インタビュー

2014年10月10日

【躍進する地方高校の実態】「堅忍不抜」「自主自律」 札幌南高校

 東大は、関東以外の地方出身が比較的多い。東京大学新聞社が2014年度学部入学者全員を対象に実施したアンケートによると、出身校の所在地に関する質問で「近畿」「中部」「九州・沖縄」「中国・四国」「東北」「北海道」の合計は40%を超えた。一方、各大学発表データによると早稲田大学と慶應義塾大学は約25%で、東大より少ない。東大合格者が多い高校としては首都圏の有名校がよく話題になるため、地方の高校の実態が知られる機会は少ない。しかし地方にも東大合格者が10人を超えるほか、科学オリンピックで顕著な成績を上げるなど成果を出している高校は多い。この連載では、東京から離れた地域で多くの東大合格者を輩出する高校を取材した。 北海道札幌南高校は例年10人以上の東大合格者を出し、2014年度も10人(うち現役5人)合格した、北海道を代表する共学の進学校の一つ。「堅忍不抜」、「自主自律」の校風を重視し、制服がないなど自由な雰囲気だ。生徒会が運営する毎年7月の「南高祭」や秋冬の球技大会といった行事も盛ん。文理のコース分けが3年生からと比較的遅いが、進路について時間をかけて考えることができ、もし進路希望の変更があっても柔軟な対応が可能だという。札幌南高校ではどのような進路指導が行われているのか、進路部長の高桑知哉教諭に聞いた。 1010.JPG ――札幌南高校の特徴は ユニークな発想を持った生徒が多いです。また生徒たちは、勉強はもちろん何にでも挑戦しますね。私もこの学校のOBなのですが、私が高校生だった頃から同じような雰囲気です。「自主自律」の伝統が根付いているということでしょう。 実際に生徒の約8割と、毎年東大合格者が出る高校にしては多くの生徒が部活動に加入していて、「自分はこの部に入りたい」と意気込んで入学してくる生徒も多いです。部活動以外にも、十数人の生徒が「高校生クイズ」に出場して上位まで進むなど、さまざまな活動に対して熱心ですね。塾や予備校に通う生徒もいますが、多くが課外活動とうまく両立させています。3年生になって引退するまで課外活動を頑張ることが受験に役立っている面もあるのでしょう。勉強以外の活動が忙しく、本格的な受験勉強は3年の夏からという生徒も多いですが、受験勉強の終盤、最後の一伸びが大きい印象があります。 ――札幌南高校の14年度入試結果をどう見るか 国公立大学の現役での合格者数が例年にも増して多かったように思います。地元の旧帝大である北海道大学はもちろんですが、東大をはじめ京都大学、大阪大学、一橋大学など、本州の難関大学の合格者も多かったです。生徒たちはそれぞれの興味に従って、場所にこだわらず行きたい大学を志望したと思います。 ――14年度入試では、地方の優秀な受験生の多くが地元の医学部を受験したという報道が多くの雑誌などでみられるが 全国的な傾向としては正しい報道なのかもしれませんが、札幌南高校で医学部受験者が増えたから東大受験者が減ったということはありません。医学部を受験する生徒はまず入学時点で「医学部」という進路を決めていました。本校では入学当初から医学部受験を希望する生徒が100人近くいて、その大半が、実際に医学部を受験します。東大を受験する生徒も入学当初から決めていた生徒が多いようです。医学部と東大の理Ⅰ・Ⅱとで迷っていた生徒も少なかったです。 ――東大が16年度入試から推薦入試を導入するが 推薦できるのが各校男女一人ずつで、本校では最大2人しか推薦できないということもあり、現時点で学校が主導する対策は考えていません。札幌南高校は道の教育委員会による外国人との交流プログラムに参加し英語力を伸ばすなど、主体的に学ぼうとする生徒が多いのでその点は推薦入試の趣旨とも合って有利かもしれません。 ――生徒の東大受験を促す取り組みは 教員が引率してオープンキャンパスに参加などはしていません。東大生を呼んで「卒業生と語る会」を実施したり、東大に合格できそうな生徒に個人的に声を掛けたりするくらいはしますが、進路指導でも「自主自律」を重視して、基本的には生徒個人に任せています。生徒たちは、開放している自習用の部屋の利用もかなり多いですし、数学・科学オリンピックなどの外部の大会にも参加しています。生徒が自分で興味のあるものを見つけ、目標を設定して努力することが多いです。 ただ最近、進路の選択肢の紹介は積極的に行っていて、1年生には学部学科研究を実施したり、オープンキャンパスに参加した2年生を中心に感想文を書かせたりするなど、進路について真剣に考えさせるようにしています。また、東大など難関大受験者を集めて教科ごとに勉強のアドバイスをする取り組みも始めました。本校の札幌という立地は確かに東京からは遠いですが、飛行機一本で行ける便利な土地という見方もできます。本校の生徒は地理的ハンディを感じさせず、目標に向けて努力していますね。 (取材・文 小原寛士)

 

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