就活

2023年7月13日

【官庁訪問2023】東大出身者が語る 国家公務員の仕事 ②環境省技術系・事務系

 

 毎年多くの東大生が受験する国家公務員採用総合職試験。国家公務員を志す学生にはもちろん、まだ進路に悩んでいる人にとっても国家公務員自らが語る職務の実情やその素直な感想は参考になるだろう。東大出身者に、現在の省庁を選んだ経緯や担当する業務内容、就活生へのメッセージを聞いた。(構成・小原優輝、取材・松崎文香)

 

環境省(技術系) 登山道の管理からルール作りまで

 

 高校時代に山岳部に所属していた染谷さん。文Iに入学したが、全学ゼミで演習林に行ったり、幅広い分野の授業を受講したりする中で、山や植物の面白さを再発見した。農学部森林環境資源科学専修に進学したが、学生時代は明確な目標はなく、修士課程を修了した後は、愛知県の嘱託職員として森林学習施設で働いた。野生動物に関する問題に携わり、愛知県の行政に触れたことで、地方自治体レベルでは対応できない、県境をまたぐ問題の多さに気が付いた。大局的な視点で対応する必要性を実感した時、自分が国家公務員として働くイメージができた。

 

 長く自然に触れてきた経験や、自然への関心から、林野庁と環境省を志望。特に、地球温暖化から海洋プラスチック問題までを扱う、環境省の業務の幅広さに引かれたという。「さまざまな学問を幅広く学ぶ前期教養課程が楽しかったこともあり、専門分野一つに絞るよりいろいろな話題に触れたいと思いました」

 

 現在は自然保護官として、白山国立公園で勤務している。公園内での木竹の伐採や建物の建造等の申請を審査する許認可業務や、登山道やビジターセンターの管理・運営、外来植物や鹿対策が主な業務だ。

 

 1年目の本省勤務では、日本中で起きている問題が眼前に集約され、国としてどう対応するかを考えるのが仕事だった。「世の中を良くする業務に取り組めるのは魅力的でしたが、自分たちの行動で今後の国登山道の管理からルール作りまでの方向性が決まるという責任を強く感じていました」。一方、現地事務所で働く今は、目の前にいる利用者のための業務に取り組んでいる。「時には『トイレが詰まっているから助けて』というレベルの依頼もあります。現場に足を運び一緒に知恵を出し合って、目の前にある問題を解決していくのがやりがいです」。一方、利用者の要請に応えきれず、歯痒(はがゆ)い思いをすることもあるという。「本省勤務も、現地事務所も、それぞれのやりがいと大変さがあります」

 

 今後も自然系技官として専門知識を生かし、国立公園の素晴らしい自然を世に広めていきつつ、法改正のような全体のルール作りにも関わりたいという。

 

 省庁を志望する人には「国家公務員の仕事には、利害関係者との調整が必ず付いてきます。相手に理解してもらうには、謙虚さが求められます」とアドバイス。

 

 若手の内から権限を持ち、自分の裁量で業務に取り組めるのが環境省の技官の魅力だという。「自分で考えたことを発信できる人、イエスマンではない人が向いていると思います。環境省は自然環境に強い想いを持った人間を受け入れてくれますよ」

 

染谷祐太郎(そめや・ゆうたろう)さん 環境省中部地方環境事務所白山自然保護官事務所 18年農学生命科学研究科修了
染谷祐太郎(そめや・ゆうたろう)さん 環境省中部地方環境事務所白山自然保護官事務所 18年農学生命科学研究科修了

 

環境省(事務系) 経済学部での学びを生かす

 

 国家公務員を意識したのは、就職活動を始めた3年次。もともと社会問題に興味があり、日々ニュースを見る中で環境問題に対する社会の関心の高まりを感じていた。東大で行われた就活生向けのセミナーで、同じ経済学部卒の環境省の職員の話を聞いたのを機に、志望が高まった。「カーボンプライシングなど、ビジネスの仕組みを踏まえた環境政策を知り、経済学部での学びを生かせると感じました」

 

 3年生の6月ごろから公務員試験対策として、大学の授業の復習や、過去問に取り組んだ。筆記問題の添削や模試の受験など、予備校のサービスも利用しながら勉強を進め、4年次の春に受験して合格した。民間企業への就職活動も並行して行い、コンサルタントや金融業界も考えたが、大学で得た知見を生かしながら環境問題に正面から取り組むには環境省が一番だと思い、入省を決めた。

 

 現在は、温室効果ガス削減・吸収に関する二国間クレジット制度(JCM)など、炭素クレジット制度の業務を担当している。炭素クレジット関係の国際ルールである、パリ協定6条についての国際交渉に関わることもあるという。「どうすれば、皆が納得できるより良い仕組みにできるか考えることに面白さを感じています」

 

 印象に残っている仕事は、1年目の部署でプラスチックの削減に関する法律の国会審議をサポートしたことだ。「自分が関わった法律が制定され、世の中を変えていく経済学部での学びを生かす過程を目の当たりにしました」。実際、日常生活で目にするプラスチック製品の改革が進んだという。宿泊施設で、歯ブラシを必要な人だけが取っていけるように、部屋ではなくフロントに設置され始めたのを見て、世の中の変化を実感した。

 

 環境省の仕事の魅力は、制度の設計・検討に若手のうちから関われることだという。入省1年目から課長・局長クラスの職員と話す機会があるなど、フラットな雰囲気も良いところだ。一方で、国家公務員の仕事には、省庁間での連携や業界団体・国会議員との調整の難しさを感じることもあるという。国家レベルの制度は関係者が多く、何をするにも各所との調整が求められるが「世の中への影響の大きな事業を進めるには必要なことだと思います」。

 

 今後は、G7・G20の交渉など、国際的な制度設計に関する仕事とともに、地方に行って関係者と直接対話するといった、現場の仕事にも携わっていきたいと話す。各所と調整する際、熱意の有無で説明の伝わり方が違うという。「世の中を良くしたい、地球を良くしたいという思いが強い人は国家公務員に向いていると思います」

 

有馬達矢(ありま・たつや)さん 環境省地球環境局国際脱炭素インフラ参事官室 21年経済学部卒
有馬達矢(ありま・たつや)さん 環境省地球環境局国際脱炭素インフラ参事官室 21年経済学部卒

 

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