PUBLIC RELATIONS 2016年9月11日

いま東大生が「ほんき」に読むべき「ほん」⑥『表現のためのロイヤル英文法(例文暗記CD付き)』

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表現のためのロイヤル英文法(例文暗記CD付き)

綿貫陽、マーク・ピーターセン 共著
旺文社 2011年 2268円
ISBN978-4010312995

 

 今回の特集は良きにせよ悪しきにせよ「凄い」訳本を紹介するという趣旨だ。しかし私には良い訳本の方には全く鑑定眼がないし、悪い訳本の方は過去に読んだものの中で「何これ?」と感じたことはいくつかあっても強いて取り上げるほどでもないので、自分も含め一般の人々が日々生み出している「超訳」に注目することにした。

 

 日本人の英語苦手ぶりは改めて言うまでもない。近年ではコミュニケーションに相当の力を入れてきていると聞くが、それでも英語四技能(読み、書き、聞き、話し)のうち満足にできるのが「読み」しかないという人はこの東大の中でさえ少なからずいるのではないだろうか。恥ずかしながら私はその一人だ。投稿論文で義務的に書く英文のアブストラクトでも相当な「超訳」をしているはずで、海外発表など及びもつかない。

 

 さすがにこのままではまずいと思っていたところ、ふと立ち寄った書店で見つけたのがこの本だった。本書は受験生なら誰でも知っている『ロイヤル英文法』の姉妹本だ。著者も旺文社の英語参考書でおなじみの綿貫氏でコテコテの受験参考書と言える。私は10年以上前に受験から足を洗ったため知らなかったが、初出は2006年、音声CD付きでリニューアルされたのが2011年であるから、現在在学中の皆さんには既に本書の世話になった方が多いかもしれない。現在はCD有り無し両方の版がリリースされているが、この書評の書誌情報はCD有り版に準拠している。

 

 さて本家と異なるこの本の特徴は、タイトルの通り書いたり話したりする英語表現にフォーカスした構成になっていることだ。例えば、とかく英語の参考書は文学的な美文を載せたがるきらいがあるが、本書の例文はなるべくどこでも使える平易なものが選ばれている。また、文法的な正しさは踏まえつつも、現代の英米圏で用いられる言い回しが随所に紹介されている。共著者のピーターセン氏はかつて『日本人の英語』(岩波新書)を著し、日本人の英語のクセを知悉されている方だけに、コメントも行き届いている。

 

 あえて難を言えば、文法書の形式に落とし込まれているためどうしても辞書的な使い方になりがちな点であろうか(これは本家も同様だ)。また例文が平易なのは良いが、ビジネス英語などと違って具体的な使い所がつかめない文章が多いのもやや勝手が悪く感じる。しかしながら、これだけ中身盛りだくさんの本が安価に買えるのはやはり有難いことである。折角の本が棚の肥やしにならないよう、これからは努めて使っていこうと思う。

 

(でち公)

 

※この記事は「ほん」からの転載です。「ほん」は東大生協が発行する書評誌で、さまざまな分野を研究する東大大学院生たちが編集委員会として執筆・編集を行っています。年5回発行、東大書籍部等で無料配布中。

 

【いま東大生が「ほんき」に読むべき「ほん」】

①『山怪 山人が語る不思議な話』

②『桜の花が散る前に』

③『森の生活―ウォールデン―』

④『東京帝国大学図書館 図書館システムと蔵書・部局・教員』

⑤『パタゴニアの野兎――ランズマン回想録』

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