学術

2016年9月21日

細胞分裂で色が変わる大腸菌? 東大生が国際大会金メダルを目指す

 こんにちは、iGEM UT-Tokyo 2年の成田佳奈香です。この場を借りましてiGEM UT-Tokyoの活動についてお話しさせて頂きます。

 

 iGEM(the international Genetically Engineered Machine competition)はマサチューセッツ工科大学(MIT)発祥の学部生を対象とした合成生物学の国際大会です。iGEMでは各チームがBioBrickという特定の規格に則った遺伝子パーツを新たに作成したり組み合わせたりすることで新たな遺伝子回路を創り、それを細胞に導入することで新たな機能や性質を持たせ、その独自性や工業的有用性、学術的価値を競います。2009年、iGEMに出場するために集まった学生有志によってiGEM UT-Tokyoは結成されました。本年度のチームでは教養学部前期課程の1、2年生が主体となってプロジェクトを進めています。

 

 今年はボストンで大会が開かれ、iGEM UT-Tokyoも出場が決まっています。大会に出場するために研究費やチーム・個人登録費、渡航費、宿泊費などがかかります。研究を行うラボは若本祐一准教授(総合文化研究科)のご厚意でお貸しいただき、一部試薬を東京大学複雑生命システム動態研究教育拠点プロメガ株式会社様、コスモ・バイオ株式会社様からご支援いただいていますが、それ以外の費用に関しては目処がついていません。そこで、私たちのプロジェクトを多くの人に知ってもらい、できれば支援をいただきたく思い、クラウドファウンディングを活用することに決めました。

 

 ところで皆さんは、クラウドファウンディングをご存知でしょうか? クラウドファウンディングは群衆(crowd)と資金調達(funding)を指す造語です。これは、あるプロジェクトを行おうとする個人や組織に対し、不特定多数の人に向けて資金の協力を募るものです。研究者の方も研究費を集めるためにクラウドファウンディングを多く活用されています。例えばiPS細胞の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥先生も研究資金を集めるためにクラウドファウンディングを利用されていました。私たち東京大学の学部生のサークルであるiGEM UT-Tokyoは今まさにクラウドファウンディングを行っています

 

 iGEM UT-Tokyoの今年のプロジェクトでは、分裂する毎に遺伝子発現が変わるような大腸菌を作ることを目指しています。具体的にはGFP(緑色蛍光タンパク質)を発現している大腸菌が分裂するとGFPを発現しなくなる代わりにRFP(赤色蛍光タンパク質)を発現するようになります。また分裂するとRFPが発現しなくなり、CFP(シアン色蛍光タンパク質)が発現するようになります。再度分裂するとCFPが発現しなくなりGFPが発現します。このように3世代でループするような大腸菌を作ることを目指しています。(図)

figure1

 

 有性生殖を行う生物では、配偶子の減数分裂時に起こる遺伝的組換えによってゲノムの変化が起こり、ゲノムの変化に伴う表現型の変化という形で世代毎に形質が変わる、ということがあります。私たちが創ろうとしている遺伝子回路を持つ大腸菌はゲノムの変化を伴わずに世代毎に表現型を変えることができます。この大腸菌では、大腸菌が分裂していくとある世代で致死遺伝子が発現する(「死ぬ」という表現型に変わる)ような、いわば時限爆弾を内蔵するような設計も可能です。現在、遺伝子組み換え生物を野外に放つことは法律で禁止されていますが、私たちの創る遺伝子回路に汚染物質を分解する機能を持つ遺伝子回路を組み合わせることで、遺伝子組み換え微生物による環境の浄化が可能になると考えています。

 

 最後になりましたが、本プロジェクトの詳細に関しましてはアカデミスト株式会社様のWebページをご覧ください。私たちの研究に興味を持っていただければ、できればご支援いただけたなら、とても幸いです。魅了的なリターンもご用意しております。

 

 また、10月末に行われる大会終了後に来年のチームが結成される予定です。秋新歓を行いますのでiGEM UT-Tokyoで活動したいという方はigem.ut@gmail.comまでご連絡ください。学年・文理は不問です。iGEM UT-Tokyoでは生物学に限らず多様な学問を扱います。意欲的に活動に参加してくださるメンバーを募集しています。

 

成田佳奈香 (理科Ⅱ類・2年)

 

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