キャンパスライフ

2021年8月13日

【比較進振学】東大で建築やまちづくりを学ぶにはどの学科? 迷いがちな工学部建設系3学科を徹底比較!

 

 「複数の学部・学科で近い領域の学問を扱っていて、進学先を決めきれない!」と、日々志望が揺れ動く前期教養課程生も多いのではないだろうか。そうした悩みを解決するため、進学選択の際に迷いがちな進学先の学生に話を聞き、それぞれの進学先を徹底比較する本企画。今回のテーマは「工学部 建設系3学科」。工学部建築学科(建築)、都市工学科(都市工)、社会基盤学科(社基)の3人に、学科の特徴や前期教養課程生へのアドバイスを聞いた。(取材・松崎文香)

 

参加者

 

山本実南さん 理Ⅱ→工学部建築学科4年

山田拓実さん 理Ⅰ→工学部都市工学科都市計画コース4年

東野昌伸さん 理Ⅰ→工学部社会基盤学科C(国際プロジェクトコース) 現在工学系研究科修士1年

 

幅広く学び、演習で生かす

 

──学科で学んでいることや、学科ごとの特色が出るポイントである演習系の授業について教えてください

 

山本(建築) 建築学科といっても設計や製図ばかりをしているわけではなく、建築材料や建築の歴史、関連する法律、構造、環境設備についても学びます。建築学は人々の暮らしを支える広範な学問なので先生がよく「建築は総合学だ」とおっしゃいますが、私自身もその言葉通り、他学部・他学科の授業を受けながら、文系や理系といった枠組みにとらわれず幅広く勉強を進めています。演習系の授業は設計・製図が中心で、個人で取り組みます。しかし自分の考えを一人で深く掘り下げる一方で、製図室などで友人と意見交換することも多く、良いバランスだと思っています。実際に建設現場に出向いたり、コンクリートを作ったりする授業もありますよ。

 

山田(都市工) 「都市工学」と一言でいっても扱う対象は幅広く、住宅・デザイン・みどり・防災・交通・土地利用など、様々な観点から都市にアプローチすることが不可欠です。しかし学科で開講される授業は、都市を構成する道路やみどりなどの「モノ」をどのように配置すればいいのかに関する「計画」を扱うものが多いので、作り方や材質など「モノ」そのものに関する技術を学ぶために社基の授業を受けに行くこともあります。週に6コマほどある演習系の授業では、グループで取り組む課題が多いです。これは一つの都市計画の中にも上に述べたようなさまざまな要素が含まれているため、都市の中でも異なった分野・スケールに興味を持つ人同士で、専門知識を総合して取り組む必要があるからだと思います。

 

東野(社基) 学科の名前となっている「社会基盤」は、英語でinfrastructure(下部構造)という意味です。人間社会を支える土台であるインフラに対しアプローチの仕方はさまざまですが、「実際の問題解決に資する研究をする」という目的意識は学科全体で共有されている印象を受けます。構造物の設計などのハード面から始まり、都市計画や交通計画などのソフト面についても学びますね。演習系の授業は各研究室の専門と対応して多種多様で、演習のコマ数などは人によりけりですが、多くの学生が演習を学びの中心に置いている印象です。必修としては3泊4日の合宿形式で行う「フィールド演習」があり、寝食を共にして議論、測量、計画立案などを行います。

 

──建築士などの資格取得について教えてください

 

山本(建築) 多くの学生が一級建築士の資格取得を視野に入れて学習を進めている印象です。というのも、建築学科の卒業要件を満たすように授業を履修していれば、自然に一級建築士の受験資格が得られるんです。

 

山田(都市工) 都市工の場合は、建築士の資格を取ろうと思うと結構大変だと思います。周りに二級建築士の資格を取ろうとしている人もいますが、資格取得のために必要な授業を建築や社基で受講しつつ、都市工の勉強もしなければならないので忙しそうです。

 

東野(社基) 社基も都市工と一緒ですね。

 

一番の違いは物事を扱うスケール

 

──3学科の違いは何だと思いますか

 

山本(建築) 一番は物事を扱うスケールの違いかなと思います。建築学科では住宅や建物に焦点を当てているので、地域や都市を扱う時もヒューマンスケールを軸に考えます。具体的には、この椅子の高さが10センチ高かったら人はどういう感じ方をするのだろうとか、あの壁の素材がコンクリートから木材に変わったらその空間はどう変化するのかとか、自分の感覚に近い細やかな視点で見るのが特徴だと思います。実際、都市工や社基の授業を受けていると、都市やインフラなどより大きいスケールで考えるのが上手だなと感じますね。また、演習のところで話題に上りましたが、他2学科ではグループワークが多いのに対して、建築学科は個人単位で演習を行うんですよね。演習を通じて、何度も悩みながら作品を作って自分の考えを確立させるということが求められているのが特徴的だと思います。

 

山田(都市工) グループワークの多さからも分かるように、都市工では都市に関わるいろいろな立場の人がいる中でさまざまな利害関係に折り合いをつけていくことが求められますね。例えば二子玉川のように交通のアクセスは良いけど水害に弱いとか、一方が成立したらもう一方が成り立たないというトレードオフの関係がある中で、何を重視してどう折り合いをつけるのかを考えるのが一番大変だけど面白いところだし、他の学科にはあまりないのではないかと思います。あとは、建築学科のような「ものづくり」というよりは、計画を立ててそれを実際の都市空間に落とし込む、ということに重点を置いていますね。

 

東野(社基) 山本さんがおっしゃるようにスケールは大きな違いだと僕も感じていて、インフラは空間的にも時間的にも、ものすごく大きいスケールで考えなければならないことですよね。特に都市工と比べて思うのは、人間が暮らしやすいまちを作るという目的は同じだけれど、アプローチが違うなと。社基は技術的なアプローチが土台にあるというか……。山田さんはどのようにお考えですか?

