INTERVIEW / FEATURE 2014年4月14日

江川さんインタビュー「みんな自分が思っているほどまともじゃない、変態から始めよう」

 大学生の平均年齢を20歳とすれば、今の大学生が生まれたのは、およそ20年前。その頃の『東京大学新聞』でも、「大学とは、大学生とは何か」ということは、大きなテーマの1つだった。編集部員は、気鋭の作家や学者が発表した作品に刺激を受けると、取材を申し込んで話を聞き、記事にまとめていた。  この20年で、大学は、そして社会は、どう変わり、変わっていないのか――。20年前のインタビュー記事を、再度、そのまま掲載するとともに、当時取材した編集部員がもう一度、20年ぶりに、同じ人物にインタビューして記事にする。その2つの記事を読み比べたら、何が見えてくるのだろう?

egawa-6.jpg漫画家・江川達也
20年前のインタビューを読む)
前回のインタビューを読む)

いま、大学生は何をすべきか

――いまの20歳の人たちは、既に現在、そういう環境にあるわけですが、何かメッセージを贈るとしたら?

江川 そうだなあ。まあ、もうベースとしては、コンピューターを使う時代なんで、そういう基礎能力は……純粋に、デジハリにダブルスクールするべきだと思う(笑)。うん。月1回でもいいから。やっぱり、武器を整えろってことだよね。

自分で表現することってさ、だいたい禁止だったじゃない。自分で表現して、先生の意図と外れるとすごい怒られるわけで。でも実は、先生の意図から外れた方がいいんだよね。やっぱり、それがオリジナリティーだからさ。

だから、まあ、恥ずかしいものをたくさん作ってほしいですね。みんなから褒められようっていう承認欲求がみんな強いんでね。それも最初はいいんだけど、何かいちばん恥ずかしいものをどんどん作ってほしいっていう感じがしますね。

やっぱり表現することじゃないかな。自分の内面とか。いろいろ自分が面白いと思うものとかね。世の中を見て、これが伝えたいとか。

いますごいツールがあるんで。アフターエフェクトとかね、すごい簡単に映像を加工できるんだよ。絵を描けなくても結構なところまでできるな、って思って。もう、読み書きそろばんじゃないけど、動画作れて、コンピューターのプログラム作れなきゃダメだと思うよ。そういうようなことを友達同士でもやってもいいし、勉強会やってもいいし。

たくさんみんな動画を作って、みんなでマインドコントロール戦争に参加。あと座禅組むとかね。心の問題になってくるんで、心の安定をいかに得るかっていう、仏教の研究も必要かと思います。

――映像を作る技術を学んでも、その技術を使って何をするのか、何を表現するのかというところで悩んだり、それが見つからない人もいるのではないでしょうか? 自分は何を表現したらいいんでしょうか、という相談があれば、どんなアドバイスをしますか?

江川 いや、みんな表現できるんだって。あの、本当にバカなさ、嫉妬心で一杯の、「死ね死ね死ね死ね…」って書き込みがネット上にあるじゃない。あれが一番最初のみんなが表現したいことであって(笑)。だって、あれだけ「死ね死ね死ね死ね…」って打つっていうのは、相当クリエイティブだよね(笑)。あれ、レベル低いよ、すっごくレベル低いけど、あれは非常に原初的な表現なんですよ。「死ね死ね…」っていう表現をしたいわけです。その「死ね死ね…」を、どう昇華させていくかってことだよね。

だからみんな、やりたいこととか言いたいことってあるんだよ。最初は「死ね死ね…」って書いてた人が、結構『進撃の巨人』描いてるんじゃないかと思うよね。あれまさに、「死ね死ね…」が発展した漫画でしょ。

だいたいマンガで受けてるのは「死ね死ね…」だからね。人殺しを正当化して美しくしてるのが、いま受けてる漫画なんでね。だいたいそうでしょ。殺し合って、殺された奴が「ありがとう」っていうのがいちばん受けるんだよ。『ドラゴンボール』でもね、ベジータが悟空にやられて、「悟空大好きだぜ」みたいなことを言ったところで人気が上がるんで。みんなやりたいことはそうなんですよ。

「やりたいこと」とは、「恥ずかしいこと」

江川 まあそういう、分析ができない人が多いよね。すぐに「誰々を傷つけるからダメ」とか。特にお母様方がそうなんだよ。子どもって、そういう戦いが大好きなんだよ。闘争本能あるから。そんなとき、「ああどうしましょう」「ダメ、勉強しなきゃ、東大に入りなさい」みたいな、そういうことをやるからダメで。

自分の子どもが「死ね死ね…」って書いてるのを見つけたら、「それがあなたのやりたいことね!」って、昇華させていく(笑)。昇華したら『進撃の巨人』、もっと昇華したら『バガボンド』、もっと昇華したら……みたいに(笑)。

