INTERVIEW / FEATURE 2014年9月2日

アンダーグラウンド化する、16卒就活の課題と展望 キャリアセンタースタッフに聞く

「2016卒の就職活動は、リクナビ登場以前の時代の就職活動に戻る第一歩になるのではないか」そう語るのは、見舘好隆准教授(北九州市立大学キャリアセンター)。就活解禁時期が先送りされ、説明会は3カ月、選考活動は4カ月、現行より遅れて始まる2016卒就活。

紙面でも「就活先送り」の問題を取り上げたが、この変更は、企業・大学・学生にどのような影響を与えるのか?キャリア支援のプロに、これからの「就活」について話を聞いた。その内容を、2回にわたりお届けする。

1024px-Company_Information_Session_in_Japan_002.jpg(Flickr Dick Thomas Johnsonより)

−−−今回の「就活先送り」について、お考えをお聞かせ下さい。

企業・大学・学生、誰にとってもデメリットが少なからず生じた変更だと思います。

−−−それぞれの問題点を教えていただけますか?

まず、企業の視点でいうと、説明会解禁の遅れは大きな影響です。今までは、12月から4月の間に、学生に対して企業のことを知ってもらう時間を作ることができました。しかし、説明会の開始日が12月1日から3月1日になれば、物理的に広報期間が3カ月減り多くの企業が十分に企業のことを伝えられず、結果、大企業や有名企業ばかりに学生が集中することが懸念されます。

こう聞くと、少し不思議に思うかもしれません。「選考の開始も遅らせるのだから、今と変わらないのではないか」と。しかし、実際はそうではないのです。

そもそも、この先延ばしの拘束は法律で定められたものではないので、もし破っても罰則はありません。また拘束を受けるのも、経団連・経済同友会・日本商工会議所に加盟しており、かつ経団連の倫理憲章に同意した企業だけです。例えば経団連加盟企業であっても、半数近くは「倫理憲章に参加しない」と表明しています。一方で、こうした団体に加盟していない外資系企業・ベンチャー企業は、もちろん決定に従う必要がありません。新経済連盟も反対していますね。

つまり、既に「先送りには従わない」と言っている企業が多数いるわけです。こうした企業はリクナビやマイナビなどを用いない「アンダーグラウンド」な採用活動を実施していきます。このような状況の中で、倫理憲章通りに3月1日から企業説明会や合同説明会を実施しても、他の企業は優秀な学生と関係を築いてしまっていて、優秀な学生を採用できないのではないか、という不安を多くの企業は抱えています。人気企業なら関係ないかもしれませんが、特に中小企業の採用活動は大企業の後に行われるので、深刻なダメージになる可能性があります。

−−−大学の視点だとどうなるのでしょう?

そもそも大学は、以前から「就職活動の早期化が学業に悪影響を与えている」と批判してきました。面接時に、「大学で何をやってきましたか?」と聞かれても、学生が答えるのはだいたサークルかアルバイト。それもそのはずで、ゼミに入ってまだ日が浅いから、学業に関して喋れるネタがなかったのです。学んできたことを就職活動で活かしてほしいという意識もあり、「就活先送り」を支持してきた背景があります。

ただ、後ろ倒しにした結果、今度は別の問題に直面します。「いつ卒論を書くのか?」という問題です。特に理系は実験などで時間を取られることが多く、8月1日から面接をやりながら、並行して学業に専念するのは難しいでしょう。

大学側がこの先送りを要望したと言われていますが、学生の視点から考えたかどうかは、言いきれないと思います。

−−−では、学生への影響を教えて下さい。

学生からすると、一斉に「ヨーイ、ドン!」ではなくなることの混乱でしょう。今まではみんなと一緒に就職活動を始めても何とか間に合っていました。12月1日の、あのニュースでよく「就職活動が始まりました」と放映される合同企業説明会に参加し、4月の選考開始までに時間をかけて企業の情報を集めることができました。

でも今回は、先ほど申し上げた通り、採用活動は「アンダーグラウンド化」します。主体的に動いている学生は、早くから企業と接触して関係を築きいていきます。3月1日以前に企業と接する方法の一つがインターンシップになります。インターンシップはご存じの通り、自分から主体的に企業に申し込まなくてはなりません。エントリーシートを書いて、場合によっては何回もの面接を通過して、やっとインターンシップに参加できる。その後、「ねえねえ、見舘くん、今度、先輩達との懇親会があるけど、来る?」と誘われて、やっとアンダーグラウンドの世界に入れる。なぜなら、この懇親会、座談会と呼ばれるものは、面接の一つなのですから。

では、以上のように主体的に活動しなかった学生はどうなるか?3月1日にオープンした就職情報サイトにいざ登録しても、実はもう半分くらいの枠は埋まっているかもしれない。企業によっては、採用自体が終わっているかもしれない。結局、真面目にやったら損をすることになる。「就活生の二極化」が進むことが懸念されます。

−−−そうなると、大学や企業はどのように動いていくのでしょうか?

多くの大学はきっと、10月頃から「学内業界研究」といった形で、企業と学生が出会う場を作るでしょう。そこで、秋冬にかけてのインターンを紹介して、「就活生の二極化」を防ごうとするはずです。

企業としても、採用活動が長引けばコストも手間もかかるので、3月1日からの短期決戦で採用を終わらせてしまいたい。8月1日まで待っている企業はほとんどないと思います。3月1日に採用広報が解禁される時には、「8月1日の面接までは内緒だよ」と言って、「内々定」を出す企業も多くなると思います。8月に行う面接は、実質的には留学から帰ってきた学生のための枠になることが予想されます。

企業の人事の立場になってみてください。外面的には倫理憲章を守らなくてはなりませんが、本当に正直に採用活動した結果、優秀な学生を採用できないかもしれません。そうしたら当然、上司から叱られるでしょう。だから何とかして3月1日以前に、会社を広報する機会を持ちたいと思うでしょう。ただ問題は、企業から大学に、「学生を紹介して下さい」というお願いはできないことです。だからこそ、大学側が主催する「業界研究会」が重要になってくると思います。

(取材・文 オンライン編集部 荒川拓)

※後編は、明日9月3日公開予定です。

見舘写真.jpg見舘好隆准教授(みたて・よしたか)

北九州市立大学・キャリアセンター所属、地域創生学群専任。授業はキャリア教育を担当。実務としてはキャリア支援を担当。研究領域は、若年者のキャリア形成支援。初年次教育やキャリア教育、企業内教育など。近年はPBL(Project-Based Learning)やサービスラーニング、産官学連携教育など、大学での学びとキャリアとの接続を中心に研究。

関西大学卒業後、旅行会社(人事)やインターネットプロバイダ(プロデューサー)など民間企業2社に15年間勤務。その後、首都大学東京キャリアカウンセラー(3年)、一橋大学大学院社会学研究科特任講師(1年)を経て、現職。

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