COLUMN 2019年11月11日

【世界というキャンパスで 分部麻里(文・4年)東南アジア編⑤】後輩指導で言葉の壁に直面

【前回までのあらすじ】

 休暇中にアンコールワットや首都プノンペンを旅し、クメール王朝の華やかな歴史とポル・ポト政権下の悲しい歴史を肌で実感した。

 プノンペンでポル・ポト時代の悲惨な虐殺の跡を見てから、シェムリアップでの日常生活でもその歴史の影を敏感に感じ取るようになった。

 

 ポル・ポトは完全な農村社会を理想としており、医者などの知識人や工場で働く技術者、さらに、農業労働に携わることのできない年配者や病人は虐殺された。今から40年ほど前の虐殺で、人口の3分の1が殺されたともいわれる。その影響なのか、街で年配の方を見かける機会は少なく、店の従業員も若者だらけだ。

 

 また、カンボジアの人々が食事の時間をかなり大切にしていることにも気が付いた。正午になると仕事がない限りは必ずみんなで食事を取り、ご飯を食べていない人にはみんなが声を掛ける。インターンシップ先の上司は「内戦の際に正午にしか食事を食べられなかったことが影響しているのではないか」と話してくれた。

 

 一方で、そういった歴史で受けた傷から人々が立ち直るよう支援する動きも活発だ。まだまだ貧困層が多いカンボジアは、若者が教育を受けられない、高等教育を受けても就職先がないなどの問題を抱えている。そこで、海外の人々がソーシャルビジネスとして現地に雇用を生む動きが盛んだ。具体的には、カフェやレストランで若者を雇用し、ホスピタリティ教育や金銭管理など生活に必要な知識を教え、最終的にホテルなどへの就職支援を行う活動や、フェアトレードの工房を作り、技術を教える活動などだ。

 

滞在中よく立ち寄ったカフェ。従業員の就労支援やローカルのコミュニティー支援を行っている。

 

 街中にそういった支援が根付いているカンボジアの様子を改めて実感し、私が携わっている事業の重要性を再確認したのだった。

 

 インターンシップ先で一通り業務ができるようになってきた頃、後輩の指導を任されるようになった。カンボジア人で、私と同じようにお客様のご案内を担当する役割を担う。日本語学校を卒業したての、同い年の2人だった。日本語はとても流ちょうだが、私が働くスパではハーブなどの専門用語が多く、また肩こりなどの身体に関わる日本語独特の表現もあるため、指導はなかなかに困難を極めた。

 

 2人が接客できるようになるまでの指導計画を立て、他のカンボジア人スタッフを巻き込みながら指導を行うことが、私の任務の一つになった。

 

ガーデンツアーで使うハーブ。接客を練習する際に使用した。

 

 まず後輩が担当することになったのは「ガーデンツアー」。スパの庭に生えているハーブの案内をした後に、ハーブを使った入浴剤やせっけん作りを体験するプランだ。彼女たちが案内できるようになるまで、空き時間を見つけては、庭で繰り返し練習する。これまでカンボジア人と同僚として働いてきた私が、指導側に回る初めての体験。これを機に、カンボジア人をマネジメントする難しさを感じるようになった。

 

【連載記事 世界というキャンパスで 分部麻里(文・4年)東南アジア編】

【世界というキャンパスで】分部麻里(文・4年)東南アジア編① 期待を胸にカンボジアへ

【世界というキャンパスで】分部麻里(文・4年)東南アジア編② 異国の「洗礼」でびしょびしょに

【世界というキャンパスで】分部麻里(文・4年)③ 異国の同僚の気遣いに感動

【世界というキャンパスで】分部麻里(文・4年)東南アジア編④ 現地の歴史の光と影を巡る旅


この記事は2019年10月29日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

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世界というキャンパスで:分部麻里(文・4年)⑤
研究室散歩:@赤ちゃん学 開一夫教授(総合文化研究科)
100行で名著:『第一阿房列車』内田百閒
キャンパスガイ:板垣大稀さん(工・3年)

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