文化

2022年11月4日

【ひとこまの世界】本棚ごとに違う店も? 神保町で個性派本屋を巡る

 

 肌寒い日が多くなり、秋の気配を感じる。そこで今回は神保町を訪れ、ひとこま=105分の隙間時間で秋の夜長に読む本を探すことにした。

 

16:30 本郷キャンパスから電車で約15分の神保町。この辺りの本屋巡りは一度したことがあるが、今日は新しい本屋を開拓することにしよう。

 

16:35 初めに訪れたのはSFとミステリー関連書籍を多く扱う「羊頭書房」。ミステリーはあまり読まないが、せっかくなので新ジャンルの1冊目をここで見つけたい。

 

 

こぢんまりした店内にSFやミステリーがびっしり。店員さんと2人きりの空間に少し緊張しつつ棚を眺める。

 

 

 耳なじみのない海外作家の本もあれば、谷崎潤一郎や横溝正史など日本の文豪の本もある。横溝正史の表紙のおどろおどろしさにおののきつつ、どの本を買おうかと奥の棚へ移る。

 

 

 奥には古本というより「古書」と呼ぶべき本が並んでいた。「サイン入」のラベルに触るのも遠慮してしまう。

 

 するとその一角にジョージ・オーウェルの『1984』を見つけた。浪人時代に英語の教材として触れたことはあるものの、結末が思い出せない。せっかくなので購入して読んでみよう。

 

ジョージ・オーウェル、田内志文訳『1984』角川文庫、定価税込み924円

 

17:00 「PASSAGE by ALL REVIEWS」という本屋に来た。

 

 

この店は少し独特で、一棚ごとに別の本屋になっており、それぞれの店主が選んだ本を自分の棚で売るスタイル。本棚一つ一つにその棚の店主の個性が表れている。似た形態の「BOOKSHOP TRAVELLER」という本屋が下北沢にあることは知っていたが、実際にこういった店を訪れるのは初めてだ。

 

 

それぞれの棚に「デカルト通り」などといったフランスの実在の通り、つまり「passage」の名がついていることが店名の由来のようだ。

 

 

 店内を物色していると校閲・校正、辞書、ことばに関する本が並ぶ「校閲書房」の棚があった。

 

大西寿男『校正のこころ 増補改訂第2版 積極的受け身のすすめ』創元社、税込み2420円

 

 『校正のこころ』というタイトルを付けられては、日頃記事の校正作業もしている東大新聞の部員として手に取らずにはいられない。中を開くと、専門外の人間が校正を行う際の注意点など、役立ちそうなことが書いてある。今度編集長を連れてきて部費で買ってもらおう。

 

 

 次に気になったのは熊本と青森に関する本を売る「青熊書店」。両県出身の店主夫婦が、それぞれの土地の気風を感じる本を集めた棚らしい。熊本出身の記者は思わず立ち止まり『建築の森・熊本を歩く』(彰国社)を手に取った。地元が有名建築の集まる「建築の森」と呼ばれていることに、うれしくなる。

 

 

17:35 どの棚も興味深いが値段が少し高い。学生の財布に優しい本を探していると、300円均一の「BOOKBOXはがね」を見つけた。文芸誌『新潮』(新潮社)の創刊1400号記念特大号を買おう。70人以上の文学者の文章が載っていると知り、得した気分になった。

 

 いざ本を買うと「秋の夜長」を待っていられない。早く読みたくなり喫茶店を探す。

 

 

17:40 静かな裏路地に、落ち着いて読書をするのに良さそうな店を見つけた。書店「書泉グランデ」の裏にあるレンガ造りの喫茶店「神保町ラドリオ」だ。

 

 

ここはウインナーコーヒーを日本で初めて提供した店として有名らしい。しかし今回の目当ては別にある。

 

 

 昔ながらの喫茶店では、コーヒーも良いがクリームソーダも良い。少し奮発してアイスクリームを夏限定ラムネ味にした。甘すぎず爽やかでごくごく飲めてしまう。

 

18:15 本を読んでいるとかなり時間が経っていた。落ち着いた照明で程よい広さの店内は居心地が良く、思わず長居してしまう。続きはまた夜に読もう。【葉】

 

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