受験

2022年1月22日

【受験なんでも相談室】受験勉強の暗記は、大学で「学問」を追究するのにどう役立つの?

 

 大学受験は悩みが尽きないもの。どうせ誰かに相談するなら、その道のプロにアドバイスをもらいたい! そんな受験生や保護者などからお悩みを募集し、東大生や東大の教員などに話を聞く連載企画「受験なんでも相談室」が今回扱うのは、物理などの「理数系教科」に関する質問。受験勉強を進めていく中で、学問の本質的な部分に興味を抱き、より深い学習をしたいと思うこともあるだろう。しかし「限られた時間で多くの得点を取る」ことが必要とされる大学入試において、そのような本質的な学習が必ずしも効率的とは限らない。そんなジレンマに直面する受験生も多いのではないか。

 

 今回話を聞くのは、東大教養学部基礎科学科を卒業し『入試問題で味わう東大物理』(オーム社)など数多くの著書を出版している三澤信也さん。三澤さんは、長野県の中学、高校で物理を中心に理科教育にも力を入れている。いよいよ2次試験が迫る受験生、またこれから受験生となる学生必見のインタビューだ。(取材・近藤拓夢)

 

 今回の質問

 受験勉強をしていて、ある教科について「学問としては興味があって好きだけど限られた受験勉強の中で習熟を強いられるのは苦痛」と感じることがあります。私は理系で物理化学選択ですが、これらの教科は高校においては騙し騙しといいますか、天下り的といいますか、腑に落ちないことが多々あります。その答えは教科書からは期待できず、結局時間的制約からいわゆる“公式”を覚えて使うということを強いられてしまいます。自分なりに詳しい解説の載っている本を漁ってはいますが、どう学ぶのがよいのでしょうか。(高校3年生)

 

常に「考え」続け、高校の勉強から 「人の役に立つ」大学の学問へとステップアップ

 

──受験生時代の理数系教科の勉強法について教えて下さい

 

 数学や物理などの理数系教科については、知識量よりも考える力が必要です。解説を読んでも納得できない時は、ある程度の時間考え続けることが重要でしょう。しかし、それに1日何時間も費やしてしまうのはもったいないです。そこで、考え続けても分からない疑問はノートに書いて残しておく、ということをしました。数日後、ふとした時にそのノートをまた見返すと「こういうことだったのか」と気付くことがあるのです。疑問をその場で解決せずに置いておく、という勉強法です。

 

 私は長野県出身で近くに予備校がなかったため、基本的には独学で勉強しました。学校の教員に質問することもありましたが、スッキリする答えが得られることはあまりありませんでした。自らの疑問を一人でなんとか解決しなければいけない中で『大学への数学』(東京出版)などのクオリティーの高い参考書を読み込みました。

 

──公式を暗記する勉強法についての意見を聞かせてください

 

 最終的に公式は覚えなければいけない、というのは大前提です。特に物理の場合は、他の理数系教科に比べて暗記すべき公式の数が圧倒的に少ないです。あまり覚えようとしなくても問題を解く中でそれらは身に付くはずです。質問者の方は公式を「覚える」ことではなく「丸暗記する」ことが苦痛なのだと思います。また、物理に興味があるからこそ湧いてくる疑問も多々あるかと思いますが、疑問を持つということは学習を深める大きなチャンスですので、むやみに効率を追い求めることなく、疑問を大切にしてほしいです。そして、疑問がスッキリと解決するまで追究をしてほしいですね。

 

──疑問の解決の方法について教えて下さい

 

 学校の教員などに聞いても分からない場合は、質問者の方のように参考書に頼るしかないでしょう。しかし、参考書に期待する解答が載っているとは限りません。その場合は、インターネットを使い調べたり、また私のように疑問をノートに書いて、しばらく置いたりしておくというのも良いと思います。

 

──質問者の方は、大学受験におけるいわゆる「勉強」よりも大学における「学問」の追求のほうが向いているように思われますが、受験勉強と大学の学問にはどのような差があるのでしょうか

 

 東大の場合、前期教養課程の1年生や2年生の前半で学ぶことは、本質的には高校生の頃とそこまで変わりません。その後、研究室や大学院まで進むと具体的な研究ができるようになるでしょう。それまでに蓄えてきた知識を活用できるのです。大学の学問とは、最終的に人の幸福や健康、生活の向上などに寄与する「役に立つ」ものと言えます。この点で大学受験の勉強と本質的に異なります。高校生の段階では「この問題が解けて何になるのだろう」と思うことも多々あると思いますが、その段階で終わってしまうと誰かの役に立つところまでは行きません。そうではなく、受験勉強で学んだことは大学での学びのベースとなるので、その勉強は最終的に誰かのためになるというべきでしょう。

 

 大学では、基礎的なものから応用的なものまでさまざまな科学を学ぶことができます。その際は「誰の役に立つのか」をいちいち考えず、本人の興味や関心のあるもの楽しく学べばいいと思います。自分の知的好奇心を大事にして学べば、結果的に誰かの役に立つ成果が得られるからです。

 

──間もなく試験本番を迎える受験生に対してアドバイスをお願いします

 

 物理を例にすると、2次試験では共通テストと違い、深い思考力が求められます。公式を覚えていることは前提で、その上できちんと考える力を身に付けてきたかを試す場といえます。受験生の皆さんは、最後まで「考える勉強」をやめないでください。試験当日も、当然難しい問題が多いと思いますが、「考える」ことを諦めないでほしいと思います。

 

三澤信也(みさわ・しんや)さん 02年東大教養学部卒。『大学入試 物理の質問91』(旺文社)など、物理分野を中心に多数の著書を出版する傍ら、長野県の中学、高校にて理科教育を行っている。

 

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