COLUMN 2015年2月23日

食べ歩きに恋みくじ、春の学生伊勢旅行

伊勢の旅の二日目は、神宮への早朝参拝から始まる。大樹に囲まれた境内は薄暗く、静かな参道に小石を踏む足音だけが響いてる。「静謐な、空気の張り詰めたような……」と、言葉を探してみてもうまく表現出来ない。逆に言えば、言葉に出来ない体験を得られることが、旅の特別なところ、なんて言えるのかもしれない。

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正装して参拝していたあるグループの真剣な表情。それを、少しずつ明るくなっていく朝日が鮮やかに照らしていた。少し聞こえた会話からすると、ある会社の社員一行らしい。新しいプロジェクトを立ち上げるのか、それとも前年度の感謝なのか。神宮は、「区切り」の時にも訪れる場所なんだな、ということに気づかされる。

この日は、天照大御神を祀る「内宮」へ向かう。参道を歩いていたとき、ディズニーランドを思い出した、って言ったら不思議に思われるだろうか。舞浜の駅を出て、長い橋をゲートまで歩く途中、段々と周囲の風景が変わってくでしょう。普段見ているマンションや電線が見えなくなって、現実の世界からゆっくりと夢の国に入っていく。

内宮に入るときも、まず大きな宇治橋を渡る。一度建物が見えなくなって、視界一杯に緑が広がる。樹齢が何百年もありそうな大樹に囲まれて歩くうち、わいわい騒いでいた観光客も次第に言葉が少なくなり、黙々と歩き始める。心が静まってきた頃に、さっと道がひらけて、透明で清らかな五十鈴川が表れる。俗の世界から切り離されて、聖なる場所に入っていく。内宮のご正宮にたどり着くまでの道のりで、ゆっくりと心の準備をさせられる。同行している静大のみんなのことはしばらく頭から消えて、一人きりで参拝を味わう気持ちになっていた。ご正殿は、何重もの垣根に取り囲まれていて、ほんのわずかに垣間見える程度。写真撮影は禁止、騒ぐものマナー違反。一般の観光スポットとは正反対だ。

壮大な石段をゆっくり、踏みしめながら登る。ふっ、と顔を上げると、一組の老夫婦が、神職の方に導かれて垣根の1つ向うを歩いている。一般よりも少しだけご正殿の近くで祈る「特別参拝」だろう。足元の清められた玉石に、幾度も足をつまづかせ、二人で支えあうことでようやく前に進んでいく。ほとんどスローモーションのように、ゆっくりと二拝、二拍手、一拝。気づけば、回りにいる人々もじっと老夫婦に視線を注いでいた。短い祈りの瞬間に、二人の時間がギュッ、と圧縮されたみたいに見えて、目に焼きついている。この二人のような人のために、この場所はあるんじゃないか、なんて思いが浮かぶ。僕は(おそらく、今の若者世代の多くもそうだと思うけれど)典型的な無宗教で、寺社に行くのは初詣くらい。それだって真剣に参拝してるわけじゃない。「まあ、ないよりはいいだろう」と天神様の合格御守をもらいに行ったのが関の山。遷宮で真新しくなった神宮の空間に、不思議さや面白さを感じても、ディズニーランドを比較に出すくらいで、神さまの息吹を直接感じ取ったりはできない。けれど、人を通じてなら、何かが伝わってくる気がする。老夫婦の祈る姿が、目に見えないものへの媒介になる……これもまた、言葉に出来ない体験だった。

ise0223-2.jpg 「聖」の体験のあとは「俗」を、ということで、内宮のすぐ足元、「おはらい町」「おかげ横丁」へ。江戸や明治の風景を残す商家や蔵を改装した店舗、長く続く石畳と川沿いにずらりと並ぶカフェは風情がある。伊勢海老や松坂牛を出す高級店もあるけれど、まずは食べ歩きをしながら散策するのが楽しい。赤福本店をはじめとした和菓子屋を巡り、人気の「豚捨」のコロッケ、近海で取れた魚の干物や揚げ物をほおばって、ヒノキづくりのカウンターで日本酒の立ち飲みも楽しめる。

おみやげもバラエティ豊か。商品名に「お清め」とついたグッズから、海産物に焼き物、もちろん赤福も、目移りするほど沢山のお店がある。「初TABI in 伊勢」の参画店もところどころにあって、静大のみんなは残ったポイントを使って買物を楽しんでいた。加盟店では、リクルートポイントも使えるらしく、大学近くの飲食店をホットペッパーグルメでネット予約したときに貯まったポイントで、友人へのおみやげを買ってしまった。

神宮での静けさはどこへやら。おいしい食べ物とかわいいおみやげにみんな大騒ぎ。まあ、江戸の時分も、お伊勢参りってのは物見遊山の旅も兼ねていたみたいなので、これも伝統なのかもしれない。カラフルな土産袋を両手に抱え、満足そうな顔で帰路につく静大生のみんなを見送った。

紹介しきれなかったけれど、他にも様々な「初TABI」の特典を受けた。二見エリアへ足を延ばした際には、水族館の二見シーパラダイスの入場が無料になった。先着でレンタカーやレンタサイクルも無料になるそうだ。先着限定だが、今なら名古屋と伊勢を往復する高速バスも無料で予約できる。

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若者限定のたくさんの特典その裏には、一度伊勢に来ればきっとリピーターになってくれる、という自信が見えてくる。次に訪れるときには、「せんぐう館」「伊勢河崎商人館」など文化スポットを訪れ、より深く伊勢を楽しみたい。

(文責 沖田征吾)

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