就活

2023年3月8日

【新しい働き方・リモート編】フルリモートで働くメリットと課題は?

 

 近年、働き方や仕事観は大きく変わってきている。感染症対策でデジタル化が一気に進み、リモートワークは珍しくなくなった。企業に勤めながら副業をする、個人がスキルを身に付けてフリーランスになる、大幅な人口減少が見込まれる日本を飛び出して海外で働く、などの話も耳にする。就活生の中には仕事内容だけでなく、どのような働き方ができるかを重視している人も多いだろう。「今どきの働き方」四つを取り上げ、その実態やメリット・デメリットを聞いた。今回は「リモート」編として、日本マイクロソフトで働く金澤聖訓さんに取材した。(取材・伊藤凜花)

 

金澤聖訓(かなざわ・まさのり)さん 日本マイクロソフトコーポレートコミュニケーション本部

 

場所や時間にとらわれずに世界と働く企業が生き残る

 

 Officeなど多様な働き方を支援する製品を手掛けていることもあり、早い段階からリモートワークの環境が整っている日本マイクロソフト。2007年から在宅勤務制度が開始し、東日本大震災をきっかけに利用者が拡大、16年からフルリモートでも勤務できるようになった。コロナ禍での出社制限を経て、現在は働く場所や時間を自在に選択できる「ハイブリッドワーク」を実現し、出社率は会社全体で2割弱となっている。

 

オフィスでも好きな場所で働くことができる

 

 広報として働く金澤さんも、16年から週1回在宅勤務をするようになり、コロナ禍を契機にフルリモートに切り替え。出社は月1回程度となった。現在の働き方を選んだ理由としては「広報の仕事は米国本社や記者の方とのやり取りが多いので、リモートの方が効率が良いんです」と話す。

 

 大まかな就業時間は午前8時から午後6時だが、途中で気分転換も兼ねて犬の散歩をしたり、子どもの送り迎えをしたりとプライベートな時間が入る。逆に、本社のイベントがあった場合など、必要に応じて20時以降まで働くこともある。「最初は家族と過ごす時間との混在や休憩の難しさに戸惑いましたが、続けるうちにデバイスなどの環境も整い、ルーティーンが定着して公私の区別ができるようになりました」。リモートワークでは家族の理解と協力が不可欠なため、家事など家庭での役割を全うすることも重要だという。

 

 ハイブリッドワークに向け、オフィス環境も整っている。11年の本社移転を契機に内装を一変。従来の閉鎖的なオフィス環境を廃止し、固定電話も撤廃。一人ずつのデスクがなくどこでも自由に座れるフレキシブルシーティングを実現した。22年に新装した本社では、植物を取り入れた開放的な執務スペースに、気分転換としてエクササイズや瞑想(めいそう)ができる設備も取り入れた。

 

エクササイズのできるアクティビティールーム

 

 ハイブリッドワークの結果、会社全体では移動時間などの業務の無駄が省かれ、顧客との時間が大幅に増えた。会議の数や合計時間も増加し、社員同士のコミュニケーションも活性化した。金澤さん個人も「ストレスが低減し、家族との時間が増えました」とメリットを感じている。

 

1日の過ごし方

 

 一方で、出社経験の少ない新入社員は人脈を広げるのに苦労しているという。会議の詰め込みすぎも、生産性を追い求めすぎず心身の健康を大切にするウェルビーイングの観点で問題だ。さらに「休憩時間の立ち話や雑談の中で新しいアイデアが生まれたりするので、そのような偶然のやり取りが生まれにくいのは課題ですね」。このような課題は商品開発に生かされる。例えば、社員の自己紹介を作って検索できる社内アプリや、会議の数や休憩時間など、一週間の働き方を自身やチームのマネージャーが振り返ることができるサービスが開発、提供されている。

 

 これからの働き方について「住んでいる場所や時間は関係なくなっていくと思います」と話す。金澤さん自身も、リモートワークに移行してから、東京よりも地方の人とのやり取りや活動が増えた。世界中の人と働くツールとして、メタバースの導入も進んでいる。ゴーグルをつけることで、離れた場所でも空間を共有し、製品のモデルなどの立体的なイメージを共有できるサービスは、既に企業への導入が始まっている。自動翻訳技術が進歩すれば、言語の壁も低くなるだろう。

 

 だからこそ、これから就職する学生に対しては「国内だけでのビジネスは、人口減少の観点からも伸びしろが限られます。『世界を意識しているか』は自身の成長を考える上でも重要だと思います」と語る。また「言語やコミュニケーションスキルも大事ですが、世界の人と働く上で、一つの分野で何か専門性を持っておくと良いと思います」とも話す。「オフィスにいる人とだけ働くスタイルは廃れていきます。働く環境だけでなく、会社が何をしているかに着目し、世界とのつながりを意識していただけると、より良い就職活動ができると思います」

 

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