COLUMN 2020年9月8日

東大に響き続ける声をつなぐ 100周年を迎えた東大唯一の男声合唱団・コールアカデミー

入学式にてコーロ・レティツィアと合唱を受け持っている(写真はコールアカデミー提供)

 

 音楽部合唱団コールアカデミーは、1920年創立の東大唯一の男声合唱団だ。その100周年の歩みを新歓責任者の錦織奨生さん(法・3年)に取材するとともに、学生指揮者の渡辺穂さん(文・3年)に現在のコールアカデミーの魅力について寄稿してもらった。

(取材・米原有里)※この記事はコールアカデミーとのタイアップ記事です。

 

番組出演を渋られ今の名前に

 

  創立から戦前期まで

 

 創立は1920年の音楽部の誕生にさかのぼる。しかし創立当初の音楽部は器楽が中心で、男声合唱団としてまとまったのは22年のことだった。以降東京帝国大学音楽部合唱団として毎年の定期演奏会を活動の主軸にすえ、西洋の古典合唱曲を中心に演奏した。

 

  太平洋戦争中

 

 太平洋戦争が始まると曲目は枢軸国側の曲しか認められなくなるなど戦争の影が活動に伸びてきた。当時の定期演奏会で取り上げられた曲目は、ドイツの曲や日本軍歌が中心である。また、出陣学徒の壮行会として演奏が行われたこともあった。戦況が最悪の様相を呈するまで練習を続けたが、44年に入り本土空襲が本格化すると残った学生も軍需工場などに動員され練習は完全に停止された。

 

  戦後の復興

 

 45年秋には学徒復員によって、キャンパスに学生が戻ってきた。音楽部も46年の五月祭での演奏を機に活動を再開。46年にはNHKの音楽番組「愛唱歌の時間」にも出演した。この際、別枠で大学合唱の番組が存在したことから東大という名を冠して出演することを渋られ「コールアカデミー」と名乗ったところ、思いの外好評であったため、以後名前が定着したという。「コール」は合唱団を意味するドイツ語、「アカデミー」はたまたま新聞にアカデミー賞候補の記事が載っていたことから取った名前だった。

 

 終戦直後の時期はコンクールにも積極的に参加した。47年、48年の関東合唱コンクールでは優勝するなど好成績を残したが、54年に常任指揮者が変わってからはコンクールには出場しないことを方針にしている。

 

  安定期

 

 戦後の興隆を経て、コールアカデミーはさまざまな場所に活動の幅を広げた。コンクールなどで得た他大学との交流を基に、57年から演奏旅行を開始、全国8カ所を回って演奏した年もあった。70年には日独学生交流の一環として渡独し、ボンやケルンで演奏を行った。以降も何度か海外で演奏を行っている。2013年には米カーネギーホールで東日本大震災復興支援のための公演を行った。

 

 一方で、合唱サークルが乱立し始めたことや、音楽において流行が移り変わり娯楽の在り方が多様化したことで、部員の獲得が難しくなった時期も多くあった。これまで何度か存続の危機にひんしている。しかし、その都度卒業生や他の合唱団との協力を経て100年間活動をつなげてきたという。

 

  現在の活動とこれからの展望

 

 現在は演奏旅行などは行っていないものの、五月祭での演奏、初夏に行われる京都大学グリークラブとのジョイントコンサート、そして12月の定期演奏会を活動の主軸としている。入学式や卒業式での合唱を受け持つことも音楽部としての役目の一つだ。09年には姉妹合唱団として女声合唱団コーロ・レティツィアが創立され、合同で演奏を行っている。今年12月には100周年記念定期演奏会の開催を予定する。

 

 「先輩が危機的状況にあっても歌い続け、積み重ねてきた歴史を僕たちがつないでいけるようにしたいです」。100年前から続く力強い歌声は、今日も東大に響く。

 

※新型コロナウイルス感染拡大防止のため100周年記念定期演奏会は延期される可能性があります

 

錦織 奨生(にしこり しょうき)さん(法・3年)

 

「コロナ後」も価値ある合唱を

 

 コールアカデミーは楽しみつつ個々の技術を高め、幅広いジャンルに渡って質の高い演奏をすることを目指して日々練習を重ねています。コールアカデミーには合唱を長く経験してきた人もいれば、音楽をすること自体が初めての人もおり、色々な背景を持った人が集まってこの文化的活動を創り上げています。

 

2018年夏合宿にて、常任指揮者の先生との1枚。毎回、思い思いの変顔で1枚写真を撮る(写真はコールアカデミー提供)

 

 これまで合唱や音楽の経験がある方へ。コールアカデミーならではの新しい音楽に触れられます。最初はもしかすると馴染みのない音楽に対して面白くないと思うかもしれませんが、やってみるうちに色々な発見があるでしょう。その発見は今までやってきた音楽にも深みを与えるものです。

 

 合唱未経験の方へ。全く心配はいりません。合唱は入り口の広い活動です。先輩が優しく教えてくれて、発声に関しては、プロのヴォイストレーナーにきちんと指導してもらうことができるので必ず上手く歌えるようになり、そして我々が一番大切だと考えている「歌うことの楽しさ」に気づいてもらえるはずです。

 

 またコミットの仕方は人それぞれであり、クオリティの高い演奏のために日々研鑽を積みたいのならそれもよし、人付き合いの一部としてマイペースに参加して楽しく歌うのも良いでしょう。こうした「懐の深さ」「多様性」という合唱の美質ともいうべきものをコールアカデミーでは大切にしています。そのような中でこそ歌う力を結集させることによる可能性が広がり、技術面においても互いに刺激を与え合うことができると考えています。

 

 そして、感染症により合唱は大変厳しい状況にありますが、決して我々はこの事態を傍観することなく「コロナ後」に価値として残る意味のあるものが生み出されると信じて真摯に合唱と向き合い、可能な形態で活動を続けています。

 

 さらに、今年度は100周年を迎えるということで、皆さんと新しい音楽をこの世に誕生させるという滅多にできないことも経験できます。コールアカデミーの歴史の新たな1ページを皆さんと作っていけるのを楽しみにしています。

(渡辺穂さん=寄稿)


この記事は2020年9月1日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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企画:東大に響き続ける声をつなぐ 100周年を迎えた東大唯一の男声合唱団・コールアカデミー
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キャンパスのひと 濱祐輝さん(育・3年)

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