インタビュー

2020年8月21日

スペースバルーンで炎を宇宙に  Earth Light Project始動

 関東地方の学生を中心に始まったEarth Light Project(以下、ELP)。共生の願いを込めた炎をスペースバルーンで成層圏に打ち上げ、炎越しの地球を撮影するという史上初の試みだ。コロナ禍により人と人の分断が加速している現状に対し「それでも、世界が繋がることを諦めない」「宇宙は人と人をつなぐ」といったモットーが掲げられている。7月21日にはオンラインで記者会見を実施し、同24日からはクラウドファンディングを開始した(9月16日まで)。総勢130人を超えるメンバーに加え、サポーターとして競泳元日本代表の小坂悠真さん、過去に本紙でも取材した宇宙飛行士の山崎直子さんをはじめ多くの著名人が名を連ねている。

 

 本記事では、ELP技術班の東京大学チームでリーダーを務めている豊島拓(てしま・たく)さん(東京大学工学系研究科修士課程1年)に取材した。

(取材・村松光太朗)

 

ELP全体会議の様子(2020年2月9日)(写真は豊島さん提供)

 

  どのような経緯でELPに加わりましたか

 

 学部は工学部航空宇宙工学科でもともと宇宙分野に関心があり、昨年12月頃には宇宙食のフォーラムに参加していました。その折に都築則彦さん(ELP代表)と出会い、航空系の学生であると伝えたところ、その場でこのプロジェクトに誘われたのです。まだ企画が発足して間もない段階だったのですが、丁度その日の夜に会合があり、勢いで参加してみることに。話を聞くうちに面白そうだと感じ、ARLISSという小型人工衛星開発の大会でチームを組んでいた学科の同級生を誘ってプロジェクトに関わることになりました。

 

  何が面白そうだと感じましたか

 

 学科での日常は理論を扱うことが多く、たまにしか飛行機を実践的に作るプロジェクトはありませんでした。そのようなものづくりの技術自体は面白いと思いつつも、それが社会とどうつながるのか、社会にどんな影響を与えるのかといった側面の実感がなくて悶々としていました。そんな中このプロジェクトの話を聞いた時に「若者の共生」というしっかりと根付いた理念に感銘を受け、ものづくりの技術を社会に生かすという視点で技術を主体に学ぶ側の人間が関われる格好の機会だと感じたのです。

 

  具体的にELPでどのようなことをやってきましたか

 

 組織が流動的で特に固定された役割はなく、私自身会計や資金調達などにも関わりました。ですが、やはりメインは技術班での機体開発です。当初技術班の母体は千葉大学の板倉研究室だったので、東京大学チームとしての手伝いは機体設計に対するフィードバックなどに留まっていました。しかし開発ペースを上げる必要が生じたので私たちも開発に加わり、作業分担の結果センサーなどの計測・制御周りのハード・ソフトを担当することになりました。

 

 そこからは秋葉原でセンサーの電子部品キットを仕入れて回路製作とプログラミングの日々です。そして実験向けに簡易な回路とシステムができたので、千葉大学チームの機体にセットし、今年の3月末に実際の宇宙環境を模した低空・低圧環境下での耐久実験を遂行しました。このような実験は学科でもやったことがないので、初めての体験でドキドキしましたね。結果としてセンサーの耐久性に問題は無さそうでした。

 

  現状の進捗は

 

 まだまだ開発途上です。センサー側の課題はある程度対処できそうですが、機体そのものに課題が残っています。例えば火を灯すと火を囲むガラス管が煤だらけになったり、途中で火が消えたり。不具合の原因として考えられるものの洗い出しが最近終わったので、今後は実験を重ねてそのうちどれが本当の原因かを特定して対処していきます。なのでコロナによって身動きが取りづらい今の状況が少しでも緩和することに期待しています。

 

  実際に飛ぶ機体の開発に携わる立場としてプレッシャーは感じますか

 

 感じないわけではありません。技術班に限らず多くの人の支えがあって初めて遂行できるプロジェクトなので、その根幹の部分で失敗するのは大変でしょう。しかし、その見返りとして得られる喜びもあります。他のプロジェクトで機体を作った時でも、それが少しの時間飛んだだけで、もの凄く感動しました。自らの手で作ったものに一つの意味が吹き込まれた、という達成感があるのです。今度のプロジェクトでは、自分だけでなく多くの人の思いを乗せて飛んでいくのですから、感動も何倍も大きいものになるでしょう。最善を尽くしたら後は祈るのみです。

 

  最後に一言お願いします

 

 正直、最初にプロジェクトの話を聞いた時は「本当にそんなことができるのか?」という戸惑いもありました。しかしクラウドファンディングが始まった今となっては、現実味が増してきたと感じます。技術班に機体開発の専門家や経験者が増えてきたこともあって、ますます勢いは増しています。

 

 思い返せば、あの都築さんからの誘いに乗っていなかったら、今私はこの場にいないでしょう。そういう目で見れば、できるわけがないと諦めることなく最初の一歩を踏み出すことができれば意外に形になるかもしれない、と言えるのではないでしょうか。

 

豊島拓(てしま・たく)さん(東京大学工学系研究科修士課程1年)
(写真は豊島さん提供)

 

 本企画に向けたクラウドファンディングでは、8月17日0時00分現在で支援者数306人、支援総額は229万円に昇っている。クラウドファンディング終了時(9月16日23時59分)までに目標支援金額750万円を達成できなければ企画自体が実施されない「All-or-Nothing」方式となっており、企画の行く末は残り1ヵ月でどのくらい支援が集まるかに掛かっている。支援金額に応じた多種多様なリターンが用意されているので、興味がある方や詳細を知りたい方は下記サイトをご覧いただきたい。

 

公式サイト:https://earth-light-project.com/

クラウドファンディングサイト:https://camp-fire.jp/projects/view/300851

 

2020年8月22日13:20【記事訂正】公式サイトのURLを修正しました。

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