昨年の秋季リーグ戦では2勝を挙げ、勝ち点にこそ届かなかったものの、素晴らしい戦いをした硬式野球部。指揮を執った大久保裕監督はどのように昨年の戦いを捉えているのだろうか。昨年の振り返りから新チームのことまで、大久保監督に話を聞いた。(取材、撮影・吉野祥生)
──秋季リーグ戦はどのようなシーズンでしたか
ここ数年、春は勝てなくても秋にはなんとか勝てる年が続いています。昨年も同じように秋にはなんとか勝てて良かったなと思います。目標の勝ち点獲得には届きませんでしたが、それなりに練習の成果が上がったと思います。確かに勝てたことは手応えですし、残された課題はやはり勝ち点ですね。同じカードで二つ勝つのはなかなか難しいというのを、改めて認識しました。
──昨年の秋は1回戦で2勝しました。これは一昨年とは違うようにも思います
土曜日の1回戦はいわゆるエース対決となっていて、そこで勝てたというのは少し進歩したかなと思います。しかし、もう一つ勝ち切れないところは、ちょっと残念です。あまりチームの力として劇的に変われているわけではないんですね。1回戦で勝てても2回戦、3回戦では、相手チームが「下位チームの東大には負けられない」と立て直してきます。昨年は相手の思う通りに立ち直りを許してしまっていて、まだ我々に力がないという厳しい現実に直面しました。
──野手の起用に関してはいかがでしたか
打順1番の候補は酒井捷(経・4年)だったのですが、春も秋も調子が上がらず、思い切って別の選手に変えたりしてみました。中山太陽(経・4年)は打撃が安定しているので、とにかく中山は上位に置いて外さずに起用しました。しかし、期待通り打っているのは中山くらいで、中山の前後をどうするかが難しく、打順は固定できず頻繁に変えました。リーグ戦終盤は、伊藤滉一郎(工・3年)を1番に起用したのですが、そこそこ打ってくれたのでチームに勢いがついたかなと思います。

──攻撃面では昨年の東大は犠打が少ないのが特徴です
無死一塁から送って、1死二塁を作っても、なかなか点が取れないというのが春からの打撃陣の課題でした。そこで犠打よりはリスクはありますが、とにかく盗塁で無死二塁を作って、1死三塁にしたい場面ではそこからバントをするという作戦に変えました。
盗塁は行けたら行っていいよというサイン(グリーンライト)が多いですね。このボールでこう走れというサインもありますが、盗めるときには若いカウントで試みて、アウトになってもしょうがないというぐらいのつもりでいます。
──投手起用では松本慎之介(理Ⅱ・2年)投手が、慶大戦から1回戦の先発に回りました
春のエースは渡辺向輝(農・4年)で、エース対決の試合で渡辺もそこそこいいピッチングをしてくれました。ただ、どうしても相手のエースも手強いので、点が取れず勝ち切れない試合が多かったです。秋も渡辺は早大戦、明大戦とそれなりのピッチングだったのですが、やはり相手エースが強く勝利は難しかったです。
一方の松本ですが、春はリリーフでそこまで打たれていない状況でした。夏場も調子が上がってきたので、そこで思い切って松本が行けるところまで行って、あとは渡辺で逃げ切るという戦略が出てきました。慶大1回戦は6回か7回まで松本が投げて2、3点リードで、最後の2イニングくらいを渡辺で逃げ切るプランだったのですが、実際その通りに勝てました。
渡辺の連投も想定していました。1回戦はリリーフで2イニングか3イニング投げてもらい、2回戦は先発でまた試合を作る形を期待して起用することで連勝を狙ったのですが、そこまでは難しかったです。やはり渡辺も土曜日に投げると、その疲れが日曜日に残って、勝ち切れませんでした。この結果は、いま一つチームとして力が足りないなと感じた点です。

