東大病院の教員が収賄の疑いで逮捕された事件について、11月24日、総長が声明を発表した。東大として事実関係を調査し、判明次第、総長を含む上層部の責任の所在を明らかにするとした。医学部と全学のガバナンス体制改革のためにそれぞれ委員会を設置することも発表した。
11月19日、松原全宏(たけひろ)准教授が警視庁に収賄の疑いで逮捕された。一部報道によると、松原准教授は医療機器メーカー・日本エム・ディ・エムから現金約80万円を奨学寄付金として寄付させ、そのうち計約70万円を賄賂として受け取った疑いが持たれている。見返りに同社が製造する大だい腿たい骨のインプラントを東大病院で使用していたという。同社の元社員も贈賄の疑いで逮捕。松原准教授は受け取った金の一部を使い、東大生協でタブレットやパソコンを購入し、親族に贈っていたとも報じられている他、寄付の前後には同社社員から飲食の接待を受けていたとも報じられている。
メッセージで総長は、逮捕は極めて重大だとして「心からお詫(わ)び申し上げます」と記した。その上で捜査に協力する他、東大としても外部の弁護士による調査で事実関係を明らかにし、結果を踏まえ「厳正に対処」するとした。総長を含む執行部や部局長に対しても「しかるべき対応」をとるとしている。東大が「危機的な状況にある」との認識で改革に全力で取り組むとした。
ガバナンス改革に向け2委員会設置 最速で年内に結論
失った信頼を回復するためとして、複数のガバナンス改革策についても言及。臨床カンナビノイド学社会連携講座をめぐる問題を受けて作られた、外部からの資金提供を受ける研究に関する改革策を実行する他、「医学系研究科・医学部・医学部附属病院改革委員会」と「リスクガバナンス強化検討委員会」を設置する。
医学系研究科・医学部・医学部附属病院改革委員会(名簿は表1)は医学部などの組織体制や運営の問題点を明らかにし、根本的な解決を目指すなどとする。東大病院(東大医学部附属病院)を医学部附属から大学附属とする可能性など歴史的な組織体制の見直しも視野に入れる。

リスクガバナンス強化検討委員会(名簿は表2)は東大全体のコンプライアンス体制の抜本的強化のため、より信頼性・実効性の高い仕組みの導入を目指す。事案の発生時に、迅速で的確な意思決定ができる危機管理体制の構築も目標とする。

医学部で相次ぐ不祥事 総長「社会の信頼をさらに大きく損なう」
医学部をめぐっては、臨床カンナビノイド学社会連携講座について問題が発覚したばかりだった。教授らに高額な接待を要求されたなどとして、連携先の日本化粧品協会が損害賠償を求めて東大を相手に訴訟している。東大は企業との連携について検証する「社会連携講座等検証・改革委員会」を設置。藤井総長も「社会の信頼に関わる重大な事案」だとの声明を10月に出していた。産学連携に関する改革を進める中で今回の事件が発覚したことを受け、総長は東大や国立大学法人への社会の信頼をさらに大きく損なうとの認識を述べた。
11月26日の国会審議(厚生労働委員会)では、東大医学部で相次ぐ不祥事に関する質問も行われた。文部科学省の担当者は、国際卓越研究大学(卓越大)の認定には「自律と責任あるガバナンス体制」も求められると答弁した。東大が申請中の卓越大の発表は12月11日時点でまだ行われていないがまもなくだと見られる。今回の不祥事の卓越大認定への影響が懸念される。











