COLUMN 2014年3月28日

「ガクチカ」という言葉を使う就活生の9割は失敗する 霜田明寛の就活十番勝負4

1921039_720012971355169_50617856_o.jpgモデル:鈴木千尋(ミス専修コンテスト2013グランプリ)

 

 「ガクチカが固まらなくて……」と就活生に言われる度に、僕の頭の中は「えっ!? えっ!?」となる。 「ガクチカ」というのは、「学生時代力を入れたこと」の略。これは、面接やエントリーシートの中でかなりの確率で聞かれる、ようは就活の鉄板質問です。 もちろん、「ガクチカ」という略称を知ってはいるものの、僕が就活をしていた7年くらい前には存在しなかった言葉なので、困惑してしまいます。

 で、今までたくさんの就活生に会ってきましたが、この「ガクチカ」っていう言葉を使っていた多くの人がうまくいってないんですよね。 なぜ彼らの就活はうまくいかなかったのか。その理由は、「自分の世界の当たり前が、社会にとっての当たり前だと思ってしまっている」ところにあるのだと思います。

 同じ日本社会の中でも、その世界にしか通じないような言葉というのがあります。例えば

  • キョクタン(漢字で書くと局担。広告代理店内の用語でテレビ局担当のこと)
  • オリキ(ジャニーズオタク用語でおっかけのこと)
  • 太客(ホスト用語で金払いのいいお客さんのこと)
  • 秀吉力(師匠に愚直に仕える力のこと。僕の師匠・水野敬也と僕ら弟子の間で使います)

 業界の違いだけではありません。例えば、マックっていうのかマクドっていうのか、ユニバって略すかUSJって略すかなど、生活する場所や接する人々によっても、使う言葉というのは変わってきます。

  ですから、大学生が社会人と話をする就職活動という場においては、自分の使っている言葉の100%が通じるわけではないのです。もう少し詳しく言うと、「自分が使った言葉が、自分が思っているのと違う受け取られ方をする可能性がある」という意識をもったほうがいいのです。

  例えば、大学卒業から5年が経ってしまった僕は、「サークル」という言葉を聞いても、軽い響きに聞こえるようになってきました。大学生だった頃は「サークルとは世界のことだ」くらいの勢いで、サークルに一生懸命だったにも関わらず、です。こうした傾向は、僕よりも年齢を重ねた面接官はより強くなることでしょう。 そうなると、自分の使う言葉が自分の思っているほどの威力を発揮しない可能性が出てきます。こちらは一生懸命「自分が心血を注ぎ込んだサークルの話」をしたつもりでも、面接官には「所詮サークルでの話」程度に受け取られてしまうのです。

 かといって、相手の業界用語を覚えておけ、というわけではありません。そんなことをすると、自分の世界に勝手に踏み入れられた気がして、逆効果。例えば、50代のおっさんからいきなり「つらたん(´ω`)」とかメールされたら、「それはお前の使う言葉じゃねえよ!」って嫌悪感を抱きますよね。そもそもの住んでいる世界が違うのです。 そこで、皆さんには、面接において「前提を共有していない2人が喋るのだ」という意識をもってほしいのです。

 そもそも、面接というのは誤解がどんどんと生まれやすい場所なのです。そこで、誤解をなるべく最小限にするためには、使う言葉を、いろいろと解釈できてしまう抽象的なものから、具体的なものに変えていかなければなりません。 例えば、何か企画を提案するにしても、「男性タレントさんを起用して」と言うだけでは、芸人をイメージするかもしれませんし、男性アイドルをイメージするかもしれません。そういった解釈が分かれる余地がないように、言葉で埋めていかなくてはならないのです。

 具体的に言い換える例をいくつか挙げましょう。

  • 「コンプレックスがあります」 → 「顔にコンプレックスがあります」
  • 「テレビ局の制作志望です」 → 「バラエティ番組が作りたくて、特に20代のうちは深夜帯のキレッキレな番組に関わりたいです。例えば『バチバチエレキテる』みたいな!」
  • 「中3のときに映画をみたのがきっかけで映画業界志望です」 → 「中3のときに、R15指定の『スワロウテイル』を、隠れて見に行ったときに衝撃を受けて、自分は絶対に映画に関わって生きていくと決めました」