──結果として勝ち点は獲得できませんでしたが、試合を作れる投手が渡辺と松本の2人出てきたのは大きかったのではないでしょうか
渡辺も3年生の頃から自信が出てきたんです。4年生になってもそう大きくは崩れず、実力を力通り発揮してくれました。渡辺に続く投手が、なかなか出てこないなと思っていたのですが、秋に松本が2年生ながら予想以上にいいピッチングしてくれたのは、まさに「良いほうの誤算」でした。投手陣の起用も渡辺、松本の2枚看板と継投という形がある程度できて、戦い方としては、東大のチームとしての力が出せたのではないかと思います。
──投手のリズムが安定していたことが躍進の一因かもしれません
渡辺や松本はストライクが計算でき、四球を連発することもないので、守るリズムができたと思います。ちゃんと追い込めば、打者の打ち損じも多くなるので、打ち損じをちゃんとアウトにできれば試合になります。秋季で2勝できたのは、このあたりの野球が少しできるようになったからだと思います。
──守備力も向上したことを感じさせるシーズンでした
もともと対戦相手とは力が開いているので、やっぱり打ち取った打球はちゃんとアウトにしないと、勝負の土俵に乗られないですからね。24年の春には四球と失策で自滅し接戦に持ち込むこともできませんでした。それでは神宮で話にならないので、内野の守備を鍛えました。
いま二遊間で試合に出ている秋元諒(文Ⅰ・2年)と樋口航介(理Ⅰ・2年)はチームの守備が悪かった24年の春に入学してきました。彼らがまだ試合に出ていない頃、年上のメンバーがうまく守れていなかったので、秋元と樋口が戦力に加わってきたという経緯もあります。この2人が順調に上手くなってきたのは大きいと思います。普通のゴロならちゃんと捌けていますし、ダブルプレーも取れるようになりました。

──2年生の活躍が目立ったシーズンでもありました
秋元は、守備では取って投げるのが特に問題なくできるので、出ています。樋口も同じで、ショートを守らせても大体取れるし、スローイングも安定して落ち着いているのが良いです。東大の内野手としてはもう即戦力のレベルですね。この2人は二遊間の守備がメインではありますが、時々ヒットも打ちますし、走塁もそつないです。彼らの加入が東大の戦力アップに大きく貢献していると思います。荒井慶斗(文Ⅲ・2年)は打撃が中心で、神宮でホームランも打ちましたし、主力になっても良い選手です。
松本は、高校時代から経験や実力がありました。激戦の甲子園で出て勝利投手になるような選手が東大に入ってくることはほとんどありません(笑)。普通の東大の投手よりも、もともと力を持っている選手が入ってきてくれたので、それをうまく生かしながら一生懸命練習して力をつけてきてくれました。1年生のときは投球が単調で連打される場面もありましたが、2年生になり打者を打ち取る投球術を覚えたことで、うまく打ち取れるようになってきました。球のキレも、受験生時代から体が戻ってきたことで良くなってきたと思います。センスも能力もある選手ですが、それを上手く生かせるように大きく成長しました。大したものだと思います。しっかり体を作ってくれているので、任せて大丈夫かなと考えています。
──開幕戦で正捕手だった杉浦海大(法・4年)選手が死球により負傷し、それ以降明石健(農・3年)選手がマスクを被りました
杉浦は出だしで本塁打を打ち、いいかなと思った矢先の怪我だったので痛かったですね。そこで代わって出た明石も経験を積んだ状態ではありました。夏場のオープン戦では、杉浦が春のリーグ戦に全試合出場して肩に負担がかかっていたので、代わりにずっと明石を捕手で起用していました。そこで経験を積めたのは大きかったのではないかと思います。明石は強肩が持ち味です。明大戦で相手の1番打者を出塁させた時に、相手は初球から二盗を試みてきましたが、明石は盗塁を刺しました。それから相手もあまり盗塁を企図しなくなり、あの1つの盗塁刺が大きかったですね。本当によくやってくれたと思います。
明石は、高校時代は捕手ではなかったので経験が少なく、これまでは慌てて送球してしまうシーンも見られました。しかし、夏の間にじっくりと経験を積んで上手くなったことで、捕手としての動きが身に付いてきましたね。打撃でも慶大1回戦の走者一掃の適時二塁打など、試合の流れを一気に引き寄せる仕事をしてくれました。まさに「怪我の功名」ではないですが、良い方向に現れてくれたと思います。
記事は後編へ続きます!
後編では、チームの現在の立ち位置や来季の展望などについて聞きました。
以下のリンクから引き続きご覧ください。
https://www.todaishimbun.org/directerohkubo2_20260308/











