INTERVIEW / FEATURE 2014年9月12日

「学生のうちはバカやるべき」2014年度五月祭 東大テニミュ 白石蔵ノ介役

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2014年度五月祭 東大テニミュ 白石蔵ノ介

2014年五月祭でのパフォーマンス「東大テニミュ」(注:東大の学園祭で行われる「テニスの王子様ミュージカルを再現してみた」の通称。参考(ニコニコ動画))において四天宝寺中学校テニス部部長 白石蔵ノ介役を演じ、そのあまりの美しさからTwitter上で話題になり、各種ネットメディアにも掲載された(参考)現役東大生K。今回は匿名を条件に、私達の取材を受け入れてくれた。ネットやテニミュファンを大いに賑わせたイケメン東大生の素顔に迫る。

■はじまりは2年前の五月祭

Kは現在、正真正銘の東大法学部生。愛知県出身で、東京大学文科一類への入学に際し上京した。2年前の五月祭、クラスの模擬店を出店中、図書館前で繰り広げられるまるきゅうProject(注:五月祭や駒場祭での公演が有名な東大内コスプレパフォーマンス集団。参考)のパフォーマンスを初めて目にした。数十人ものコスプレ集団が東方アレンジ楽曲(注:東方Projectのゲーム音楽のアレンジ)に合わせてダイナミックに繰り広げるダンスや、ネタや風刺が盛り込まれたオリジナリティ溢れる寸劇を見て、彼は面白そうな団体があるなーという印象を抱いた。そして、半年後の駒場祭公演を見たときに、その印象は確信へと変わった。

「学生のうちはバカやるべき」

その考えのもと、それまで所属していたテニスサークルやビジコンサークルに対し飽きを覚えはじめていたこともあって、翌年の新歓シーズン、Kはパフォーマンス団体まるきゅうProjectに飛び込んだ。

■東大テニミュに入り、本場のテニミュにハマる

実はKは小学生のときに6年間テニススクールに通っていた経験がある。テニスの王子様ブームが起こったときに生徒が急激に増えたということも、実際その目で見てきた。

しかし、彼が東大テニミュに参加するようになったのは偶発的なことだった。原作の漫画は愛読していたが、実はテニミュについては、その存在を知っている程度に過ぎなかった。まるきゅうProject内のメーリングリストで東大テニミュのキャストが不足して現在募集中であることを知り、それに対し「あ、いいっすよ」という軽いノリで返したのが参加のきっかけだ。

東大テニミュへの参加を表明してから、勉強のために本場のテニミュ公演のDVDを借りて視聴した。そのとき彼は初めてテニミュを見ることとなったが、「DVDを見たら、すごく面白くてハマりました。やはりプロだから完成度が高いし、原作ではちょっとしか出ないようなキャラクターにも曲があったりするんですよ」それ以降、Kはテニミュの大ファンとなり、今では男友達を引き連れて本場の公演にも足を運ぶようになった。

最初に演じたキャストは、青学の河村。その次は氷帝ファンだったということもあり、氷帝の日吉を演じた。彼の雄姿がネットに出回るようになったのは、このときからである。まるきゅうProjectでは公演後に観客のTwitter上での反応を検索することが習慣となっていたが、ちょい役のつもりで出ていた日吉の写真が出回っていたときには、驚きを隠せなかった。

そして2014年の五月祭、Kは四天宝寺中学テニス部部長、白石蔵之介を演じることとなる。これは本人の希望によるものだ。原作でもテニミュでもファンの多いこの重大な役を演じきるべく、原作の白石同様にラケットを左手に持ち替えて、何度も練習を重ねた。

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白石の中の人 イケメン東大生K

■アツいテニミュの舞台裏

今や五月祭・駒場祭の定番パフォーマンスとなりつつある東大テニミュは、公演の3ヶ月近く前から準備が始まっている。脚本や演出は、テニミュが大好きなキャスト全員で考えて作成していく。東大テニミュにおいては、本場のテニミュを完全に再現できるわけではない。たとえば、本場のテニミュは2時間半近くあるが、学園祭で演じるときには時間の都合上45分程度に収めなければならないため、どのシーンを入れていくかを前もって議論することとなる。スモークを制汗スプレーで、ワイヤーアクションを肩車で代替するのも、舞台装置が使えない東大テニミュにおける、彼らなりの工夫によるものだ。

