INTERVIEW / FEATURE 2014年9月29日

【躍進する地方高校の実態】「東大受験を後押し」 合格者増やす筑紫丘高校

東大は、関東以外の地方出身が比較的多い。東京大学新聞社が2014年度学部入学者全員を対象に実施したアンケートによると、出身校の所在地に関する質問で「近畿」「中部」「九州・沖縄」「中国・四国」「東北」「北海道」の合計は40%を超えた。一方、各大学発表データによると早稲田大学と慶應義塾大学は約25%で、東大より少ない。東大合格者が多い高校としては首都圏の有名校がよく話題になるため、地方の高校の実態が知られる機会は少ない。しかし地方にも東大合格者が10人を超えるほか、科学オリンピックで顕著な成績を上げるなど成果を出している高校は多い。この連載では、東京から離れた地域で多くの東大合格者を輩出する高校を取材した。 福岡県立筑紫丘高校は毎年多くの東大合格者を輩出し、2014年度も14人(うち現役8人)の合格者を出した県内でも有数の進学校だ。行事にも力を入れており、生徒が主体となって運営する「翔丘祭」という文化祭や大運動会には校外からも多くの人出がある。同校には普通科と理数科の課程があり、理数科では普通科のカリキュラムに加えて理科・数学の進度が速く、1年次の「種子島・屋久島研修」など、独自の行事があるといった特徴がある。筑紫丘高校の東大合格者が多い理由について、進路指導主幹の豊野育教諭に聞いた。 DSC00205.JPG ――筑紫丘高校の特徴は 素直な生徒が多いということではないでしょうか。私が筑紫丘高校に赴任したとき、自主的に掃除をしている生徒が数多くいました。他の学校ならそのような生徒はからかわれたり、邪魔されたりするかもしれません。しかし筑紫丘高校では誰にも邪魔されず、むしろ周りがまねることが多いように思いました。つまり、筑紫丘高校の生徒には他人の長所を素直に取り入れる力があり、学校には「良いことが広がる環境」が整っている。それが受験勉強をするときにも生きてくるのだと思います。 ――2014年度入試の結果をどう見ているか 14年度入試の特徴は旧課程の教科書に基づいて行われる最後の入試だったということでしょう。15年度入試で再挑戦ということになれば負担が大きくなります。そのような中で、本校の生徒にはあえて例年通り失敗を恐れず、第1志望を貫くように指導しました。その結果、東大・京都大学・九州大学といった難関大学の合格者は13年度入試より増加しました。 ――生徒の東大受験を後押しする取り組みは 福岡県には九州大学という旧帝大があるのでわざわざ住み慣れた場所を離れて東大を受験しようとする生徒はそう多くないのが現状です。しかし教育目標にある「本校の使命」の「21世紀をリードし、世界に貢献する」を達成するためには首都である東京に出て広い視野を持つことも重要だと考えます。そこで10年ほど前から「社会人講演会」や「東京研修」で生徒の東大受験を後押ししています。社会人講演会では、1、2年生を対象とし、東京をはじめ世界各地で活躍するOB・OGに自分の進路選択などについて話をしていただきます。東京研修は2年生を対象とし、例年約半数の生徒が参加する企画です。東大をはじめとした首都圏の有名大学や、国会議事堂など東京にしかない施設を2泊3日の日程で見学します。こうした取り組みにより、東大や京都大学の志望者は増加傾向にあります。 ――14年度入試では、地方の優秀な受験生の多くが地元の医学部を受験したという報道が多くの雑誌などでみられるが 筑紫丘高校ではそのような印象はありませんでした。医学部受験という決断は大学卒業後の進路がほぼ決定するという点で東大受験と並べるべきではないと考えます。本校では14年度入試で、医学部の合格者も多数いましたが、すでに医学部という進路を決めた後でどの大学を受験するか悩んでいた印象がありますね。従来東大を受験していた層が医学部を受験したので東大合格者数が減ったという指摘は少し違うのかなと思います。 ――東大は2016年度入試から推薦入試を導入するが 東大が多様な背景を持つ学生を求めているのがよく伝わってきます。推薦入試の受験者は一般入試も受験する可能性があるので、当然一般入試に向けて受験勉強に取り組むでしょう。しかし推薦入試対策に時間を取られて一般入試対策に支障が出るのならば、どれだけの生徒が推薦入試を希望するのかは疑問です。現状では高校で自分の能力や過去の努力を相手に伝えるトレーニングの機会が少なく、高校教育も変わっていかなければならないのかもしれません。 ――東大に求めるものは 地方の学校ではOB・OGに東大生がいても、なかなか交流する機会はありません。現状では入ってくる東大の情報が少ないほか、生徒の中でも東大は身近な存在にはなっていないと思います。そこで、その地域出身の東大生による地方でのイベントを東大が主催するなど、東大側から歩み寄ってもらうことも必要だと考えています。 (取材・文 小原寛士)

 

【躍進する地方高校の実態】

『最後まで諦めず』合格者伸ばす岡山朝日高校

自分の意志で進路実現 熊本高校

「堅忍不抜」「自主自律」 札幌南高校

現役で東大にいく学生に共通することとは? 修猷館高校

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