ニュース

2021年3月21日

課題への「義務感」で生きる日々 前期教養課程の課題過多問題を考える

 新型コロナウイルス流行に伴い、2020年度の東大では全学的にオンライン授業が導入された。オンライン授業では、これまでの対面授業と比べて課題の量が増えたと指摘する声が聞かれた。特にSセメスターでは前期教養課程の新入生を中心に課題の多さを嘆く声が相次いだ。新入生と太田邦史総合文化研究科・教養学部長に話を聞き、新入生らが課された課題の実態と、大学側の対応に迫った。

(取材・中野快紀)

 

 前期教養課程では本年度、Sセメスターの全ての授業がオンライン化。Aセメスターも一部の必修授業などを除いてオンライン授業が維持された。東京大学新聞社が昨年7月に実施したアンケートでは、回答した学部2年生以上の東大生のうち、50.0%が課題量増加に「当てはまる」としていた(36.3%が「当てはまらない」、13.7%が「分からない」)。

 

 TLP(トライリンガル・プログラム)を受講するAさん(文Ⅰ・1年)は、Sセメスターを「クオリティーを追求し過ぎたとは思いますが、翌日までの課題を終わらせねばという義務感で日々生きていました」と話す。Aセメスターには課題量が減ったというが「Sセメスターは、授業やアルバイト、食事、睡眠、風呂以外の時間は基本課題をやっていました」

 

 AさんがSセメスターに取り組んだ課題の量を、文Ⅰ・2年でTLPを受講していたBさんが前年度のSセメスターに取り組んでいたものと比較する()。初修外国語の課題は、Bさんの場合隔週の小テストに備えた勉強と作文課題のみ。通学中や授業中に終わらせられる程度の量だった。一方Aさんの場合、週5回の授業に向けて毎週10時間程度の時間を課題に要した。

 

 

 全ての新入生が必修の「情報」についてAさんは「課題地獄の元凶で、悪夢だった」と語る。Bさんは1年次、授業内で完結する課題しか課されなかったというが、Aさんはプログラミング課題のために毎週15時間程度を費やした。

 

学部は負担軽減要請

 

太田邦史(おおた・くにひろ)総合文化研究科・教養学部長

 

 学生から課題過多を指摘する声がある中、太田邦史総合文化研究科・教養学部長も「Sセメスターの間は課題が多いという声がかなり上がった」と明かす。太田学部長が課題過多の原因と考えるのは①進学選択のために厳格な成績評価が求められており、対面試験を控えよという全学の要望の中で課題を含む平常点に頼ったこと②経験がないまま手探りでオンライン授業を始めたこと──の二つだ。

 

 課題過多の指摘は学生のみならず保護者からも寄せられた。太田学部長は、教授会や部局長の会合などの場でも「1回当たり15分程度、長くても20〜30分で終わる課題にしてほしい」と複数回にわたり強く求めてきたという。

 

 Aセメスターでの課題の負担軽減に関しては、Sセメスター同様の呼び掛けが奏功した可能性を挙げた。加えて「Aセメスターには対面試験を行いたいと、全学の議論の場でも主張し、実施が早期に決まった。そのため教員も安心できたのではないか」と分析する。

 

 対面試験については「試験の後に学生の話を聞くと、公平性の観点から評判が良く、もっと実施してほしいという意見があった。教員と学生、両方にとって対面試験の方が良いのではないかと思う」と話す。一方、東京大学新聞社が1月に実施した取材では対面試験について「試験だけ対面で実施することの利点が分からない」「必要最低限に抑えるべき」といった学生の声も上がった。

 

 教養学部は既に2021年度Sセメスターの前期教養課程の授業方針を発表しており、本年度のAセメスターと同様にオンライン授業中心の開講形態を維持することになっている。今後のオンライン授業の見通しについて太田学部長は、反転授業(学生が事前に提供される教材で予習をしてから講義に臨む形式の授業のこと)が容易なことなどオンライン授業のメリットを生かしつつ、新たな評価の仕方を取り込むなど改善できる部分があるとした。

タグから記事を検索


東京大学新聞社からのお知らせ


recruit

   
           
                             
TOPに戻る