 

山田(都市工) 東野さんがおっしゃる通り、目的は同じだけど切り口が違うのかなと思います。例えばダムだったら、下流のまちを水害から守るという、ダムを作る目的は両学科で共通だと思うんですよね。一方で、ダムに対する関わり方は違っていて、社基だとさらにその目的を達成するべく、ダムを有効活用するための技術の開発だったり、100年後もダムを維持していくにはどういう技術が必要かということを考えたりすると思うのですが、都市工の場合はダムを地域資源だと捉えて、ダムと地域とのつながりとか、防災面で考えれば、避難する際に住民にどういう行動をとってもらう必要があるかに焦点を当てると思います。

 

──進学選択で他に悩んだ進学先や最終的に今の進学先を選んだ理由を教えてください

 

山本(建築) 私は元々食に興味があったので、農学部に進学しようと理Ⅱに入学しました。しかし自分の興味を突き詰めて考える中で、食だけでなく人の暮らし全般に関心があることに気付きました。前期教養学部の授業を受ける中で「まちづくり」という言葉に引かれて建築系に進むことを決めたのですが、都市工とは最後まで悩みましたね。最終的には建築の「自分の手が届くスケール」というところが決め手になって、建築学科に進学しました。実際に進学して思ったのは、全員がクリエイティブでデザイン好きというわけではないんだなと。理系的な構造に興味がある人もいるし、建築の歴史に興味がある人もいるし、本当に多様な学科です。

 

山田(都市工) 僕はダムが好きで、ダムといえばインフラのイメージが強く、技術的なアプローチにも関心があったので、社基が良いのかなという思いもありました。しかし2年生で大学のフィールドスタディに参加した際に、実際に地域の人が自分の暮らすまちについてどう考えているかや、都市と人がどう結びついているのかを知って都市に興味を持ち、都市工を選びましたね。ただ、都市工進学後もダムに対する技術的な興味はなくなっていないので、社基の水理学や都市工の都市環境コースの環境に関する授業を取ったりしています。文句を言うわけではないですが、都市工と社基が分かれていることで、都市の専門家として必要なソフトとハード両方の視点を持つということが難しくなっていると思います……。

 

東野(社基) 僕は元々地理が好きで、インフラを通じて都市に対して働きかけることで「時間的・空間的制約を緩和できる」ことがすごいなと思っていたんです。例えば駒場から柏は徒歩で行くにはかなりの距離がありますが、鉄道によってその間の移動が楽にできるようになるじゃないですか。前期教養課程の時は都市工と社基で扱うことが近いように感じたので迷ったのですが、社会基盤構造物を通じて時間的・空間的な関係性を変化させられることだったり、スケールの大きさだったりに引かれて社基に入りました。

 

──最後に、前期教養課程の学生へアドバイスとメッセージをお願いします

 

山本(建築) 前期教養課程の授業の中で「図形科学」は多くの学科生が履修していたので、お薦めですね。ただ最初にお伝えしたように、建築学科で学ぶことは本当に幅広いので、こうした授業だけで「自分は向いてないな」と判断してしまうのはもったいないなと思います。あとは、駒場図書館の建築コーナーがとても充実しているのでぜひ見に行って、自分が好きな建造物や建築家を発見してほしいですね。本屋さんの建築コーナーも、ビジュアル的に鮮やかな本が多くてワクワクする空間だと思うので、ぜひ立ち寄って建築の分野に触れてほしいなと思います。他にも実際に建物に足を運んで、自分がどう感じたかを記録しておくといいかなと。学科に入ると、構造や歴史などの専門知識を通じて建築を見てしまうのですが、そうした記録があれば自分の好きな空間を忘れずに学び続けられるし、それが設計にも生きてくると思っています。この学科に行ったからこれしか学べない、ということはないので自分の好きなスケールや直感に従って学科を選んでください。

 

山田(都市工) 前期教養課程の授業では「社会システム工学基礎」などがおすすめなのですが、都市工はやはり本物のまちを対象にした学問なので、いろんなまちを実際に見に行ってほしいなと思います。今はコロナで難しいかもしれませんが、実際に行くことでしか分からないことがたくさんあると思うので、自分の住んでいるまちの周りを散歩するのでも良いから時間があるうちに見に行ってください。大学の体験活動プログラムなどに参加して、現地でいろいろと考える経験をするのも良いと思います。決して「まちづくりをするなら絶対に都市工に進学しなければならない」わけではないので、自分が都市に対してどのような関わり方をしたいかを改めて考えて、学科選びをしてもらえればと思います。

 

東野(社基) 僕も山田さんと同じく、まちに行くのは本当に大事だと思いますね。社基も実際のまち、現場で起きていることを扱うので、現場に足を運ぶ中でまち全体や人に対する観察眼を鍛えると良いと思います。この3学科はお互いに授業なども取りに行きやすい環境なので、授業の他にどのような先生がいるのかというのも学科選びの参考にすると良いと思います。学科に入った後、どのように学びたいかをぜひ考えてみてください。

 

時間割

注:黄色は必修科目

 

 

 

2021年8月27日14:07【記事修正】社会基盤学科の時間割で、木曜6限の社会基盤学倫理が抜けていたため時間割を差し替えました。お詫びして訂正いたします。

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