学術

2016年8月4日

【東大ハンドボール部寄稿】リオ五輪「ハンドボール」の見どころ

写真はハンドボール部提供
写真はハンドボール部提供

 近年、中学・高校の部活やクラブチームなど、各地にハンドボールチームが増えてきている印象だが、実際、ハンドボールの試合を見たことがある人はなかなか少ないのではないだろうか。日本ではまだマイナー競技の扱いであるが、欧州ではプロリーグが発達しており、特に東欧、北欧では国技であるとされるなど、メジャーなスポーツである。

 

 よく「サッカーとバスケを足して2で割ったもの」や、「手でやるサッカー」のように評されるが、ここで簡単にハンドボールの説明をしよう。ハンドボールは、1チーム7人(うち一人がゴールキーパー(GK))が20m×40mのコートでプレーする。ゴールから6mの距離に半円のラインが引かれており、ライン内にはGKのみ入ることができる。攻撃チームは6mラインの外からシュートを打ち、相手ゴールに入れば得点となり、試合時間内(前後半各30分)に多く得点したチームが勝ちとなる。「走る・跳ぶ・投げる」という運動における基本3要素をバランスよく発揮することが求められ、さらにボディコンタクトという格闘的な要素も含まれる非常にスリリングなスポーツである。ダイナミックなジャンプシュート。それを、体を張って阻むゴールキーパーのファインプレー。激しく、そして華麗なシュートや迫力のある守備がハンドボールの醍醐味である。当初は11人制だったが、徐々に7人制が主流となり、女子は1962年、男子は1967年の世界選手権から7人制で一本化された。オリンピック競技においては、1936年のベルリン・オリンピック大会に正式種目として採択され、11人制から現在の7人制へと移行し、1972年(昭和47年)のミュンヘン・オリンピックからは7人制で競われることとなり現在に至る。

 

写真はハンドボール部提供
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 さて、リオ五輪では日本時間8月6日に女子が、そして翌7日に男子のハンドボール競技が開幕し、女子は8月20日、男子は同じく21日に決勝戦が行われることになっている。男女それぞれ12チームずつが出場しており、それぞれが2つの予選グループに分かれて総当たりを行い、各グループ上位4チームが決勝トーナメントへ進むことになる。

 

 男子ハンドボールは、予選リーグから非常にシビアな、そして、観客からすると非常にエキサイティングな戦いの連続になる。

 

 以下予選のグループ分けである。

グループA:フランス、デンマーク、クロアチア、カタール、チュニジア、アルゼンチン。

グループB:ポーランド、スロベニア、スウェーデン、ブラジル、ドイツ、エジプト。

 

 中心となるのは何と言ってもフランス。リオで、男子では史上初となる五輪三連覇に挑む。世界最高GKと名高いオメイエール、ルカとニコラのカラバティッチ兄弟、大きなフェイントが持ち味のダニエル・ナルシス、スピードとパワーを兼ね備えた左利き、リュック・アバロなど、世界のトップを走る錚々たるメンバーが今顔をそろえている。2016年のEUROでは怪我人が多発した影響もあり5位に終わり、一時ほどの力は無くなったと言われているが、最も勝ち方を熟知しているチームであることは事実であり、今大会でも優勝候補筆頭に挙げられる。

 

 フランスを追いかける対抗馬としてまず挙げられるのが、ロンドン五輪銀メダルのスウェーデンとなるであろう。堅い守備に定評があり、世界選手権、EUROともに4度ずつ制している。バルセロナ、アトランタ、シドニー、ロンドンと、五輪で4度銀メダルを獲得しており、今大会、悲願である初の金メダルを狙う。それ以外には、2015-2016シーズンのCL(チャンピョンズリーグ※)を制したキェルツェのメンバーが中心メンバーとなっているポーランド。同じく15-16シーズンのCLで得点王に輝いたミケルハンセンや、日本でも人気の高いGKニクラス・ランディンを擁する北欧のデンマーク。また、近年は各世界大会の表彰台から遠ざかってはいたものの、破竹の勢いを持ってEURO2016を制したドイツの存在も侮れない。

 

 そして、ダークホースとなるのがグループAのカタール。アジア選手権を勝ち上がり、アジア代表として出場する。近年、外国籍選手を複数帰化させるなど積極的な投資が功を奏し、急速に力を伸ばしており、2015年世界選手権では準優勝を飾った。GKダニエル・サリッチは元セルビア代表で、サッカーでも有名なFCバルセロナのハンドボールチームで不動の正守護神を務めており、フランスのオメイエールと並ぶほどのGKであると言われるGKダニエル・サリッチがゴールを守る。

 

 女子は男子以上に混戦が予想される。

グループA:ノルウェー、ルーマニア、モンテネグロ、ブラジル、スペイン、アンゴラ。
グループB:オランダ、ロシア、スウェーデン、フランス、アルゼンチン、韓国。

 

 注目はグループAの世界女王ノルウェーと開催国ブラジル。ノルウェーは現在、男子のフランス代表と同じく五輪二連覇中である。2016年までに11回開催されている女子のEUROでは優勝6回、準優勝3回と、ハンドボールの本場ヨーロッパでも圧倒的な強さを見せ続けている。そして、2013年の世界選手権を制しており、当時の優勝メンバーが9人も残る開催国ブラジルがこれに対抗する。開催国の利を活かし、ブラジルという国家、国民の持つ熱気、会場の圧倒的なホームの雰囲気を何とか金メダルへとつなげたい。実は、この両国、8月6日の予選オープニングカードで顔を合わせる。見るものとしては何とも楽しみな一戦となる。オープニングカードと決勝戦で同じカードの対戦となるか、注目である。

 

 女子は、各国の実力が伯仲しており、どの試合も手を抜けない。ダークホースとなるのはグループBの韓国か。アジア女王の韓国はオリンピックでは金メダル2回、銀メダル3回、銅メダル1回と、長年ヨーロッパの強豪と対等に渡り合ってきた。今大会では、U20世界選手権を制した黄金世代も登場し、ノルウェー、ブラジルを追いかける筆頭格となる。それ以外にも、前回大会銀メダルのモンテネグロ、世界選手権準優勝のオランダが注目である。

 

 日本代表は出場していないが、男女ともにアジアを突破し世界最終予選に出場するなど、近年着々と力をつけてきており、次回東京五輪での活躍が期待されている。次回大会の行方、日本代表の戦いを占うためにも、今回のリオ五輪の熱い戦いからは目が離せない。

 

写真はハンドボール部提供
写真はハンドボール部提供

東京大学運動会ハンドボール部
雷 志皓

 

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