キャンパスライフ

2022年7月12日

【サークルペロリ】読書を楽しみながらお茶会はいかが?➡東京大学新月お茶の会

 

 東大新聞の記者が東大のサークルの活動を体験、取材し、その魅力を伝える企画「サークルペロリ」。今回は東大生を中心とする文芸サークルである東京大学新月お茶の会(以下新月お茶の会)を訪れた。(取材・佐藤健)

 

 扱うジャンルはミステリー・SF・ライトノベルなど。月1回ほど喫茶店で行う読書会の他、年4回『月猫通り』という会報の作成や、文芸イベントへの出店を行っている。『月猫通り』では毎回テーマを決めて行われる特集企画やリレー小説、創作小説などが掲載される。文芸イベントでは訪れた小説家や編集者と交流することもあるという。

 

部誌『月猫通り』の新刊(写真は新月お茶の会提供)

 

 駒場Iキャンパスの学生会館307号室にある部室の壁際には大きな本棚が一面に置かれ、SFやミステリーなどの小説の他、過去の『月猫通り』が並んでいる。部室は会員が自由に訪れ、映画を見たり、作業をしたり、小説について話したりと気ままに使用しているという。小説の献本や著者のサインなども置かれており穏やかな雰囲気の部室に「これこそ小説で出てくる文芸サークルだ!」と感じ、興奮した。

 

 卒業後、出版社に就職した会員や、参加した文芸イベントなどを通して得た出版社とのつながりも深い。「このライトノベルがすごい!」や「このミステリーがすごい!」などの小説ランキングを出版社が作成する際、選考のアンケートに協力している。その他、小説編集者のアシスタントとしてアルバイトをする会員もいる。

 

 記者は神保町のローカルコミュニティ「ふらっと神保町」と新月お茶の会によって5月4日に開催された読書会にも参加した。読書会の課題本は『中国女性SF作家アンソロジー 走る赤』(中央公論新社)。新月お茶の会の会員と本の編者の一人である橋本輝幸さんを中心に話が進む。

 

武甜静・橋本輝幸編、大恵和実編訳『中国女性SF作家アンソロジー 走る赤』、中央公論新社、税込み2420円

 取り上げられたのは収録編の一つである『世界に彩りを』。眼球に網膜調整レンズを取り付けることが一般的になった未来が舞台の作品。網膜調整レンズの着用について対立する母娘を通して個人の視覚的な世界認識を描く。読書会では、物語の設定を現代に当てはめ、メガネやコンタクトを通して見る景色がわずかに歪んでいることに触れただけでなく、SNSによって個人の認識が凝り固まり、異なるSNSを使用している人との間で認識の分断が発生しているとの意見が出る。その他にも現代の中国 SF 事情など幅広いテーマが話題になった。

 

 印象に残ったのは現在、SFの設定としてコンピューターや近未来的な技術がよく用いられる一方、テレパスのような超能力が扱われなくなったという話。物語の中心を担う母娘それぞれが持つ異なる特徴を、母娘の年齢の違いに対応させて、SFに登場する設定の時代的な変化をうまく表現しているのではないかという考察に感心した。そこからSFで使われる設定の興亡や似た作風の作家にまで話が広がり、知識の多さに圧倒された。いつもならただ読むだけで終わってしまうが、読書会に参加したことで強く記憶に残る一編となった。

 

 読書会の終了後は、橋本輝幸さんや新月お茶の会代表(当時)の岡本隼一(文I・2年)さんの提案で、読書会の参加者全員で喫茶店を訪問。いつからSFや小説に興味を持ったかなど読書談議に花を咲かせた。

 

 部室でも読書会でも穏やかな雰囲気が感じられる新月お茶の会だが、小説への思いは本物だ。会報『月猫通り』を手に取った小説家からも、小説の批評記事が分量、内容共に充実していると評価された。「会の魅力は本やエンターテインメントに対する情熱です」。会員の中には出版社による新人賞への応募を積極的に行う人も多く、過去には市川憂人といった作家も輩出している。

 

 小説の執筆だけでなく内外との交流に対しても意欲的だ。岡本さんは「コロナ禍で失われた他大学や東大の他の文芸サークルとの付き合いを復活させ、駒場祭などでの講演会の開催も行っていきたいです」と抱負を述べた。

 

 入会したことで普段読まないジャンルの小説に出会ったという会員も多い。部員の黒田清友さん(文II・2年)は活動を通じ、より多くの本を読むことで自分の引き出しを深め、創作に生かしたいと語る。同好の士が欲しい人、小説を書いてみたい人、本が好きなら誰でも楽しめるサークルだ。興味のある方は一度活動に参加してみては。

 

新月お茶の会部室にて
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