報道特集

2020年12月30日

【2020年の東大を振り返る】②総長選考 議論の透明性に疑問の声相次ぐ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に大きな影響を受けた東大。異例の事態が相次いだ総長選考や日本初となる大学債の発行など、今後の東大の在り方を左右する重要な出来事も相次いだ。東大の1年を振り返り、展望を考える。

 

総長選考 議論の透明性に疑問の声相次ぐ

 

 東大では今年、本年度で任期満了の五神真総長に代わる第31代総長の選考が実施された。議論の透明性に関する疑問の声が学内外から寄せられた今回の総長選考の過程を振り返りたい。

 

 国立大学では国立大学法人法の規定により、学長選考会議(東大では総長選考会議)の選考で学長・総長を決めるという仕組みが取られている。国立大学が社会に大きな責任を負っているなどの理由から委員の半数を学外者が務めるのも特徴的で、主に全学的な投票で決めていた法人化前の選考方式とは大きく異なる。

 

 東大では法人化以前の投票に代わる学内構成員の意見反映の手段として教授会構成員の教員による意向投票を実施しているが、一部の国立大学では意向投票の廃止が進んでいる。政府も、過度に学内の意見に偏るような選考方法は適切でないとして、意向投票に消極的な姿勢を見せているのが実情。東大でも意向投票の扱いは次第に小さくなっており、今回の選考では意向投票と選考会議による調査の結果双方を考慮して選出することになっていた。

 

 今回の総長選考では、第28代総長の小宮山宏氏が総長選考会議議長に就任し、4月28日に選考開始を告示した。告示に合わせて発表された「求められる総長像」では総長の経営能力を重視する路線がより鮮明に。同時に今回の選考では内規が数点変更されている。中でも特筆すべきは第2次候補者の人数を「5人程度」から「3人以上5人以内」に変更した点で、9月以降にはこの変更に関する批判も多く寄せられた。

 

 7月には第1次候補者を選出する代議員会と経営協議会を開催。東大では(図)のように教職員からなる代議員会と、東大執行部や学外の有識者からなる経営協議会が第1次候補者を選出し、総長選考会議の選考で第2次候補者を決定。第2次候補者を対象とした意向投票の結果を考慮し、総長選考会議が総長予定者を選出することになっている。

 

 

 前回の選考では第2次候補者の氏名が一般にも公表されたが、今回は教職員への通知のみ。氏名について「取扱いにご留意願います」との要請も行われた。加えて第2次候補者は「3人以上5人以下」と規定されていたが選出されたのは3人のみで、全員男性の理系研究者だった。これらの動きなどに疑問を抱いた東大教員有志、元理事、部局長らが小宮山議長宛てに要望書、質問状を提出。一部の学生や教職員の間で、SNSなどで議論が巻き起こった。

 

 9月30日の意向投票では藤井輝夫理事・副学長が過半数の票を獲得。総長選考会議も藤井理事・副学長を総長予定者に選出した。選考に批判の声が相次いだことを受け、東大はTMI総合法律事務所に検証を依頼。12月11日午前に調査報告書が東大に手渡された。今後は検証に基づく説明と、疑惑を招かないための体制をつくることが求められる。

タグから記事を検索


東京大学新聞社からのお知らせ


recruit

   
           
                             
TOPに戻る