COLUMN 2018年6月26日

【日本というキャンパスで】劉妍③ 異文化の壁を乗り越えて

 「世界の仲間とゆく年くる年」は国立青少年教育振興機構が2010年から毎年末に開催している事業だ。日本で年を越す世界各国の留学生が、日本の高校生・大学生と一緒に日本の伝統文化に触れることで理解を深め、異文化交流を促進することを目的としている。

 

 私が参加した18年の活動は3泊4日で、国立オリンピック記念青少年総合センターで行われた。24カ国から集まった約300人の参加者は10人程度のグループに分かれ、活動を展開した。今回のテーマは「つくろう! みんなの『わ』」であった。仲間とのコミュニケーションである「話(わ)」を重視し、日本文化の「和」に親しみ、仲間同士の絆の「輪」を広げよう、という意味が込められている。

 

約300人の参加者は人文字を作った

 

 扇子の絵付け体験、縁日体験、手形アートの作成、お正月東京散策とさまざまな活動を重ねるにつれて、仲間同士の絆は着実に深まっていった。同時に、教育背景などの異なる他国の人と積極的に交流することで多様な視点・文化を学ぶことができた。

 

グループでだるま落とし活動を行った

 

 最初は他国の文化に理解が及ばず、仲間に誤解を生むこともあった。悪気はなかったのだが、知識不足でモロッコの仲間を傷つけてしまったことは深く反省している。彼は自国をみんなに紹介する時、「モロッコはどこにあるどんな国なのか」「どんな言語を使用しているのか」などあまりに初歩的な質問を連発されて悲しくなったと話した。我々は時に、よく知らない文化を軽視する感覚を無意識に与えてしまうのではないだろうか。この経験のおかげで、常に他人の立場に立って物事を考えることの大切さを学んだ。

 

 年越しタイムにはみんなでこたつを囲み、紅白歌合戦を見て語り合いながら日本風の正月を迎えた。中国では旧正月(今年は2月中旬)を送るため、年の瀬ににぎやかな雰囲気を味わうのは非常に新鮮だ。和気あいあいとした中、心の奥底に秘めた話をとことん語り明かした感動は今でも鮮明に覚えている。

 

 その後、世界各国から一堂に会した仲間と一緒に迎えたカウントダウン・ニューイヤーパーティーの豪華さに心を打たれ、世界がぐっと近くなったと感じた。その瞬間、初めに抱いていた、異なる言葉・文化を理解する困難さへの不安は払拭(ふっしょく)された。代わりに、信頼感・共感・思いやり・愛すること・人間同士のつながりの重要さに気付いた。我々は広大な世界にいるが、心を開いて歩み寄れば、世界の仲間との距離はさほど遠くはないはずだ。

 

【関連記事】

【日本というキャンパスで】劉妍① 同じ琵琶でも中身は違う

【日本というキャンパスで】劉妍② 区の行政文書に留学生の視点


この記事は、2018年6月26日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

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取材こぼれ話:横山ゆりか教授
日本というキャンパスで:劉妍③(農学生命科学研究科・博士2年)
キャンパスガール:池田寧夢さん(文Ⅲ・2年)

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