脚本が決まったらそれに合わせて音源を編集し、それをもとに練習に取り組んでいく。練習のためにメンバーは平日朝や土日に集まり、その動きは何度もビデオに撮って確認する。Kも当然、これらの準備を心から楽しみながら行っている。ただ、ウィッグやコスプレを作りこむことについては少々ダルいようだ。彼にとってコスプレは、あくまでバカをするための手段だからだ。

キャストの持つテニミュへの愛が溢れる演技と、それをあの天下の東大生が演じているというギャップもあり、東大テニミュの知名度はTwitterやニコニコ動画を通じて高まっていった。本場テニミュのファンも多く見に来るようになったこともあって、最初は少なかった観客の数もうなぎのぼりに増えていった。それでも、増えていく観客について、Kは「意識はしちゃうけど、やりたいことをやるのが最優先」と語る。

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観客の注目を浴びる白石

■準備に熱意、本番はきつい

「かえりたい」

五月祭2日目の本番直前。初日の客が「東大テニミュがおもしろい」「白石イケメン」とネット上などで発信しており、駆けつけた観客は800人に膨れ上がっていた。そのとき、Kの願いはただ「おうちにかえりたい」だった。

「準備が一番、楽しいんです」

身内でワイワイ練習するのが好きなだけ。現在の人気は副産物のようなもので、ただやりたいことをやっているうちについてきてしまっただけのものだと語る。今のKは、本場のテニミュの公演に足を運び、DVDを買うほどのファン。東大テニミュから本家テニミュを布教できたらいいとさえ思っている。イケメンと騒がれ、ステージに客が大挙したことは、「うれしいけど、身内でやりたい」というのが本音であるようだ。

本番後の写真撮影タイムではKに長蛇の列ができ、そこで撮られた写真がまたネットに拡散された。彼の写真付きツイートがNAVERまとめになると数万アクセスを記録し、大手ニュースサイトがそれを取り上げ、ついにはYahoo!トピックスに掲載された。「イケメンすぎる東大テニミュの白石」。彼の存在は多くの人の知るところとなった。

一躍、時の人に。しかし、本人の反応は意外と薄かった。Twitterのフォロワーは1000人増えたが、日常生活にはなんの影響もない。コスプレのイベントに誘われる機会は増えたが、もともとコスプレが好きなわけでもないから断っている。「別にモテるようになったわけでもない」という。身の危険を感じたこともない。本名はどこからも洩れないようにしている(このインタビューも匿名を条件に行われた)。

唯一、親バレしたのはつらかった。地元にまで彼の勇姿は伝わっていた。母親が、いわゆるママ友から伝え聞き、初めて東大テニミュを知るところに。「隠していたから、恥ずかしかった。とてもつらい、と思いました」

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とてもつらい

■素顔は好青年

両親から、こういう類のことで怒られるようなことはないという。勉強しろと尻を叩かれたこともない。習い事やスポーツに精を出した少年時代だった。テニスに始まり、水泳、書道、ピアノを続けていた。

私生活は至って地味。法曹をめざし勉強中とのことだが、他に時間を割くことと言えば「ツイッター。ツイ廃(注:ツイッター廃人の意)です」。5月から筋トレを本格的に始めたといい、確かに二の腕の盛り上がりがそれを証明していた。イケメンと呼ばれることについても、リアルでは「飲み会なんかで、煽られて言われるくらい」とクールに言う。実際、イケメンなのに。ウィッグを外した素顔は、ちょっとインターネットが好きなくらいの、ただの好青年だ。

最後に、ファンに伝えたいことはないか聞くと、まっすぐな目で答えた。

「愛すべきバカどもを、これからもよろしくお願いします」

■編集後記

1時間半に及ぶ取材を終えた後、食事でもとサイゼリアへ流れた。Kはすかさず「Twitterしますね」とiPadを出し、「サイゼなう」とつぶやいた。

しかしその数週間後、Kは突然Twitterアカウントを削除してしまった。何事かと思い本人に聞いてみると、「ツイ廃をやめたかったから、酒に酔った勢いでアカウントを削除してしまいました……」とのこと。それと同時に彼は、アカウントを消すと一日が本当に長く感じられるが、同時に寂しいとも語ってくれた。彼がTwitterに戻ってくる日は、そう遠くはなさそうだ。(注:記事掲載時には復活していました)

文:内山 菜生子、保住 純

協力:うえしゅん(@ueshun_jp)、ふく おかゆ か(@yamina36)、りつ(@ritsu1)

※この記事は、東京大学大学院情報学環教育部の授業の一環で執筆されました。

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