FEATURE

2020年7月16日

受かってからを意識した資格勉強 「資格スクエア」創業者鬼頭政人さんに聞く

 東大のオンライン授業が始まって3カ月が経過した。通学などの時間が節約されたことで時間に余裕ができた分、資格の勉強に打ち込むようになった人もいるのではないだろうか。資格を取得する上での勉強法や、資格の生かし方などについて、東大の卒業生で、弁護士、簿記1級を始めとする多くの資格を取得し、資格取得のオンライン学習サービス「資格スクエア」を創業した鬼頭政人さんに話を聞いた。

(取材・趙楠)

 

鬼頭 政人(きとう まさと)さん  04年東京大学法学部卒。05年旧司法試験合格、06年慶應義塾大学法科大学院修了後、07年弁護士登録(旧60期)。現在は株式会社サイトビジット代表取締役を務める。

 

過去問で効率よく

 

  今取得している資格と取得した時期についてそれぞれ教えてください

 

 弁護士、簿記1級、宅地建物取引士、G検定(ジェネラリスト検定)を持っています。弁護士になったのは2007年、簿記1級はその翌年の08年、宅地建物取引士は15年、G検定は18年に取得しました。

 

  それぞれの資格はどのようなきっかけで取ることになったのですか

 

 僕は学部時代ボート部に所属していて、大半の時間は部活をしていたので、ほとんど勉強していませんでした。学部4年の8月に部活を引退したのですが、東大の法学部を出るのに法律が全然分からないのはまずいと思い、弁護士を目指すことにしました。なんとか勉強が間に合い、慶應義塾大学の法科大学院に入学しました。そこからの2年間は勉強に打ち込めた有意義なものでした。簿記1級は弁護士として働き始めた1年目に、宅地建物取引士とG検定は資格スクエアを起業した後に取得しました。G検定はディープラーニングの基礎知識や適切な活用方針についての検定で、これは確実にAIが当たり前になっていく中で、将来を見据えて取得したと言えます。

 

  それぞれの資格を取得する際に苦労したことと工夫したことについて教えてください

 

 法科大学院2年目に受けた司法試験に関してはとにかく論文式試験が大変でした。短答式試験を英単語の試験だとすれば、論文式試験はスピーキングかライティングに当たります。受験はほとんど負け知らずで来たのですが、勉強開始当初は全然答案が書けなくてとても焦りました。書けるようになるにはひたすら量を重ねるのみでした。試験前の半年間くらいは1日10~12時間勉強していました。簿記1級と宅地建物取引士に関しては基本的に時間との戦いでした。弁護士1年目は朝9時半から仕事が始まり、自宅に帰るのは午前0時近くになっていたので、仕事前にカフェに行ったり、仕事後に近所のファミリーレストランへ行ったりして、隙間時間を確保しました。宅地建物取引士は取得したのが起業した後なので、仕事と勉強のバランスを取るのがさらに難しくなりました。本当は2カ月勉強する時間を取りたかったのですが、結局2週間しか勉強できませんでした。

 

  資格を取得するにあたって一貫している勉強法はありますか

 

 勉強に関する方法論については既に確立しています。一度過去問を見て必要な勉強をあぶりだし、教科書をざっくり読んですぐに過去問をひたすら解くようにしています。過去問を通してアウトプットすることによって知識をインプットすることを心掛けています。

 

 

将来見据えて資格取得

 

  資格スクエアでの経験を通して、オンライン授業のメリットとデメリットは何だと思いますか

 

 オンデマンド授業の場合、最大のメリットとしては倍速で授業を聞けるので、圧倒的に効率が良いです。しかし、やはり人と人のウェットなコミュニケーションがないのでモチベーションが下がりやすいです。資格スクエアは新型コロナウイルスが感染拡大する前までは月に1回オフラインで答案作成練習をやっていたのですが、今でもオンライン自習室を設けたり、オンライン模試を開催したりして、自宅での勉強に緊張感を持たせる取り組みをしています。資格取得を目指している学生は、同じように勉強している友だちを見つけて進捗を報告し合い、家族などに監視してもらう体制を整えると良いと思います。

 

  弁護士のどのようなところにやりがいを感じていますか

 

 関西のラジオ局の民事再生をしていた時に、頭を駆使してクリエイティブにさまざまな手段を考えて解決に至ったのが、企業経営と法律の交差点のように感じられてとても面白かったです。自分が持っている法律の知識を使って、自分の思う方に向かって課題解決できる瞬間が一番やりがいを感じます。

 

  これからの時代はどのような弁護士が求められると思いますか

 

 メディアなどを通して弁護士の供給が過剰になっている印象があるかもしれませんが、実際今は4、5年前と違って売り手市場になっています。その点を踏まえてどういう人がより人気かというと、やはりその人にしかできないことがある弁護士になります。例えば関係者と接する上での人間力や包容力がとても大きかったり、AIやブロックチェーンといった、ニーズが爆発的に増えているのに有識者が少ない分野を専門にできたりすると需要は増えます。弁護士になってからキャリアを築くのも良いですが、もちろん早く専門を決め打ちした方が価値が出るタイミングも早いです。

 

  資格取得を考えている東大生にメッセージをお願いします

 

 資格取得は短期的にはゴールですが、中長期的にみると完全にスタートです。東大に「受かるまでの人間」と「受かってからの人間」がいるのと同じです。資格を取得してから何をするかが最も重要であるという意識を忘れずに、取得して終わりにしないでほしいです。


この記事は2020年6月9日号に掲載された記事を一部修正したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。

インタビュー:受かってからを意識した資格勉強 「資格スクエア」創業者鬼頭政人さんに聞く
ニュース:活動制限レベルを引き下げ 進行中の実験・研究は最小限の人数で実施可能に
ニュース:新型コロナ 新検査法開発
企画:官庁訪問2020 東大出身者・採用担当者が語る国家公務員の仕事
企画:傾向つかみ有効な対策を 資格予備校に聞く公務員試験
キャンパスのひと:河暎健さん(理Ⅲ・2年)

 

※新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため、STORES.jpのオンラインストアを休止しております。申し訳ございません。
定期購読の方には登録されたご住所に届けられますが、物流の混乱で遅れが発生する場合がございます。
あらかじめご了承ください。

タグから記事を検索


東京大学新聞社からのお知らせ


recruit
koushi-thumb-300xauto-242

   
           
                             
TOPに戻る