そして、戦争の歴史というものがあってね、人間の闘争本能をどう社会で逃がして平和な世の中を作るか考えてきた人たちがいるんですよ。そういう、人間の欲求っていうものをどう社会と適合させるかっていう構造を考えたり、考えさせることが大事なんですよ。そういうことを俺は表現しようとしているんだけど。なかなか受け止めてもらえないですよね。

やりたいことって、ないはずはないんだって。「お前は何をやりたいんだ」って、まじめな人に言われるじゃない。そうするとさ、「僕は『死ね死ね』ってやりたいです!」って言えないじゃない(笑)。でも本当、そうなのよ。だから、聞く方もさ、「何をやりたいのかはっきりしろ」って、聞く方に問題があって。

実は表現って、いちばん恥ずかしい部分なんだよ。その人のオリジナリティーって、いちばん、やってはいけないことがその人のオリジナリティーなのよ。だから、オナニーしてる時のエロい妄想って、言えないじゃない。変態的な。自分はどこに興奮するかっていうのは恥ずかしいわけですよ。でもそこがその人のオリジナリティー。その人のトラウマがすごく関係してるのよ、実は。

自分にはどういうトラウマがあってどういうものが好きかって、だいたいよからぬことなんですよ。よからぬことを昇華することによって、良いことになるんだけど、そこには時間がかかるし、たくさんやっていかないとそこまでいかないんだけど、最初のスタート時点で、先生が、「このお前がやりたいことはマルだけど、このお前がやりたいことはバツ」って決めた時に、それはさ、だいたいがその人の個性はバツなんだから、そこで、もう「僕がやりたいことはこうです」って言えなくなってるんだよ。本当にやりたいことは先生を通らないから。そういう構造があるわけ。

だから、先生が本当にね、指導するとしたら、「お前、どんなエロい妄想してるんだ」とか、「お前、スカトロビデオとか見てるのか」とかね(笑)。それで「そうか。スカトロ、いいよな」って言ったら、いい先生なんだよ。そこから何かが出てくるわけ。「お前、『死ね死ね』書いてるんだな」「じゃあそれ表現しようよ」って。最初はね、そこからだから。

よからぬことが、その人がやりたいこと。それをたくさん書いていくと、だんだんそれが社会に適合する。それは時間がかかるんだけど、それをやらせる前に、「先生や世間が納得するようなやりたいことを見つけろ」っていう状況になってるから、それはいけません。

――「自分のやりたいこと」を見つけようとする時、無意識のうちに「先生や世間からマルと言われること」の範囲の中から探そうとするからおかしなことになる、と。

江川 そうそう。「やりたいこと」っていうのは「素晴らしいこと」って思ってるからね。でも、やりたいことっていうのはね、よろしくない、本当に恥ずかしいことなんですよ。

「みんな自分が思っているほどまともじゃない、変態から始めよう」

江川 だからカウンセラーも良くないよね。カウンセリングして引き出さなきゃいけないんだけど、そこで、やっぱりそれに耐えられないんだよ、「『死ね死ね』やりたいんです」って言われても(笑)。「そうねえ、うんうん」って言えないから。そこなのよ。
そういうようなことを『BE FREE!』でも描いてたんだけどね。『BE FREE!』はむちゃくちゃだからね。こんな変態的なこともありか、って。それは、そういう教育的意図があるんだよ。ちゃんと。

だから、みんな、自分が思っているほどまともじゃなくて変態なんですよ、変態でもいいんですよ、まあ、「変態から始めようよ」と。それが社会を混乱させるんじゃなくて、社会の中の循環の中に、それなりに、苦しい形じゃなく入っていければいちばんいいのであってね。そういうこと、誰も言わないからね。立場があってね。

自分用に動画を作るのと、世間に発表する動画を作るのと、2つくらい作っておいた方がいいと思うよ。本当に好きなものは、恥ずかしいから(笑)。密かに自分の力を蓄えるために、人には見せられない動画を作り、これくらいはOKって薄めて出すっていう、この2つでやっていかないと。

だから、ネットでいま行われていることはみんなクリエイティブなんですよ。それが、もうちょっと昇華していくとありなのかな。いまは未熟ですけどね、俺から見るとね。

歴史も何もかもね、世間が納得しないことでもすごい事実がありますから。本当に。一人ひとりが動画を作る時代。一人ひとりが「死ね死ね」と言える時代。でもそれで死んじゃう人がいるのは良くないから、それを防ぐための動画を作る人が出てくるとまたいいだろうしね。

それはまさにマインドコントロール戦争時代ですよ。人に勝ちたいっていう闘争本能はみんなにある。それを否定するんじゃなくて、昇華して、いい社会にしていくようにしたいですね。

江川達也(えがわ・たつや)
1961年名古屋生まれ。83年、愛知教育大学教育学部数学科を卒業。同年、名古屋市内の中学校で数学講師を経験。84年『BE FREE!』で漫画家デビュー。また、江川漫画研究所を設立、漫画を科学的に分析している。

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