キャンパスライフ

2022年1月24日

日米学生会議 88年目の思い、未来へつなぐ

 

 夏に日本と米国から学生が集まり、両国をめぐる今日的な話題について約3週間もの間、徹底的に議論を行う。それが日米学生会議(Japan-America Student Conference、JASC)だ。開催を見据え、運営する学生はどのような思いでいるのか。第74回日米学生会議実行委員会の石井颯太さん(早稲田大学・2年、第74回日米学生会議実行委員副実行委員長・選考担当)と辻美波さん(文Ⅰ・2年、第74回日米学生会議実行委員広報担当)に取材した。(取材・鈴木茉衣)

 

議論するのは夏だけじゃない! 準備を重ねる七つの「分科会」

 

 JASCは満州事変後の1934年の設立以来、何度か中断を経ながらも今日まで続いてきた。2022年で74回目、88年目となる。オンライン開催だった20年、ハイブリッド開催だった21年を挟み、3年ぶりの対面開催が予定されている。場所はニューヨーク、ワシントン、サンフランシスコの3都市だ。

 

 会議の軸となるのが、七つの「分科会」。日米別で、それぞれ4人の参加者と1人の実行委員が8月の本会議まで週に1回程度自主的なミーティングを行い、本会議での議論に向けた準備を重ねる。毎年設定される定番のテーマもあれば、その年の実行委員会の学生の個性が出たものまで分科会の内容はさまざま。例えば辻さんが担当する分科会のテーマ「教育とメディア」は「子どもから大人までの各世代の学びを広く『教育』と捉え、あらゆるメディアが現代の教育の及ぼす影響、これからのメディアを通した教育のあり方を探る」というもの。具体的には学校以外の場での学びも含めた生涯学習、教育格差、児童虐待、TV番組を通じた歴史教育など幅広い内容を想定しているという。

 

 「未来予測」というテーマの分科会もある。これは石井さんが考案し、今年初めて設定されたものだ。エビデンスを基にした国際関係や産業の未来予測や、予測による戦略立案を中心に議論する。「50年後に覇権を握る国はどこかということや、日本の今後の外交をどうすべきか、AIの活用によって産業構造はどう変化するのかなどが予測の例です。予測を踏まえて我々が取るべきアクションまで議論したいと思っています」。

 

 その他の分科会は、社会の利益とプライバシー保護とのバランスなどについて議論する「技術革新と遺産」、悪とされるものが文化ごとに異なることなどに着目しながら禁忌について考える「タブー」、ソーシャルビジネスがウェルビーイングに貢献するためのあり方を模索する「ビジネスと社会変革」、国際政治についてだけでなく国内問題を国際的な視点から捉えるところにまで踏み込む「グローバル・ガバナンスと国家主権」、抑圧されてきた人々の社会運動について考察する「社会正義と文化多様性」だ。

 

 

 とはいえ、テーマはあくまで入り口に過ぎない。設定されたテーマの下で、具体的にどのようなトピックについて話すのかは基本的に参加者の自主性に委ねられているところが大きな特徴だ。「ある程度近い関心を持つ学生さえ集まれば、あとは好きなように議論してもらえるだろうというスタンスです」と石井さんは話す。

 

 分科会の定期ミーティングと並行して行うさまざまな事前活動も重要だ。例えば例年開催される一泊二日の防衛大学校研修では、日本の国防について知ることを通して、日米関係について考える上で避けては通れない「安全保障」について学ぶことができる。その他、主に分科会ごとに研究所や政府機関などの施設などを訪れたり、スピーカーを呼んで見識を深めたりする「フィールドトリップ」などの事前活動もある。

 

異なるバックグラウンドを持つ参加者を「リスペクト」する

 

 さまざまな出身地域・所属の、多様なバックグラウンドを持った学生を参加者として受け入れているが、参加者はみな「意見を発信したり人の意見を聞いて何かを吸収したりしたい気持ちが強」く「人とのつながりに何かを見出している」人ではないかと石井さんは話す。辻さんは「人の話を聞くのも、自分の話をするのも好きな人が多い。議論する団体ではあるけど、議論にならないようなただの雑談でもシェアできる、何でも話せる場になっていると思います」。人を尊敬し、話を聞いて自分の成長につなげられるような人に来てほしいという。

 

 アドミッションポリシーでは、社会の現状に疑問を呈し、議論をアクションに移せるようになること、またそれによって参加者個人だけではなく社会にも何かを還元することなどを目標として定める。それを踏まえ、石井さんは求める学生像として「外国語運用能力を含むコミュニケーション能力がある」「人をリスペクトしつつも時には衝突を恐れないで議論できる」「他人との交流の中で価値を創造できる」などを挙げた。

 

 

 「尖った人が多い」という参加者や同窓生とは、会議後も交流が続く。辻さんは「何でもないことも話せる仲で、同期の参加者とおすすめの本を贈り合ったりもしました。交流が今でも続いていて、コミュニティーとして安心できる場です」と話してくれた。昨年参加し、運営に携わりたいと思ったのも「参加者の居場所を守りたい」という思いがあったからだったという。

 

参加者にとっても、国際情勢にとっても コロナ禍の学生交流の意義

 

 満州事変後に急激に悪化した日米関係への当時の学生の危機感から始まった日米学生会議。当時から変わらない役割がある一方で、今この時代に開催されることの意義はどのようなものなのか。辻さんは「大学の学部という狭いコミュニティーにいると考えが狭まってしまうこともあると思います。だから他の大学の人と交流できて、学べて、さらにそれが会議の後も続くことの学生にとっての意義は大きいと思います」。石井さんは「時にはオンラインでありながらも、コロナ禍で学生交流を続けていること自体が客観的な意義を持つの」ではないかと語った。東アジア情勢も刻一刻と変化する中で、日米の学生で平和について考えるという場を「どうにか絶やさずに時代の中で取り組みを続けて、次の世代につなげられれば」という思いがそこにはあった。

 

 選考は、第一次・第二次に分かれ、うち第一次選考の課題は小論文です。応募者は2月4日までに、プレエントリー後に案内される本エントリーフォームへの必要事項・小論文課題回答の記入と第一次選考料の振込を行う必要があります。詳細はこちらから。

 

【関連リンク】

日米学生会議公式ウェブサイト(サイト右上の赤いボタンからプレエントリーが可能)

第74回日米学生会議 紹介動画

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