体モデル)」、あるいは「構造が二つの成分から成るのか(混合モデル)」という議論がレントゲンの時代から1世紀以上にわたって展開されてきた。長年の議論の背景には、実験的に検証可能な、水の構造の特徴に関する直接的な証拠が存在しないということがあった。

 

 シー特任研究員らは、一般的な水モデルのシミュレーションと最新のX線散乱実験データを詳細に解析。水からのX線散乱を記述する構造因子の値に注目したところ、散乱されるX線の強度が二つのピーク(散乱されるX線の強度が極大になる位置)を持つことを発見した。二つのピークはそれぞれ規則的な正四面体の構造と乱れた構造という、異なる構造から生じたものであることが明らかになった。今後は、電解質溶液や生体内の水などの水構造の理解に寄与すると考えられ、さまざまな水に関連する学問やその応用に波及効果をもたらすことが期待される。


この記事は2020年2月11日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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