教養

2022年5月23日

【NFT×漫画】NFTが若手作家を救う? ファンの思いの受け皿に

 

 近頃ニュースで耳にする「NFT」。Non-Fungible Tokenの略でデジタルデータに「非代替性」を与えたものだ。ブロックチェーンという仕組みによって作成者や所有者の履歴がデータにひも付けられ、コピーや偽造ではない「オリジナル」のデータであることが証明される。鉄腕アトムのモザイクアートをNFT化した作品が約5300万円で落札されるなど、高額なNFTアート作品が世間を驚かせる中、講談社が漫画雑誌『ヤングマガジン』の新連載『code:ノストラ』を1ページずつNFT化し販売した。NFT化を担当した講談社編集者の小林伸裕さんと、作品が販売されたマーケットである「Kollektion」の運営に携わる辻貴幸さんに、漫画とNFTのコラボによる新たなコンテンツの可能性や、NFTが出版業界に与える影響について話を聞いた。(取材・松崎文香)

 

※NFTって何?という方はこちら

「戦メリ」楽曲のNFTで話題になったGMOアダムに聞く NFTの面白さとは?

 

──漫画をNFTとして販売した経緯を教えてください

 

小林 昨年12月、ヤングマガジンの新連載漫画『code:ノストラ』を1ページずつNFT化し、雑誌での連載開始と同時に講談社初のNFT商品として企画しました。近年、漫画業界全体は好調な一方で、売れる漫画と売れない漫画の二極化が進んでおり、特に新人作家の宣伝が課題でした。「どうしたら新しい作品の宣伝がうまくいき、作家が漫画だけで生活できるようになるのか」をずっと考えているさなか、NFT売買のプラットフォームである「Kollektion」の開発・運営を行っている企業KLKTNLimitedから漫画のNFTの話を頂きました。こうした課題の解決に役立つのではと自ら手を挙げ、早速ヤングマガジンの新連載『code:ノストラ』でNFTに初挑戦しました。

 

マーケットプレイス「Kollektion」でのNFT 販売画面
マーケットプレイス「Kollektion」でのNFT 販売画面

 

──『code:ノストラ』のNFTに対する反響はどうでしたか

 

 売れ行きは好調です。現在売り上げを伸ばしている「日本風」漫画キャラクターのNFTは海外で制作されていることが多く、海外から見た「日本」のイメージが色濃く反映されているものでした。そのため購入者からは、日本発信で日本の漫画そのものをNFTにした商品はあまりないので新鮮だという声が聞かれましたね。これまで有名漫画の1コマや名シーンをNFTとして発売することはあっても、まだ知名度のない新連載の漫画をページ丸ごとNFT化したことはなく、新しい取り組みだったと思います。

 

 購入した人には、元々NFTの取引を行っており『code:ノストラ』にたどり着いた人もいれば、ヤングマガジンを読んで興味を持ち、NFTに触れた人もいました。

 

──雑誌や単行本でも読める漫画のページをNFTで販売する意味は何でしょうか

 

小林 NFTとしての価値を一番に考えるのであれば、人気作品の新たなイラストをNFTアートにした方が良いというのは分かっています。しかし、もうかる人がさらにもうかる仕組みを作りたかったわけではなく雑誌や新連載に注目を集めるのが目的だったため、この形式になりました。

 

 またKollektionが世界的なマーケットであることから、発売に当たり海外の方も意識しました。日本の漫画は世界中で人気ですが、海外の多くの読者は翻訳された単行本が自国で発売されるまで作品を手に取りません。しかし漫画が雑誌に毎週掲載されるのと同時に、世界中の人が利用するKollektionでNFTとして販売すれば、たとえNFT化された漫画ページが日本語のままであっても、その漫画に注目が集まります。すると、日本の読者が雑誌で読むのと全く同じタイミングで連載を追う海外の読者が出てくるでしょう。雑誌ではなく単行本で漫画を読むのが主流になった今の時代に、世界中のファンが毎週一つの連載を追いかけるライブ感が面白いと思います。

