INTERVIEW / FEATURE 2016年2月2日

アメリカ西海岸で目にした“世界最先端ビジネス”が進路の決め手に…日比さん 後編

2008年誕生から現在までに10000人超を集めてきたSOCAP(Social Capital Markets)は世界最大の社会起業プラットフォームと称され、従来採算に難しさを抱えてきた事業が、社会的インパクトという “非金銭的指標” によって融資を得られる仕組みをとる。昨年サンフランシスコで開催されたSOCAP年次カンファレンス参加者、日比朝子さん(総合文化研究科修士2年)へインタビューを行った。

 

新たなソーシャルビジネスの芽へ   投資家が水を注ぐ土壌

 

―――なぜSOCAPは生まれたのでしょうか。

 

 “the intersection of money & meaning(お金と「価値あること」が交わるところ)”と説明されるSOCAPはソーシャルビジネスの分野にどうやってお金を持ってくるかという課題へのソリューションと捉えられます。事業のビジョンがいくら優れていても、採算があわなければ続かない。一方投資の世界では短期的利益を追求することで、必ずしも社会的に歓迎されないビジネスが持続してしまう。

 そこで“どれだけ社会にとっていいことをしたか”というお金以外の指標を投資に組み込むことで、資本主義の枠組みのなかで社会性が担保されうる世界を築こう、という思いのもとSOCAPは誕生しています。

 

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―――お金以外の指標というのは。

 

 指標をどう定めるかについてはまさに今世界中が議論しているところですが、例えば「何人の学童支援児がアフタースクール教育を受けられたか」「何人のホームレスを社会復帰させたか」などが挙げられます。短期的な利益は得られなくても、これらの指標によって価値をアピールする。(金銭的なリターンについては)たとえば3~5年後くらいに最終目標を置き、リターンが得られるまで、投資家はマネジメントを通じて事業者を育てつつ、最後にはお金も返ってくることが理想とされています。

 

―――“社会的”事業とは、政府の機能の一部ともいえますか。

 

 そうですね。たとえば、アメリカのグッドケースには、刑務所に収容されている人が更生するための事業なんてものもあります。アメリカでは貧困に起因する犯罪行為が社会問題として認識されながら解決策が取られてこなかった。そこへ囚人へのリーダーシップ教育、キャリア教育を通じて、刑務所から出たあとの経済的自立や精神的安定を担保する事業がSOCAPで挙げられました。このとき用いられた指標には、活動範囲(どれだけ多くの州で教育事業をおこなったか)施設数(いくつ施設を増やしたか)などがありました。

 

―――投資家と社会起業家との交渉で印象的だったことはありますか。

 

 まず圧倒的に投資家が強い。お金はやはり大事だなと感じました。

 そして個々人の想いであろうと巨大な投資機関の方針であろうと、みな長期的に“世の中にどのようにインパクトを残していくか”を注視していること。単発の取引内容よりもむしろ重視されているところだと感じました。総じて従来政府が担ってきたパブリックな機能を、個人や民間の組織が担おうしている。そんな姿勢が伺われました。

 そして個人や、民間の組織が機能を拡大しようとしている流れはテクノロジーに後押しされるとも感じています。

 

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―――テクノロジーが後押し、とはどういう意味でしょうか。

 

 SOCAPの話からは少し離れますが、サンフランシスコではSOCAPの他に「ブロックチェーンユニバーシティ」という機関を訪ねる機会があったんです。ブロックチェーンとは“第二のインターネット”等といわれる技術で、この機関ではブロックチェーンを構築する技術がレクチャーされ、技術を応用したプロダクト開発が行われていました。様々なバックグラウンドを持つ人達が集まり“これで何かできないか”と新しい技術の可能性が探求されていたんです。

 

サンフランシスコで目にした“世界最先端”

 

 集まる人たちは生粋のエンジニアばかりかと思いきや、心理学・哲学・文学を博士レベルに修めたような人までもが、当たり前のように新しい技術に精通していました。“世界のレベルってこんな感じなのか”と衝撃を受けたのを覚えています。自分に限界をつくっていた「分野」「専攻」などの枠組みが再構築されました。2015年の今、期待されるテクノロジーがあるのなら、自分の手でその可能性を確かめる。それが世界最先端なのだと感じました。

 

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 新しいビジネスの仕組みや未知なるテクノロジーが個々人や民間組織をエンパワーメントしうる。さらにそれは「社会的」事業の可能性をふくらませる。その可能性にわくわくした私は、いくつかの進路への迷いを断ち切り、一つの内定先(ガイアックス)へ入社することを決意しました。そこならサンフランシスコで目にした可能性を自分の手で探れると思ったからです。

 

―――社会性の高い事業に関心がありSOCAPへ。さらにその事業を後押ししうるテクノロジーとの出逢いを機に「テクノロジーを理解しながら社会性の高い事業に携わる」べくガイアックスへ。そんな流れでしょうか。

 

 そうですね。ただ、進路の決め手はたしかにSOCAPのような「新しい」ビジネスやブロックチェーンのような「未知なる」テクノロジーでしたが、この岐路に立たせてくれたのは、今まで出逢ってきた友人や先輩たちとのご縁とご恩にほかなりません。

 ふり返って思えば、私がSOCAPへ行けたのも、“非金銭的”価値に投資してくれた人たちのお陰ともいえます。

 サンフランシスコなんて、SOCAPなんて高くていけないよな、と思いながらも説明会へ足を運び、そこにたまたま慶應のアイセック時代の先輩がいました。その先輩経由でカンファレンスの通訳をする代わりにSOCAPのチケットを入手でき、さらにサンフランシスコへの渡航費はSOCAPのメインカンファレンス以外の通訳をしてくれるなら、と内定先の社長さんが出してくれました。私の“英語力”と引き換えにみんなが“お金”を出してくれた、というか。

 ここまで支えてきてくれたすべての人たちへの感謝を忘れず、4月からも頑張りたいと思います。

 

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―――ありがとうございました。

 

(取材・文 北原梨津子 写真 日比さん提供)

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