 このように、具体的な言葉を使っていくと、イメージのずれが生じずにすみます。そして、さらなる効用として、コミュニケーションがスムーズになっていきます。 具体的に言わないと、結論にたどりつくまでにこのような不毛なやりとりが続きます。

(面:面接官 就:就職活動生)

面「君、テレビ局に行きたいっていうけど何志望?」

就「制作です」

面「ジャンルは?」

就「バラエティです」

面「どんな番組作りたいの?」

就「キレッキレなやつですね」

面「時間帯のイメージは? ゴールデン?」

就「いや、深夜帯です」

面「例えば既にある深夜番組でいうと何に近いの?」

就「バチバチエレキテるですかね」

面「へえー(てか、先にバチバチエレキテるみたいなの作りたいって言ってくれよ、質問するの疲れたわー)」

 限られた面接時間で、こんなコミュニケーションをしてしまうのは時間の無駄でしかないですよね。それならば、自分から先に具体的に言ってしまったほうが、話は早い。それに、面接官が興味をもって、さらに質問が飛んでくるかもしれません。

就「『バチバチエレキテる』みたいな深夜帯のキレッキレな番組に関わりたいです!」

「え、なんでバチバチエレキテるが好きなの? あの番組、結局終わっちゃったけど、なんでだと思う?」

 不毛な長いやりとりでは、前提を共有しあうための質問が繰り返されますが、具体的な言葉を使えば、その人の感覚や考えを探る質問になります。後者のような質問に答えていくと、ちゃんと自分の能力をアピールすることができます。逆に言えば、前提を共有しあうためのやりとりは、ポンポンとコミュニケーションができているように思えますが、本質的なことは何一つ伝えることができていないのです

 今回は、曖昧な言葉の危険性について述べてきました。そこで、最後に、信じてはいけない、企業の人の曖昧な言葉を紹介しましょう。 それは、「君、ウチっぽいねえ!」です。 この言葉、アナウンサー志望の女のコがテレビ局の男にOB訪問したときに言われた、という報告をよく耳にします。

 これを聞くと、やはりテンションが上がってしまうようです。 しかし、よくよく考えてみてください。例えばTBSには、同期で、田中みな実と江藤愛という真逆のタイプのアナウンサーがいます。ぶりっ子キャラに徹し、賛否両論別れる東京の中高一貫校出身の田中みな実。一方で、大分出身でアナウンサーになるために一浪し、今はラジオでの話の引き出し方が高評価を得ている江藤愛。この2人を「TBSっぽい」とひとことで言ってしまうことの曖昧さ加減がわかるでしょうか。

  「君、ウチっぽいね!」は信じないほうがいい。基本的に、その企業で働いている人が、就活生に対して「言いたいだけ」「ドヤ顔したいだけ」のことが多いです。 学生だからとか社会に出ているから、とかいったことは関係なく、曖昧な言葉を吐く人は多くいます。特に自分の志望する企業の人の言葉だと、神の声のように聞こえてしまう人もいると思います。

 でも人の人生に対する曖昧な言葉ほど、罪深いことはありません。その言葉に持ち上げて、期待をさせられた後に、突き落とされたときに抱いた傷を、その言葉を吐いた人は治療してくれません。 もちろん、就活中には自分の人生を予言してくれるような言葉に出逢えることもあります。どの言葉が自分にとっての真実の言葉なのか、発するときも、受け取るときも、より敏感に言葉に接するべき時期なのです。

POINT

  • 面接は”異世界に住む人同士”の会話
  • “前提の共有”に時間を使わないために、具体的な言葉を使っていく

 

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霜田明寛 (しもだ・あきひろ) 1985年生まれ、東京都出身。国立東京学芸大学附属高等学校を経て、早稲田大学商学部を卒業。2008年の大学在学中に、第四回出版甲子園準グランプリを受賞し、執筆活動を始める。雑誌記者・ライターとして活動する傍ら、『夢をかなえるゾウ』著者の水野敬也氏に師事し、『テレビ局就活の極意 パンチラ見せれば通るわよっ!』『マスコミ就活革命(レボリューション)~普通の僕らの負けない就活術~』の著書を出版。 その後、就活生相談や全国の大学からの講演依頼が殺到。アナウンサーをはじめ、テレビ局、出版社、広告代理店など、マスコミを中心に多くの就活生を送り出す。2013 年からはPR会社に勤務する傍ら、早稲田大学で就活講座を担当。主宰するセミナー『就活エッジ』も好評を博している。

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