ニュース

2021年1月8日

東大教員に聞く、新型コロナと2021年 経済&情報編

 

 2020年に世界を震撼させた新型コロナウイルス感染症は、医療分野だけでなく教育や情報テクノロジーなどさまざまな分野で問題を浮き彫りにした。21年にはどのような発展が見込まれ、我々はどのように対応していくべきなのだろうか。第二弾の今回は、経済と情報分野の研究者に聞いた。

(取材:弓矢基貴・桑原秀彰)

 

先行き不透明な経済と就活生の取るべき行動

植田健一准教授(東京大学大学院経済学研究科) 

 

 今後の日本経済・世界経済は、ワクチンと治療薬の開発・普及の速度などによって大きく左右され、危機が長引く可能性があります。新型コロナウイルス感染症が終息しても、交通の減少や電子商取引の増加など、デジタル中心の経済構造が社会に定着するでしょう。

 

 そこで、経済政策の方向性も考え直す必要があります。これまでは、企業や個人は借り入れや預金の切り崩し、政府は低金利での貸し出しや、補助金などの、いわゆる一時的なお金を融通する流動性対策を行ってきました。それをソルベンシー(支払い能力)対策にシフトする必要が出てきています。需要が消えた産業に補助金を出し続けるわけにはいかず、倒産制度を積極的に活用してそのような企業を過重債務から解放するべきです。

 

 多くの倒産が起こり得ますが、倒産は債務からの救済措置です。特に、企業や家計が通常運営に戻る「再生」の手続きがそうです。もし企業が存続せず「清算」されたとしても、全体の失業率を低く抑えられれば、社会的損失は最小限で済みます。そこで、失業者の転職に際して公的な援助が求められます。

 

 以前から日本の財政状況は極めて悪く、コロナ禍の影響でさらに悪化する見込みです。本来、いざという時のために、財政に余裕を持たせておくべきところ、アベノミクスの景気拡大時に財政を黒字化させなかったツケが回ってきています。

 

 日本の財政の構造は、税収の観点からは「小さな政府」です。しかし支出は中程度の福祉国家。景気拡大期でも恒常的な赤字です。国民はどちらかの国家体制を選ぶ必要があります。私的な感覚としては、国民は増税に対する怒りは大きい一方、年金などの支出削減に対してはそれほど抵抗が大きくなく、小さな政府を指向しているようです。

 

 コロナ禍に関わらず、時代とともに成長産業は目まぐるしく変化し、経済は変わり続けます。現在勢いのある産業が将来も成長し続ける保証はどこにもありません。

 

 私からの就活におけるアドバイスは「好きなことをする」ことです。経済学は労働を不効用(苦痛)と見なしますが、好きなことを仕事にする場合は当てはまりません。さまざまな業界で成果を上げる人は概して喜々として仕事をしています。多くの選択肢が与えられている東大生だからこそ、それを生かすべきでしょう。

 

オンラインと対面の使い分けがカギ

田浦健次朗教授(東京大学情報基盤センター長・大学院情報理工学系研究科教授)

 

 本年度の授業のオンライン化によって、さまざまな課題や利点が浮き彫りになりました。アンケート調査によって明らかになったのは、学生にとっては課題の量が多く過度な負担になっている点、キャンパスでの友人との交流がないことで苦しんでいる学生がいる点です。利点としては、授業資料の電子化で予習・復習が容易になった点、通学時間の制約がなくなった点が挙げられます。

 

 授業のオンライン化は教員側にもさまざまな課題を残しました。特に資料の準備がこれまで以上に大変になったと感じる教員が多いようです。他大学の授業も受け持つある非常勤講師は、大学ごとに異なるオンライン授業の方針への対応に忙殺されたと話していました。教員の働き方を改善するために、期末試験などにおける定型的なチェック問題の採点自動化などのICTの活用を進めていきます。

 

 学内のオンラインサービスの向上も進めていくつもりです。Aセメスターで対面授業を再開させるにあたり、ITC-LMSの機能改善や駒場ⅠキャンパスにおけるUTokyo WiFiの拡充を行いました。オンライン授業に使用するZoom、Google、Officeなど複数のサービスでアカウントが乱立している現状を改善するために、UTokyoアカウントによる認証への統一も検討しています。

 

 他にも、ICTの活用で学内と学外の差異をなくしていくことも重要です。例えば、学内のUTokyo WiFiに接続しなければ見ることのできない資料に関して、セキュリティーを向上させることで学外からの閲覧を可能にしたり、クラウドによる学習管理システムの導入で学外での学習状況を教員がどこでも把握できたりするような環境整備も視野に入れています。

 

 オンライン化で最も重要なのは、今後新型コロナが終息したときに対面授業を再開させて交流の機会を増やしつつ、オンライン授業の利点をいかに残していくかだと思います。例えば、大人数講義はオンラインとし、ゼミなどの演習や実験などは対面で行うなどのすみ分けが考えられます。また、対面の割合を増やして授業を行っていく際には、2、4限はオンラインで3限は対面、といったことが起こらないように、時間割を最適化する必要があります。このような課題に関して、教員と学生が意見や解決策を出し合い、より良い学びを構想することが求められると思います。

 

 

植田 健一(うえだ けんいち)准教授(東京大学大学院経済学研究科) 00年米シカゴ大学でPh.D(経済学)取得。大蔵省(当時)国際金融局係長、国際通貨基金シニアエコノミストなどを経て14年より現職。
田浦 健次朗(たうら けんじろう)教授(東京大学情報基盤センター長・大学院情報理工学系研究科教授) 96年東大大学院理学系研究科博士課程中退。博士(理学)。東大大学院情報理工学系研究科准教授などを経て15年より同教授。18年よりセンター長。

【記事修正】2021年1月14日9時43分 各見出しの下部に教員名を追記しました。

TOPに戻る