INTERVIEW / FEATURE 2015年8月17日

国境なき時代のリーダーに必要なもの。 昭和電工技術顧問 塚本建次さんインタビュー

研究、ビジネス、さまざまな分野のリーダーたちへのインタビュー連載、「リーダーズインタビュー」。今回は、昭和電工株式会社で技術顧問を務める塚本建次氏へのインタビューです。

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−−まずはご経歴についてお聞かせ下さい。

中学高校はミッションスクールで、毎週に宗教の教えを受ける時間が設けられていました。その頃はあまり興味が持てなかったのですが、ここで学んだ「克己やために尽くす」という教えが、その後の人生の哲学になっていると思います。自ら他者のために尽くし、悪いことを他人のせいにするのではなく、主体性を持って取り組むことが大切なのです。

私はベビーブーム世代で、大学に入るのにも学校によっては何百倍という凄い倍率を勝ち抜かなければならない時代でした。大阪大学に入ることができたのですが、ちょうど学園紛争の時期と重なってしまい、授業などまともに行われていません。70人いた溶接工学科では「出席日数が足りないため留年だ」と多くのの学生が申し渡されてしまいました。私もそのうちの一人で、学園紛争をこれ幸いと真面目に勉強していなかったことも事実です。 父親から勉強しないなら大学を辞めろと言われ、何としても留年を避けるべく、全教授に個別に進学をお願いし、学科によっては個別に追試をしてもらい何とか進級することができたのです。このときの経験が、社会人としての原点ではないかと思います。 身から出たさびとは言え「為せば成る」ということを学びました。

卒業論文では音響工学を勉強し音の減衰拡散を学び、超音波による非破壊検査に取り組みました。溶接工学科の選択肢としては主流ではなく、卒業論文の試問でも教授陣はあまり理解できていなかったかと思います。卒業の当時はまさに鉄鋼、造船業が華やかな頃だったのですが、所謂大企業では面白くないと考え、「これからはアルミの時代だ」との思いから昭和アルミに入社しました。

入社7年目に工場が閉鎖することになったのですが、ここで会社というのはいい加減なものだと痛感することになります。偉い人たちはどんどん次のポストが決まって移っていくのに、私のような下っ端はいつまで経っても次の行き先が決まらないのです。「自分のポリシーを持たなくてはだめだ、言うべきことを言うしかない」と強く感じました。辞表を出そうとしたところ、「溶接の研究をやってみないか」と好きなことをやらせてくれるポストが見つかったのでそこに移り、また数年後に生産技術の取り組みをすることになりました。何がやりたいかをはっきり主体性を持って言うことが大切なのだなと感じます。

そんなことがあったりしながら、2001年に合併で昭和電工となり、これまでに16の部署を回りました。ほとんどの仕事を体験しましたね。その際に学んだことは、現場に出ることの大切さです。現場に出ているからこそ技術者たちから信用され、現場の方々からも「話を聴いてもらえる」とも思ってもらうことができ、結果として情報をもらえるようになる。そうすれば、問題が起きたときにその原因に気づくのも早くなります。

 

−−日本を引っ張るリーダーとなるためには、どうすればいいとお考えですか。

 

まずお伝えしたいのは、「いまや国境はない」ということです。特に、技術については国境などありません。

これは、20年ほど前、マッキンゼー・アンド・カンパニー出身の経営コンサルタントである大前研一氏が主宰するビジネススクールで学んだことです。彼は、講義の際に受講者たちに向けて「国境とは何か」と問いかけました。さまざまな回答が出ましたが、彼の用意していた答えというのはこうです。すなわち、「もはや国境など存在しない」と。彼は、「三つのIが国境を越える」と言いました。すなわち、「Investment」、「Information」、「Immigration」です。

投資、情報、そして移民は国境を越えていく。日本人としての文化的アイデンティティなどは必要ですが、ことビジネスということになると、外国人だとか日本人だとかいったことを意識する意味はありません。

私はもともと人材育成否定論者なので、文科省の推進する「イノベーション人材」には懐疑的です。イノベーターとしての素質を持った人は多くいますが、それは育てようと思ってそうなるものではなく、本人次第だと思うからです。私が大学を出た頃にも学園紛争は続いていて、紛争に関わっていた学生はなかなか就職できなかったものですが、ただホンダだけはこうした学生を積極的に採用していました。その後のホンダの成長を考えると、必ずしも大人しくて、まじめで学業優秀な人ではなく、主体性を持って行動しようとする人にこそリーダーシップがあり、イノベーションを起こせるのだと感じます。

実際、今の日本にもイノベーターとしての素質を持った人は多いと思いますが、組織の壁とかルールとかいったものに潰されているだけなのです。やるべきことは、イノベーターを育てることではなく、イノベーターを阻む壁を取り除くことでしょう。

アメリカの例を見れば、特許を取りまとめて扱いやすくした「パテントプール」だとか、成功者が次代に投資する「エンジェル投資家」といったシステムがしっかりできており、イノベーションを起こすための仕組みがあります。そして、失敗した人ほど次の仕事の口がくるという文化があります。あちらでは、「一度失敗したのだから、同じようなミスは繰り返さないだろう」という考え方なのですね。翻って日本では、一度失敗すると烙印を押されてしまいます。

私が座右の銘としているのは「随所に主となれ」という言葉です。自ら主体性を持って行動するということこそ、リーダーとして、そしてイノベーションを起こすには重要な資質です。

もう一つ、私が新入社員に言い続けてきたのが「守破離」という言葉です。まずは先人たちの教えを守り、次にそこを破って先の段階へと進み、そしてそこから離れてはるか先へと行く。社会人生活を「守」だけで終えてしまう人もいますが、それではリーダーとはなれません。もちろん、いきなり「破」や「離」だけでもだめで、まず先達の教えを確り守り、次に破り、そして離れるという順番が大切なのです。

 

−−リーダーになりたいと思っている学生へのメッセージをお願いします。

 

他人のせいにするんじゃない、ということですね。何事も、主体性をもって考えること。

そして、頭の良い人に限って、答えのある問題ばかりに長けているという印象があります。そうした人は、答えのない問題にぶつかったとき、そこから逃げてしまうのです。

リーダーになりたい人には、答えのない問題から逃げないでほしい。

現場に出て、主体的に考えていけば、直ぐには答えのない問題であっても必ず解決の糸口が見つかります。 「もつれた紐がほどけていくような感覚」を得ることができると思います。

 

(取材:森友亮、石原祥太郎 構成:森友亮)

 

本インタビューは東京大学新聞オンラインとGCL Newsletterの共同企画です。

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