受験

2022年7月7日

現役大学院生に聞く、院進と研究のリアル【新領域創成科学研究科・数理科学研究科・人文社会系研究科編】

 

 日本の大学生の大学院進学率は約12%。社会の発展へ大切な役割を担うが、大学院生は決してありふれた存在ではなく、そのリアルは想像しがたい。社会人経験のある人や今年院進した人など前編・後編あわせて5人の先輩に、院進のきっかけから「研究者」としての活動の実際、そして思い描く未来について聞いた。具体的なイメージを持ち、社会の未来を考えてみよう。研究やアルバイトなどの実際の生活のスケジュール例を各末尾に掲載している。院生の生活のイメージをつかんでみてほしい。(構成・清水琉生、取材・松崎文香、上田朔、鈴木茉衣

 

新領域創成科学研究科複雑理工学専攻

 

研究室での議論が喜び

 

眞田聖光(さなだ・さにや)さん(修士1年)

 

 宇宙開発に携わる仕事に就きたいと考えていたため大学院進学は決めていました。学部時代は筑波大学の工学システム学類でロケットの推進について研究していたのですが、宇宙そのものや衛星で集めたデータの解析など理学系の分野にも興味があったので、理工が融合している新領域創成科学研究科の研究室に進学しました。

 

 工学系の科目でも受験できる入試制度だったのも決め手になりました。ひたすら過去問を解きながら、テキストなどで過去問と似た問題を探して演習を重ねましたね。

 

 大学院では、理学系の授業が受けられることや、研究室の先輩や教員と専門的な話ができることが嬉しいです。自分の研究と直結するので、授業もより真剣に受けるようになりました。一方で新しい分野に移った分、基礎的な知識が足りないと感じ、早く周囲に追いつかなければという焦りもあります。研究では学部時代よりも高い思考力が求められ、実験結果が出ただけで満足せず、他のデータとの比較などを通じて多角的な視点から考えるよう指導されます。

 

 現在は従来の専門も生かしつつ、衛星が取得したデータをモデル化する研究に取り組んでいます。その傍ら、講義や研究室全体で行う輪読を通じて理学系の基礎的な勉強を進めています。

 

 将来は宇宙分野に進むきっかけになったNASAで働くことを目標にしています。そのために、修士課程を修了したら海外の大学院で学びたいですね。

 

一週間のスケジュール例

 

複雑理工学専攻では……

 理学と工学を融合することで、脳・生体メカニズム、宇宙、プラズマといった極限状態の物質など、現実世界に数多く存在する複雑系の解明・応用を目指す。

 

数理科学研究科

 

自由な心で数学を楽しむ

 

中山裕大(なかやま・ゆうた)さん(修士1年)

 

 小中学生の頃から算数や数学に興味があり、高2の時には現在の私の研究とも関係している「楕円曲線」に出会いました。理学部の推薦入試制度で東大に入学したのですが、学部時代には推薦生の先輩などに院試の面接対策について話を聞けました。理学部数学科で開講されていた「数学講究XA」で配属される研究室の大学院生にも相談に乗ってもらえました。

 

 現在は毎週水曜日だけ登校して、数理科学研究科で最近流行っているサッカーをしたり、数学科の授業でTA(ティーチングアシスタント)をしたりしています。指導教員と研究の相談をするのも水曜日のみで、時間の使い方の自由度が高いです。現在の研究分野は「数論幾何」です。楕円曲線の高次元化を道具として使い、解析学的な対象と幾何学的な対象を結び付け、数論に応用したいと考えています。

 

 大学院へ進学後、修士論文用の研究テーマを教員から与えられ、修士1年の年末に論文にまとめました。現在(5月11日、取材当時)は博士課程の学生に研究奨励金が支給される「特別研究員制度(DC1)」に応募する準備をしていますが、修士1年の間にまとまった研究成果があれば審査でもポジティブに評価されると思います。

 

 修士2年からは自分で見つけた新しいテーマの研究も始めました。こちらの研究はすぐには終わらなさそうなので、博士課程に持ち越すつもりで取り組んでいこうと思います。

 

一週間のスケジュール例

 

数理科学研究科では……

 数学・数理科学の体系的知識と研究能力を修得した研究者や、専門的な判断力を持ち社会の広範な領域で活躍する人材を育成する。

 

人文社会系研究科基礎文化研究専攻宗教学宗教史学専門分野

 

仲間との交流を通じ幅広く宗教に向き合う

 

門芳敏(かど・よしとし)さん(修士1年)

 

 学部生時代は宗教学宗教史学専修に所属し、卒論では古代の教父アウグスティヌスについて研究。「大学院に行って専門的な勉強を続けたい」という思いを3年生の頃から漠然と抱いており、特に就活もしていなかったためそのまま大学院進学を決めました。院試の専門科目の試験のうち用語解説問題については、あらかじめ出題範囲として書籍が指定されていたため、それらを使って同期と知識を補い合いながら勉強しました。

 

 現在受講しているのは全てゼミ形式の授業で、文献講読をしていることが多いです。予習には時間がかかりますが、履修は週に5こまと空き時間は多いので、並行して今後の自身の研究のための資料を集めたり、基礎知識を学ぶために本を読んだりと自分で時間の使い方を決めることができます。

 

 研究室にはさまざまな時代・地域を専門にした教員がいますが、自分の研究したい内容と教員の専門が完全に合致することは少ないので、他の学生との交流を通じて興味分野が近い仲間を自分で探すことが必要になってきます。一方で、近代日本宗教史の読書会にも参加するなど、専門外の視点も持ちつつ宗教に向き合い、自分の研究にどうオリジナリティーを出すか模索している段階です。

 

 可能なら博士課程にも進学して研究を続けたいと思っています。ただ、金銭的な準備のために一度就職してからアカデミアに戻るという選択肢も視野に入れています。

 

一週間のスケジュール例

 

宗教学宗教史学専門分野では……

 文献研究や社会調査など多様な手法により、キリスト教や仏教などの宗教から民間信仰や現代の新宗教までさまざまな宗教現象を理論化する。

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