就活

2023年3月10日

【新しい働き方・フリーランス編】官僚からフリーのライターへ

 近年、働き方や仕事観は大きく変わってきている。感染症対策でデジタル化が一気に進み、リモートワークは珍しくなくなった。企業に勤めながら副業をする、個人がスキルを身に付けてフリーランスになる、大幅な人口減少が見込まれる日本を飛び出して海外で働く、などの話も耳にする。就活生の中には仕事内容だけでなく、どのような働き方ができるかを重視している人も多いだろう。「今どきの働き方」四つを取り上げ、その実態やメリット・デメリットを聞いた。今回は「フリーランス」編として、フリーのライター・編集者として働く奥村まほさんに取材した。(取材・石橋咲)

 

奥村まほ(おくむら・まほ)さん フリーランスのライター・編集者

 

無理せず力を発揮できる働き方を見つけて

 

 東大を卒業後、国家公務員として中央省庁に1年8カ月勤めたのち、IT系ベンチャー企業で2年ほど勤務した奥村さん。2019年にフリーランスのライター・編集者になった。現在はエッセイやコラムなどの執筆活動や、企業のホームページに掲載するウェブコンテンツの企画・制作、文章教室での講師活動などを行っている。仕事の依頼はホームページやnote、TwitterなどのSNSを通じた問い合わせが多い。

 

奥村さんが運営するウェブサイトのホームページ

 

 元々文章を書くことが好きでいつかは作家活動をしてみたいと思っていた奥村さん。官僚組織や企業で働いているときは、新しいものを作り出す意欲や能力にふたをしている感覚があったという。組織では将来的に管理職になる場合が多いが、奥村さんは人を束ねたり調整したりする仕事が好きではなかった。むしろ一人で集中して努力することの方が肌に合っていると感じ、自分だからこそ生み出せる価値を世の中に届けたい、とフリーランスになることを決めたという。時間や人間関係に縛られずに仕事ができることも魅力の一つだった。

 

 不安はそれほどなかったというが「大学を卒業してすぐフリーランスになるのはきつかったと思います。組織で働いて得たスキルや貯金があったので、不安が和らいだのかもしれません」。一人でモチベーションを保って継続的に努力できるのか確かめるため、まず仕事に関係ない趣味の検定を受検してみたという。フリーランスになる際にはホームページの立ち上げやお金のことなど、実務的な知識を身に付ける必要があったが、一から勉強していく過程も刺激的だったと振り返る。

 

 1日の過ごし方は「日によって、例えば夫が家にいる日といない日では大きく違うんですよね」。基本的には午前8時半から午後5時の間に仕事をすることが多いが、その間にも家事や趣味の時間をとるなど、ずっと働いているわけではない。夜は読書や執筆活動に充てることが多いが、12時ごろには就寝。週に1〜2日程度は休みの日を設けている。いつでもどこでも仕事ができるため、夫と起床時間や休みなど生活リズムを合わせることで生活にメリハリをつけていると語る。

 

1日の過ごし方

 

 所属組織の看板ではなく自分の名前で仕事をしているため、自身の能力や人間性を信頼して仕事を依頼されることがやりがい。「私の仕事が役に立ったとか、作品に心を動かされたとか、生の声が直接伝わってきたときはうれしいなと感じます」。会社では誰かの悪口など「雑音」で気分が悪くなってしまうこともあったが、現在の静かに仕事ができる環境は気に入っている。確定申告など企業勤めの頃は不要だった作業をする必要もあるが、たまに単純作業を挟むことが気分転換になっているという。

 

 一方、企業で働く場合と違って規則がなく時間の使い方が自由なので、自分で自分を律するのが大変だ。また、組織では同僚や上司から仕事への評価をもらったり面談でキャリアについての相談をしたりできるが、フリーランスはどのようなキャリアを積み重ねていくか、そのためにどういう発信をしていくかを考える必要があり「受け身の姿勢でいては駄目だと感じました」。

 

 現在は企業のサポートや講師活動が中心だが、今後は現在の仕事を伸ばしつつ、作家としての活動の幅も広げていきたいと考えている。

 

 学生時代は「将来やってみたいと思っていることを後回しせず、まず行動してみても良いんじゃないでしょうか。就活では自分の固定観念にとらわれすぎずにいろいろ見た上で決めるといいです」。自分がどのような分野や環境、働き方なら無理しすぎず力を発揮できるのか、経験を積む中で見出してほしいと語る。実際に社会に出てから見えてくることもあるため、最終的に満足できる状態で働けるように気長にやってみるのが良いという。

 

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