学術ニュース

2020年5月8日

ニュートリノのCP位相角を大きく制限

 東大が参加するT2K実験国際共同研究グループは、素粒子ニュートリノが空間を伝わるうちに別の種類のニュートリノに変化する現象「ニュートリノ振動」で、粒子と反粒子の振る舞いに違いを与える量「CP位相角」が取り得る値の範囲を限定することに成功した。成果は16日付の英科学誌『ネイチャー』に掲載された。

 

 素粒子には、性質は同じだが電荷の正負が反対の反粒子が存在する。「CP対称性が成り立つ」とは、粒子と反粒子が同様に振る舞うことを意味する。しかし実際は、宇宙の始まりに粒子と同数存在し、粒子と合わさると消滅する反粒子は、現在の宇宙に存在しないため、CP対称性は破れているとされる。そこで、宇宙成立の謎の解明に寄与する可能性が高いニュートリノのCP対称性の破れの測定が注目されている。

 

 研究ではニュートリノの粒子と反粒子の振る舞いに違いがあるかを調べるため、CP位相角という値を測定。CP位相角の値は不明だが、0度や180度を取るとき、粒子と反粒子は同様に振る舞うとされる。

 

 実験では、茨城県東海村の大強度陽子加速器施設「J―PARC」で大量のニュートリノを生成し、岐阜県飛騨市の「スーパーカミオカンデ」で測定。ニュートリノが空間を伝わるうちに周期的に別の種類のニュートリノに変化するニュートリノ振動現象を利用して、変化確率を調べた。結果、ニュートリノのCP位相角の値として、マイナス2度から165度の領域が99.7%の信頼度で排除されることが分かった。

 

 今回の成果は、ニュートリノの粒子と反粒子の性質に違いがあるかに迫る成果となり、今後の測定精度を高めた検証が期待される。


この記事は2020年4月28日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。

ニュース:始まらない「大学生活」 帰省する・しない 分かれる学生の対応
ニュース:東大関係者5人が選出 日本学士院賞 エジンバラ公賞は北名誉教授
ニュース:東大基金 新型コロナ緊急対策基金が寄付募集開始
ニュース:家計が急変した世帯 授業料減免の対象に
ニュース:大学からの情報「十分でない」が過半数 学内英字メディアが英語話者にアンケート実施
ニュース:文部科学大臣表彰 東大所属者44人受賞
ニュース:中央食堂 3月の利用者は前年比3割減
ニュース:文化庁 オンライン授業の円滑化へ新制度施行
ニュース:ニュートリノのCP位相角を大きく制限
企画:オーディオブックが広げる世界 全ての人に快適な読書を提供
コラム:100年前の事例に学ぶ 健康保ち今できることを
知のrecipe:新ジャガのゴロトロ煮
100行で名著:『5万4千円でアジア大横断』下川裕治著
キャンパスのひと:大木有容さん(文Ⅰ・2年)

 

※新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため、STORES.jpのオンラインストアを休止しております。申し訳ございません。
定期購読の方、お試し購読されている方には登録されたご住所に届けられますが、物流の混乱で遅れが発生する場合がございます。
あらかじめご了承ください。

タグから記事を検索


東京大学新聞社からのお知らせ


recruit

   
           
                             
TOPに戻る