COLUMN 2019年11月20日

駒場祭が見た70年 伝統ある学園祭の歴史を振り返る

 駒場祭は今年で70回の節目を迎える。開始以来、一度も途切れることなく続いてきた伝統ある学園祭は、どのような歴史を経て今に至るのか。自身も学部生時代に駒場祭委員を務め、現在『東京大学の学園祭史』という題目で修士論文を執筆中の佐藤寛也さん(教育学・修士2年)に、駒場祭の歴史を時代ごとに区分してもらい、その画期となった出来事について聞いた。

(取材・大西健太郎)

 

佐藤 寛也(さとう ひろや)さん(教育学・修士2年)

 

当初は教員の反対も

 

 

  青春祭の時代

 

 駒場祭の起源をたどると、現在の教養学部の前身、旧制第一高等学校(一高)で行われていた「紀念祭」という寮祭までさかのぼる。1949年に新制東京大学が発足し、教養学部が設立されると、有志らにより駒場キャンパスでも学園祭をとの声が上がり、当初は教員の反対もあったものの、翌年には「駒場祭」として開催が実現した。一高紀念祭は毎年2月に開催されていたが、五月祭との兼ね合いもあり11月に開催されることとなった。当時は紀念祭より続く伝統の「寮デコ」(駒場寮の各部屋に風刺的な飾り付けをする)や、仮装して渋谷まで練り歩く「仮装行列」、クラスなどによる「ページェント」(野外演劇)といった名物企画があり、当時の東京大学新聞紙上では「青春祭の色彩」と形容された。

 

  反体制の時代

 

 その後60年代に入り、学生運動が盛り上がりを見せるようになると、時代の流れに呼応するかのように、政治色の強い社会派企画が増えていった。

 

 運動が最も過熱した68年には全学スト(授業ボイコット)が行われ、駒場祭についても開催が危ぶまれる状況であった。大学側は駒場祭委員会との交渉に応じず、何とか開催するには至ったものの、大学側からの援助が得られなかった。そのためプログラムの売り上げと広告協賛を募って集めたお金のみを運営資金とした「自主管理」による異例の開催となった。

 

  大衆化の時代

 

大学紛争が鎮静化した直後の1969年に行われた第20回駒場祭(写真は東京大学アルバム編集会提供)

 

 翌69年は安田講堂のバリケード封鎖も解除され、紛争が鎮静化に向かった年だった。五月祭は中止となったが、駒場祭は開催される運びとなった。この年は入試が行われなかったため、新入生のいない駒場祭となったが、企画数は大幅に増加し、紛争後の「駒場の再建」の象徴となった。

 

 69年を境に70年代に入ってからの駒場祭はだんだん娯楽的要素が強まっていった。69年には、屋外ステージが初めて設置され70年代前半にかけて、屋内企画に占める喫茶店の割合や屋外模擬店の数が急増した。

 

 80年代に入ると、駒場祭委員会が設定する統一テーマも、学生運動スローガン風のものから、現在まで続く一言で駒場祭のイメージを表すものに変わっていった。

 

高まる人気

 

  寮なき駒場の新時代

 

 続いて転機となったのは駒場寮の廃寮(96年廃寮宣言、01年強制執行)である。これにより毎年駒場祭と同時期に開催されていた「駒場寮祭」がなくなり、一高紀念祭以来の伝統が途絶えることになった。また、以前は認められていたキャンパス内での飲酒や夜間のキャンパス内滞在は近年になってそれぞれ禁止されたが、これもキャンパス内に居住者がいなくなるという、駒場寮の廃寮なくしては実現しなかっただろう。

 

 寮のあった区域の再開発で駒場キャンパスは大きく変わった。そして廃寮から10年ほどの間に、現在の駒場祭の形がどんどん完成していった。オープニング・フィナーレや中夜祭の開始に加え、駒場祭委員が期間中に着用しているはっぴの導入や、公式マスコット「こまっけろ」の登場、それまでは有料だったパンフレットが無料になったのもこの間の出来事である。

 

  拡大と多様化の時代

 

 近年は「東大生番組」ブームの影響もあるのか、2000年代前半には3日間で合計5万人前後だった来場者数も、ここ数年は12万人を超えるまでに増加した。内容に関しても、駒場祭委員の人数が増えて来たこともあり、公開講座、スタンプラリー、ガイドツアーなど、来場者へのサービスを重視した委員会企画が拡大している。一般企画についても、以前は自分たちがやりたいことをやって楽しもうというスタンスの企画が多かったが、近年は、より来場者の満足度を意識した内容のものが増えているように思われる。

 

記者の目

 

 駒場祭の歴史を振り返ると、どの時代も当時の世相をつぶさに反映していることが分かる。さまざまな変化を重ねながら今に至っているが、唯一変わらないものがあるとすれば、自分たちの学園祭を自分たちで盛り上げようという学生たちの思いではないだろうか。

 

 

 本記事に関連して、今回の駒場祭(11月22〜24日)では佐藤さんら駒場祭委員会OBが中心となって第70回駒場祭記念企画『駒場祭の七十変華』を開催する。会場全体を大きな年表に見たて、第1回から今回までの駒場祭のプログラム・パンフレットを中心に当時の記事や記録写真のパネル展など、駒場祭の歴史を視覚的に楽しみながら振り返ることができる。場所はコミュニケーション・プラザ南館(生協食堂)2階メディアギャラリー。


この記事は2019年11月12日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

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キャンパスガイ:永野創斗さん(文Ⅲ・2年)

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