専門分野に応じて数多くの専攻や研究室に分かれる大学院。そこでの学び方・生活の仕方も人によってさまざまだ。東大からだけでなく他大学から進学する学生、学び直しを志す社会人など、大学院には多様な目的・ライフプランを持った人々が集まる。今回は経済学研究科と教育学研究科の大学院生に、進路を決めた経緯や日々の過ごし方、研究の進め方について話を聞いた(記事中で取り上げた試験内容などは今後実施されるものと異なる場合があります)。(構成・岡拓杜、取材・佐竹真由子、岡拓杜)
経済学研究科 経済史コース
問題関心を掘り深める
戦後日本のジェンダー史、特に性と生殖のコントロールについて研究しています。経済学部に進学した当時は経済理論を学ぼうと思っていたのですが、学部3年次に入った経済史のゼミがきっかけで、ジェンダーに関する自分の問題関心に歴史的にアプローチしたいと考え始めました。ジェンダーについてしっかり議論できるまで考えを深めたいと思い、院進を意識するようになったのもこの頃です。卒業論文では日本でピル(経口避妊薬)が承認されるまでに 40 年近くかかった背景を研究しました。
修士1年次はまだ授業が多いので、予習に時間がかかって、研究になかなか集中できていないのが正直なところです。一方で、研究室の環境には恵まれています。自分専用の机があるのはもちろん、研究室にはいつも誰かがいるので、大人数の授業などで1人で過ごす時間が多かった学部時代より人との交流が増えたのは大きな変化です。最近では研究室の人と週に1回バレーボールで遊ぶようにもなりました。他の研究科や大学の読書会や研究会に参加するなど、研究面での人脈も広がっています。
経済史を専攻することに決めたのが学部4年次だったので、史料の読み方などに課題意識があります。今後は研究の基礎を固めつつ、戦後日本を対象に、性と生殖のコントロールと、社会・経済との関係を研究したいと思います。性と生殖に関する権利を獲得するための道筋を明らかにするべく、研究にまい進していきたいです。

教育学研究科総合教育科学専攻教育学コース
学びを深めた先にキャリアを設計
理Ⅱに入学後、自分の受けてきた教育について理解を深めたいと思い、教育学部基礎教育学コース(当時)に進学しました。他学部の授業も積極的に履修し関心を深める中で、もっと深く学びたいという思いを抱き、学部3年次の秋に院進を決めました。論述試験の対策に力を入れ、同じく進学を志す同期と読書会を行ったり、修士課程に在学する先輩の指導を受けたりしました。
修士課程ではコロナ禍の制約もあり、研究テーマを大きく変更しました。個人で研究する困難に加え、大学院では授業が減るため生活面も自己管理が求められます。視野が狭まったり問題を抱え込んだりしないよう、積極的に外出し人と交流することを意識しています。前期教養課程の授業のTAや知人の企業でのインターン、学部4年次に立ち上げた自主ゼミの運営など、課外活動が研究に結び付くことも多いです。
博士課程への進学準備と並行して就職活動も行いましたが、最終的には研究をさらに深めたいと思い進学を決意しました。資金面が大きな課題でしたが、博士課程の学生を支援する大学のプログラムに採択されたため研究を続けることができています。
現在は自分の関心をより分かりやすく表現する方法を模索しています。研究内容の伝え方を深めるため大学教員を志す学生を対象としたプログラムも受講していますが、自分の関心を生かせる場所があるのなら、大学での研究職だけにこだわらずにキャリアを設計したいと考えています。
