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2021年4月14日

どうなる海外留学? コロナ禍での留学の実態とは

 多くの学生にとって、昨年度は新型コロナウイルス感染症流行の影響で実際に現地に赴く海外留学の機会のない1年だったが、学生はどのような形で実際の留学に代わる学びを得たのか。オンラインで多くの短期語学研修に参加した明畠加苗さん(文Ⅲ・2年=取材当時)にオンライン留学の実態を取材。またグローバルキャンパス推進本部国際化教育支援室長の矢口祐人教授(東大大学院情報学環)に昨年度の留学の実態と本年度の展望を聞いた。

(取材・池見嘉納)

 

「度胸ついた」TLP研修

 

南京大学サマースクールの修了証(写真は明畠さん提供)

 

 明畠さんは当初、2年次の秋から9ヶ月の期間、米国の大学に交換留学し、ジェンダー学を学ぶ予定だった。しかし4月には交換留学を含む留学プログラムの中止が決定。明畠さんは「留学に懸けていた想いは強かったので、中止になった時はかなり落ち込みました」と当時を振り返る。一方で、明畠さんは初修外国語の運用能力を強化するTLP(トライリンガル・プログラム)の履修生として中国語を集中的に学んでおり、中国語TLPの一環として行われた南京大学への語学研修にオンラインで参加した。

 

 夏休みの3週間にわたる南京サマースクールでは、日本時間9時から13時まで、毎日4こまの授業が週に5日開講された。昼休みを挟んで15時からは週4日、2時間程度南京大学の学生との交流や中国語を用いた授業、南京の高校生との交流があった。南京大生との交流は主に南京大生が中国の文化を紹介し、東大生がそれに対して質問するという形式で進行。カリキュラムの終盤では、逆に東大生の方が日本の文化を南京大生に紹介した。また、南京の高校生との交流の際には日本について高校生にプレゼンテーションをしたという。

 

 

 南京大学へのオンライン留学を通じて、明畠さんは「少人数授業でどんどん当てられるので、話さなければならないことが多かったです。もともと間違いを恐れがちだったのですが、気後れせず話せる度胸がつきました」と話す。また、南京大学への留学が契機となり、冬には北京大学、春には浙江大学のオンラインプログラムに参加。北京大学のプログラムでは、現地の学生とグループで日本と中国に関わるトピックについて議論・発表したという。浙江大学のプログラムでは、日本国内外の学生とともに授業を受けた。「ベトナムなど他国の学生はスピーキング能力が高く、私たちは同じクラスでいいのかと思いました」と、他国の学生からも刺激を受けた。

 

 オンラインでの留学について、明畠さんは接続不良などの問題に加えて「現地の文化を肌で体験することができず、ビデオや写真を通じてはそれらを実感することが難しかった」と指摘する。一方、移動を伴わないため体力を取られず、中国語の勉強に集中できるといった便利さもあったという。海外での生の体験や現地の人との交流を重視するか、勉学を重視するかでオンライン留学への適性は変わってくるかもしれない。

 

 新型コロナウイルスの流行が終息したら以前計画していた長期の海外留学に行きたいと語る明畠さん。オンライン留学を振り返り「留学の意義や目的も重要ですが、迷ったら『とりあえず留学してみよう』といった姿勢で参加してみても得られるものは多いです」という。

明畠加苗さん(文Ⅲ・2年=取材当時)

 

 

国際的な議論の途上 オンライン留学は拡充へ

 

 

 いわゆる長期留学の中で、代表的な選択肢となるのが交換留学だろう。矢口教授によると、昨年度はオンラインによるプログラムの実施に当たって解決すべき課題が山積していたため、交換留学についてはオンラインでは実施されなかった。加えて、交換留学は協定校同士が相互に学生を送り合うことが前提となるので、オンラインでの交換留学の機会を作るのは難しかったという。一方、教養学部が実施している国際研修やTLP、GLP-GEfILなどの短期留学プログラムはオンラインで実施されたが、参加する際の手軽さもあってかコロナ前と遜色ない参加者数となった。

 

 グローバルキャンパス推進本部でも2月、3月にオーストラリア国立大学、ベルリン自由大学、ハワイ大学、ソウル大学校との共同で学生交流を伴うオンラインプログラムが行われた。こうしたオンラインでのプログラムは、参加者から「物理的な交流をオンラインで代替するのには限度がある」という声が寄せられた一方、「気軽に国際交流ができる」、「系統的なカリキュラムで学べる」といった点を評価する声も多かったという。

 

 本年度の留学の展望はどうなのか。留学などの国際交流プログラムは段階的に再開されると発表されているが、先行きは不透明。東大のみならず、留学先となる海外の大学も含めた国際的な議論の最中だからだ。オーストラリア、ニュージーランドを含めたオセアニアの協定校は、今年度秋学期は留学生の受け入れ、派遣をしないという方針を決めた。こうした決定をする大学は増えてきているという。一方でオンラインプログラムについては、より拡充を目指す。学期中は時差や単位付与の点などで議論の途上だが、休暇中に海外大学のプログラムを受けられる機会は多くなるだろう。

 

 オンラインで海外大学とつながる環境が整いつつある今、海外へ渡航して留学する意義はどこにあるのだろうか。「学びや知識といったものは場所と切り離せないもの」と矢口教授は指摘する。オンラインでの学びは現地での学びと相反するものでも完全に代替するものでもなく、むしろ相乗効果的にお互いの価値を高めていくものだという。「例えばソウル大学校とのオンラインプログラムを受講した学生が、韓国に興味を持って実際に渡航する。そこで現地の学生と仲良くなって、帰国後もオンラインで交流を続ける。そういった連続性をオンラインでのプログラムに期待していますし、連続性を生めるプログラムを作っていきたいと思います」

 

 「国境の外に行ける日は必ず来ます。それまでに今ここでできることはたくさんあります。留学までに学ぶべきことを学び、いざ渡航できる日には100%のエネルギーで行けるように希望を持ち続けましょう」という矢口教授。海外に行けない今は、国境や境界について考えるのに絶好の機会だと指摘する。「国境のみならず貧富の差や人種間の断絶といったコロナ禍で浮き彫りになった境界に目を向けることでよりグローバルな人間になれるでしょう」

 

矢口祐人(やぐち・ゆうじん)教授(東大大学院情報学環) 99年米ウィリアム・アンド・メアリー大学大学院でPh.D.取得。18年よりグローバルキャンパス推進本部国際化教育支援室長。

 

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