COLUMN 2014年3月20日

子どもに算数で「まずやってみよう」と教えるということ

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大学生ともなると、家庭教師や塾講師などで子どもに算数を教える機会もあるでしょう。

そんなとき、上のような問題が出てきたら、あなたはどのように教えますか。

(特にそういうアルバイトをするつもりのない人は、将来子どもができたときにその子の勉強を見る場面などを想像してみてください。)

子どもに教えると言っても、そもそも自分が解けそうにないんだけど、という人もいるかもしれません。確かに、答えを把握していないと教えようもありませんので、まずは答えの確認です。

1円玉5枚を5円玉1枚に交換すると硬貨は4枚減ります。そうすると、60枚減らすためにはその15倍、つまり1円玉75枚を5円玉15枚に交換すればいいですね。

5円玉が15枚になったら、そこから10円玉にできるだけ両替すると、10円玉は7枚になり5円玉が1枚残ります。

これで8枚ですが、残ったのは10枚なので、あと2枚何かがあります。これは何なのかな、と考えると、最初の両替で5円玉にできなかった1円玉があれば、これが最後まで残ることに気づきます。それが2枚なので、最初にあった1円玉は77枚です。

さて、この問題をどう教えますか。

子どもに算数を教えるのは、そう簡単なことではありません。

算数が苦手だった人は、そもそも自分が解けない問題に出あうかもしれません。もちろん、こちらはもう大人なので解答・解説を見ながら子どもに教えればいいのですが、解説の通りに説明しているのに子どもがその通りに解いてくれない、ということもあるでしょう。逆に算数が得意だった人は、解き方も自分でわかり、子どもにも上手く説明できるかもしれません。しかし、そうやって上手く解かせたはずの問題でまた行き詰まる子どもを見て、これこの前教えたところなのにな、と思う場面もあるでしょう。

算数を教える難しさの原因のひとつは、「目の前の問題を解けること」にはあまり意味がない、というところにあります。

たとえば今回の問題では、「1円玉を5円玉に交換すると4枚減る」のがポイントになっています。それを教えれば子どもは問題を解けるかもしれません。しかし、それをそのまま教えてしまっても、子どもが身につけるのは「1円玉を5円玉に交換すると4枚減る」という知識だけです。1円玉と5円玉を交換する問題しか解けるようになりません。

もしかすると10円玉を100円玉に交換する問題も解けるようになるかもしれませんが、せいぜいそれくらいでしょう。(実際には、10円玉を100円玉に交換する問題すら、解けるようにならない子どももたくさんいます。)

算数を教えるとき、あくまでゴールは「目の前の問題を解く」ことではなく、「子どもが何かを身につける」ことだ、というのを忘れてはいけません。そして「何を身につけられるか」ということに、一番注意を払う必要があります。

今回の問題で言うと、「1円玉を5円玉に交換すると4枚減る」という知識そのものではなく、その事実に自分で気づく力を身につけさせることが、実は一番の目標です。つまり、「1円玉を5円玉に交換すると4枚減る」というのは、教えることではなく、自分で気づくべきことなのです。

そうは言っても、気づかない子はいつまでたっても気づかないから、時間だけ無駄に過ごすことになるんじゃないか、と思いますか。確かにそれはそうです。気づかない子どもは放っておいても何も気づきませんし、「考えなさい」と言われても困ってしまうだけです。

それではどうすればいいのでしょうか。そんなときは、まずやってみよう、と言ってあげて下さい。

例えば、最初1円玉が100枚あればどうなる? と聞いてみるのです。20枚になるので減った枚数が80枚であることを確認します。そうして、さまざまな枚数を設定して、実際に何枚減るかを調べさせてみるのです。最後の段階で1円玉が残っている、ということを見落とす場合もよくあるでしょう。そのときは83枚だとどうなる?というように中途半端な枚数を設定すれば、残った1円玉に気づく確率もあがります。

いろいろやってみて何かに気づく、という経験は、その気づいた事実を知識として得る以上に、試行錯誤するコツや、規則性を見抜く力など、さまざまなものを子どもに与えてくれます。それになにより、そういった経験はとても楽しいです。実際に解いてみて、「1円玉を5円玉に交換すると4枚減る」ことに気づいたとき、ちょっと嬉しくなりませんでしたか。その”気づく”よろこびこそ、算数の本来の楽しさなのです。

算数の楽しさ、伝えてあげてください。

小田敏弘(おだ・としひろ) 数理学習研究所 所長
灘中・高、東大卒。「学校のテストのための勉強」「受験のための勉強」「実生活で役立つ勉強」「趣味としての勉強」「学問としての勉強」など、様々な数理学習(算数・数学の学習)へのニーズがある現状に対して、そういった個々の場面にとらわれない、すべてに通底するものがあるはず、と考えている。現在はその”本質的な数理学習”を追究し、学習者に提供するべく、様々な活動を展開している。ホームページ:http://kurotake.net/

主な著書:
できる子どもは知っている 本当の算数力表紙画像_本当の算数力.jpg
算数の「できる子ども」と「できない子ども」は何が違うのか。
一般的には漠然と語られている “算数のセンス”。その実体を、具体的に、かつ詳細に解説した本。

文の会式 東大脳さんすうドリル
文の会式 東大脳さんすうドリル 図形編」(3月20日発売)
“センス”を磨くために必要なことは、計算や図形のさまざまな面と触れ合い、それらに対するイメージを豊かにすること。
本ドリルは、パズルなどを通じて数や図形との”ふれあい”を増やし、そういったものに対する豊かな感性を育てることが目的。
小学生向けのドリルだが、脳トレ目的でハマる大人も。

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