学術

2016年8月5日

【東大柔道部寄稿】リオ五輪「柔道」の見どころ

写真は柔道部提供
写真は柔道部提供

 日本のお家芸といわれる柔道。しかしロンドン五輪では史上初の男子金メダル0に終わった。

 

 復権をかけて臨むリオ五輪において井上康生監督率いる選手団の士気は高く、見どころも満載である。そのなかでも、最も注目される男子100kg超級で期待される選手がいる。原沢久喜。去年から今年にかけて国際大会で7回連続優勝し、公式戦での連勝を37まで積み上げた。ここ数年でめきめきと頭角を現してきた伸び盛りの23歳である。

 

 しかし、これまで決して華やかな道を歩んできたわけではなかった。現在では身長191cm、体重122kgの堂々たる体格だが、高校入学時は身長177cm、体重66kgしかなかった。そこから3年間で約50kgも体重が増え、3年生のインターハイでは100kg超級で3位入賞を果たした。日本大学進学後は、常に同世代のライバルの王子谷剛志が壁として立ちはだかり、更に階級全体で見れば多くの強豪選手が原沢の上に顔を揃えていた。激戦区の階級の中で、原沢は誰よりも努力することで自分の実力を着実に伸ばしていった。

 

 日本大学柔道部の金野監督と親交のある東京大学柔道部松原隆一郎部長は、原沢についてこう語る。「原沢の持ち味はそのひたむきな性格だ。彼は部内で一番強いが偉ぶらない。月曜日から誰よりも練習しているから、土曜日になれば疲れも溜まってきて格下のやつに振り回されている。だけど日曜日に休んだらまたスーパーマンに戻るんだ。そこまで追い込めるのはすごい」

 

 愚直な努力を積んだ原沢は社会人1年目の2015年に全日本選手権を制し、その後のめざましい活躍で熾烈な代表選考レースを勝ち抜き、五輪代表に選出された。原沢の試合で注目すべき点の一つが、絶対王者との対決である。100kg超級の頂点に長く君臨するのが、フランス代表のテディ・リネール。ロンドン五輪の金メダリストであり、世界選手権を7連覇中の最強の選手だ。

 

 今年の7月上旬のスペイン合宿で、原沢はリネールと練習をし、何回か自分の形になるチャンスがあったと語っている。世界ランキングは現在1位と2位。これまで試合での対戦はないが、リオ五輪では直接対決が期待される。絶対王者に日本の新鋭原沢がどう挑むのか、注目である。

 

東京大学運動会柔道部
木下智史(四年、主務)

 

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