 

 実際『code:ノストラ』のNFT取引額が一番大きかったのはアメリカの方でしたね。

 

Kollektionでの『code:ノストラ』紹介画面

 

──NFTならではの利点は何でしょうか

 

小林 売って終わりではないという点です。従来は実際の漫画やグッズはもちろん書き下ろしなどの電子特典も、一度販売して収益を得た後はいくら転売されても、作家や出版社には1円も入ってきませんでした。一般的なアート作品も同様で、オークションやコレクター内でいくら高い値段が付けられても、初めに販売した際の売り上げ以外はクリエイターの手に入らないことがほとんどです。一方NFTマーケットの多くは、商品が2次流通で販売されるごとに出品者にお金が入る仕組みを採用しています。

 

──デジタル上では所有感が実物より感じられず、オリジナルを所有するなら実物の方が良いという意見もあると思いますが

 

小林 確かにその通りで、だからこそNFTコンテンツを販売する際はリアルに結び付けることが重要だと考えています。NFTは所有者が明確に記録されるため、例えば「この漫画のNFTを持っている人限定のファンイベント」といった企画が可能です。そうした現実のイベントやファン同士の交流につなげることで、デジタル上であっても所有する喜びが感じられると思います。

 

 リアルに結び付けることも確かに大事ですが、僕自身はNFTコンテンツ含め、デジタルで「もの」を所有することが、今後より当たり前になっていくと思っています。自分の生活を振り返ると、音楽もCDではなくデジタルだし、本も電子書籍で読むことがほとんどなんですよね。この動きがさらに加速し、希少価値のある「オリジナル」をデジタル上で所有することも受け入れられるようになると思っています。

 

──NFTの登場は漫画業界にどのような影響を与えるのでしょうか

 

小林 ファンの熱量が作家に伝わる時代になると思います。音楽業界では、握手券をCDに付けることで一人が何枚も同じCDを買ったり、中身が同じCDでもジャケットが違えば買ったりしますが、漫画はどんなに熱心なファンでも同じ漫画を何十冊も買うことはありません。

 

 そのため、出版社は何冊売れたか、すなわち何人の人が読んだかで評価せざるを得ませんでした。販売部数が伸びずに連載が数巻で終了してしまった作品について、心から残念がるファンの声をSNS上で聞くたび、その思いを消費につなげられる場があればもっと作品を続けられたのではないかと感じていました。

 

 漫画がNFTとコラボすることによって、そうしたファンの熱量をすくい上げられる可能性が生まれると感じています。NFTの売り上げという新たな評価軸と収入源によって、何万人の読者はいなくても熱心な1000人のファンを持つ作家が連載を続け、漫画だけで生活できるようになればうれしいです。そうした作品が生き残ることで漫画作品の多様性にもつながるし、若手作家が潤えば次の世代が漫画にチャレンジしやすくなり、ひいては漫画業界全体の盛り上がりにつながります。もちろん現在も、ファンの方が作家を直接支援する仕組みはあるにはあるのですが、作家自らが発信しなければならないことが多いです。創作活動に専念してもらうためにも、NFTという新しい企画を出版社として確立できればと思っています。

 

──この先どのようなNFTとエンタメのコラボを考えていますか

 

小林 NFTは出版業界にとってまだまだ未知の領域で、現在講談社が行なっているNFTの企画も「やりながら考えよう」と試行錯誤しながら方向性を考えている最中です。もちろんこれで終わりにするつもりはなく、新たなコンテンツを準備中です。

 

小林伸裕(こばやし・のぶひろ)さん 12年、講談社入社。ヤングマガジン編集部所属。漫画編集者として、漫画×NFT関連事業にも取り組む
辻貴幸(つじ・たかゆき)さん 22年、KLKTNLimited入社。「Kollektion」を運営する立場から講談社と協力して事業を推進している

 

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【記事修正】2022年5月24日午前0時39分 誤植を修正しました。

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